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No.1

2章のプロローグ的な話

 受付に座っている凄い美人のお姉さんの列は空いていた。何故ならここは討伐部位買取窓口で、朝の遅い時間だから。


 冒険者ギルドのこの時間はほとんど冒険者がいない。仕事してるからだ。一般王都民がよく利用する時間でもある。僕も例に漏れずこの時間の常連だ。


「あら、アレクセイさん。いらっしゃい」


 語尾にハートが付きそうな甘い声のこのお姉さんは名前をシェイナと自称している。茶髪で長い髪を後ろで緩く纏めている、色白美肌の蒼い眼を忙しく瞬かせる癖の持ち主だ。


 シュナイデリン・レ・フラクシス(18歳)

 ギルド職員・研修中

 公爵令嬢

 職業:【槍士】

 スキル:【短槍術・極】


 というお方だ。研修でこちらにいらっしゃるとか。内情を知る者はほとんどおらず、気軽に声をかけられる。しかし、執拗に絡んだ者は最後、お付の影の方々にヤキを入れられて大人しくなるんだとか。ご本人に消されてもおかしくないのだが、性格が柔らかく、戦いとは無縁のような人で、人気のある女性だ。だけど騙されてはいけない。


 彼女は買取窓口で僕を見かけるといつも破顔する。ドキリとするので正直やめて欲しい。幼いせいで、可愛いモノ好きな彼女の琴線に触れるのだろうか。解せぬ。


「今日も買取ですか? それとも……」


 先を言わせず物を机に並べる。この人のペースに乗せられると危険だ。ついうっかりポロッと内情を吐露したくなる。もう彼女のミステリーサークルに足を踏み入れてしまっているのかもしれない。さっさと用事を済ませよう。


 クスっと口端があがる様子を見るに、全てを見通されているような恐ろしさを感じる。怖いよ、このおネイさん。きっとアレだ、何人も男を手玉に取ってきた百戦錬磨の……


「ダメですよ、アレクセイさん。私はギルドの受付嬢、それ以上でもそれ以下でもないんです」


 めっ! って両人差し指を交差させて叱りつけてくるあたり、心読めるんじゃないだろうかと戦々恐々とさせられる。


 てゆうか嘘つくなし。公爵令嬢だろうが! 言い返せないけど。


 ハァ、とため息をついて僕はモンスターの討伐部位を広げた。


「今日もいっぱいですね。半銀貨くらいかな? 確認しますのでお待ちくださいな」


 この人は大体の値段を予想してから精算して戻ってくるのだが、たいがい言い当てる。今回も見事にその辺の金額だった。10個の部位を一つづつ値段を言いながら、大銅貨5枚と数枚の銅貨を小さなトレイに乗せてこちらへスライドさせる。


「……以上が今回の報酬です。お受け取りください」


 物言いはすごく丁寧なのだが、その甘い声なんとかなりませんか? ソワソワするからやめて欲しい。切実に。それに、語尾のあたりで小首を傾げる仕草が恨めしい。そのSライン自然に出すの反則ですけど!?


 報酬を受け取って帰ろうとすると、自称シェイナさんに呼び止められる。


「そうそう、アレクセイさん、【鷹の爪】から指名依頼来てますよ? ポーターで指名依頼なんて珍しいですね」


 疑わしい目で見てくるが、ポーター指名なんだから別に深読みしないで欲しいんだけどね。


「ウマが合うだけ? 扱き使うのにちょうどいいんですよ、きっと。お受けしますってお伝えください」


 適当に流し、今度は本当にその場を後にした。


 冒険者登録してまだ間もないが、僕は順調に物事を進めている、つもり。


 スキル継承を【鍵】で誤魔化して、鍵屋を運営しようと画策しているところだ。そのためにまず資金がいる。目標3金貨。1金貨で店確保、1金貨で経営権確保、最後の1金貨で必要経費を賄うつもりでいる。まだ適当だけど。目標を持つの大事だよね。


 姉との生活が終わり、冒険者斡旋の宿に居を移した僕は、12歳でできる仕事をしている。最初に受けたのがポーター。平たく言うと荷物持ちだね。5人のポーターがいたんだけど、それに見合う報酬と、こっそり僕は臨時報酬を貰ったんだ。冒険者達を助けてあげたから。まぁ、内緒なんだけど。


 それが、これからもきっと続く関係、【鷹の爪】との邂逅だったんだ。


 僕は冒険者登録をしたあの日を思い出して笑みを浮かべた。

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