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鍵屋無双 ~いや、すごい強いですよこのスキル~  作者: TAKUTOJ
10章 アレクの長い夢編
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10部

 デラーマ城塞地下。


 サルトビ・クグモに会いに、【鍵】による転移で移動しよう。さて、今回のクグモとはどんな話をしようか。また名前を聞かれるところから始まるのかな?


 一方的にこちらが知っていて感情移入できるのに相手はそうじゃないって……。なんだか記憶喪失の友を見ているようなそんな感じ? やるせなさが僕の心を少し支配している。


 クグモは僕が消えるときまで泣いていた。たった数日のことだったけれど、僕たちは本当の友になった。そう自負している。


 いつもの祭壇を駆け上がり、八卦神門の模様に手をかざし、光の柱を生じさせた。


 そして……。


「……!?」


 淡い人、サルトビ・クグモは言葉を発しなかった。驚愕の表情を向けている。


 あれ? なんか若い? 以前の二回の邂逅では20~40歳くらいで断定の難しい年齢不詳感満載の無表情だったのに……?


「アレクっ!?」


 え?


「良かった……生きていたんだな」


 表情が若干泣きそうな状態だ。あれ?


「……クグモ?」


 僕は恐る恐る問いかけた。召喚者のクグモ? どうなってるんだろう? また自己紹介の準備をしていたから拍子抜けしたものの、眼の前の淡い存在はそれどころではない様子なんだ。彼は大きく二回頷いた。あ、これクグモの癖だな。そうか、クグモか。


 僕の心の暗い部分が晴れていくようなそんな感覚を覚える。


「ね、クグモ。あれからどうなった?」


 クグモはハッと我に返った。


「……アレク。あれから僕は何度も君を召喚で呼んだんだ。だけど君は応えてくれなかった。だから死んでしまったのかと……」


 悔しそうな、苦しげな声音に僕は首を傾げる。え? 何度も呼んだ?


「あのさ、クグモ? 無茶言わないでくれる? これでもすぐにここへ来たんだから」


 一晩寝て、朝一番でここに来たんだから。


「え……」


 クグモは続けた。僕が矢を受け消えたときから、生涯僕には会っていないのだと。【召喚】に応えてくれないのなら、こちらが行くことだって、と思いながらも僕からの【召喚】のメッセージは消えていたんだと。


 また一つ謎が増えた。じゃあ、僕が今彼をここへ呼んでみるか?


【八卦神門】を脳内で意識してみる。


『サルトビ・クグモを召喚しますか?』はい/いいえ


『召喚に応じますか?』の部分は薄く、選択できない状態になっていた。だけどその前に確認しておこう。


「クグモ、僕からは呼べるみたいだけど、どうする?」


「そうなのか? でもいつの我が呼ばれるんだろう?」


 そういえば彼の人生はどうなったんだろう? 未来は変えられたのか? 気にはなるけれど無粋だろうか? 全部聞いてもしょうがないから、聞きたいけど一つに絞ろう。


「一つだけ聞かせてくれる?」

「なんだろうか?」

「カガ・サギリ殿や一族は仲間にできた?」


 そう言うとクグモは顔をほころばせた。あ~、うまくいったのか。良かった。


「アレクのおかげだよ。彼女たちは本当に素晴らしかった。【忍者】はちゃんと我らに力を貸してくれたよ。世界も救えた」


 おお、大団円ですか。僕も彼らを味方につける提案ができて良かった。ん? 素晴らしかった? どゆこと?


「過去形なのはなぜかな?」

「……いや、世界の救出から彼らは役目を終えたとかなんとかで解散するという話だったからな。無理強いはできなかったんだ。だから側に置いておくことは叶わなかった」



 馬鹿じゃないだろうか? 忍者を解散させるとか……。諜報のスペシャリスト集団を散らせてどうするんだよ。いや、ここから広がって派生していくのかな?


 僕は脳内のメッセージをまだ保留にしている。なんとなく今のクグモともっと話していたいと思ったからなんだ。だけど、彼は僕を見て悲痛な表情をしていたから、早いとこ彼の喪失感を無くしてあげられるのなら【召喚】したほうがいいんだろう。


 それに眼の前のクグモは八卦神門を開放できた記憶の媒体でしかない。話したところで僕の自己満足で終わってしまう。ならば、今、彼をここへ呼んでみるしか?


『はい』を選択。


 背後から強烈な光が発せられる。僕は最上段の祭壇から振り返り、光の根源へと目を向けた。


 見たこともない幾何学模様の召喚陣がぐるぐると回って中心に向かって収束していくのを目にする。中心部には膝立ちで顔を歪めたクグモが涙も拭かずに呆然としていた。


「クグモ」


 僕は呼びかける。


 クグモは声のする方向、つまり僕の方を見上げて固まった。


「!?」


 僕はゆっくり祭壇を降り、彼の前に膝をついて目線を同じにする。


「あ、アレク……なぜ……」

「生きているかって?」


 大きく二回頷いた彼を見てクスリと口端をあげてしまう。


「召喚獣は死んでも大丈夫なんだよ。召喚人も同じみたいだね。僕は生きているよ」


 おちゃらけてそう言うと彼はさらに感極まったのか号泣した。


「我のせいで死なせてしまったと……」


 しゃっくりのような嗚咽を紛れさせながら必死でそう訴えかけたクグモに貰い泣きしてしまいそうになる。心配してくれてありがとね。


 話を聞いてみると、どうやら目の前のクグモは僕が消えた直前のようだ。良かった。これで彼の未来はまた明るいものに変わるだろう。僕を死なせてしまったという罪悪感を持ったまま人生を終えることにはならない。憂いなく生きられるのならそれに越したことはない。


 でも今の彼に言っておきたい。


「クグモ、いいかい?」

「なんだろうか?」


 少しためを置いてから僕は真剣さが伝わるように彼の両肩を掴んだ。


「決して忍者を解散させてはいけないよ? サギリ殿をお嫁にもらってでも忍者の組織を残して、生涯忍者を養うんだ。いいね?」


 この言葉が彼にどんな影響を及ぼすのかわからないけれど、言うだけタダだし。


 ひとしきり話し合って、僕は彼を送還した。


 祭壇を見上げると、淡い存在は消えている。もう一度呼んでみるかな。


 いや、やめておこう。



 クグモ、これからの人生を頑張って。


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