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鍵屋無双 ~いや、すごい強いですよこのスキル~  作者: TAKUTOJ
10章 アレクの長い夢編
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6部

 サルトビ・クグモはこの世界の主人公だ。だから彼の助けになることをしなければならないんだ。【召喚】された身だからね。でも何が彼の助けになるのかはまだわからない。


 カガ・サギリとの会話を終えて、僕は自分の部屋へと転移で戻る。着物の女性が朝餉を運んできた。お膳なんて久しぶりだよ。いいね。川魚の塩焼き、味噌汁、卵とご飯に焼海苔。そして漬物。


 朝食を堪能した僕は、サルトビの来訪を待つ。


「お早うございます、ヴァレント殿」

「おはようございます」


 きっちり礼を取る仕草に当てられて僕もきれいにお辞儀を返した。丁寧な所作に気分を良くしたのかサルトビは嬉しそうだった。御膳を横に置いて、縁側に二人座り込む。相変わらずの日本庭園ばりの庭を見ながら僕たちは改めて挨拶を交わした。


「ご存知と思いますが、サルトビ・クグモと申します。この度は我の【召喚】に応じていただき感謝申し上げる」

「ええ。アレクセイ・ヴァレントです。八卦神門二代目継承者のサルトビ・クグモさんですよね? 改めてよろしくお願いします」

「それなんですが……二代目って言うのは本当ですか?」

「貴方がそうおっしゃっていましたよ?」


 話が噛み合わない。なんだろうこのモヤモヤ感。たぶん僕たちのわからないところで事態は進展していっているのだろうか? もしくはタイムパラドックスがどこかで生じているのか? 別の世界の僕が彼にあって、別の世界の彼が僕に会っている?


 サルトビは考え込んだ末にようやく僕に顔を向けた。


「どうやら門でお会いした貴方と、貴方が門で会った私は別の存在なのかもしれませんね」


 同じ結論を導き出した彼に僕はかなり共感できた。最初に会った透明サルトビと理解を共にしたときの嬉しさが湧いてくる。それに二人になったときのサルトビはかなり丁寧な話し方をする。配下の者がいないときの彼の本当の姿なのだろうか。


「そうかもしれません。同じことを思いました」


 素直にそう言うとサルトビ・クグモは大きく2回頷いたんだ。僕は彼に会って情報を共有した話を聞かせてあげた。


「それと、これを言うのは少し怖いことではあるんですが……」

「ええ」


 躊躇したけれど彼の将来に起こることを伝えた。世界を救い、裏切られる話だ。この世界のサルトビなら大丈夫か? わからないけれど、そういう情報を前もって知っておくことはなにかの役に立つかもしれない。


「そうですか……詳しい話は聞きましたか?」


 僕は首を横に振った。世界を呪っている雰囲気はなかったけれど、世界を救う必要がないってことを僕に示した、自由に生きろと。「初代なら世界を救えと言うだろう」という考察も述べていた。


「あ~、確かにあの御仁ならそう言うだろうな」

「会ったことが?」

「ええ」


 この時代の門でやはり透明な存在として会ったことがあると言う。初代は自身を強化する点で余念がなかった事を自慢げに話していたそうだ。どうやら彼は俺THUEEEをするのが夢だったんだとか。なんだかなぁ。


「裏切りか……」

「でも疑心暗鬼になる必要はないでしょうね。軽はずみなことは言えないけど、敵は身内というより、上層部? じゃないかな?」


 再び思考の渦に入り込んだサルトビだったけれど顔を上げて頷いた。あり得る話だと感じているようだね。


「貴重な情報に感謝です。でもどうやってそういう情報を手に入れればいいか皆目検討もつきません」


 彼は幾分弱々しく呟いた。情報戦得意じゃないのかな? 脳筋ばかり集めるからそうなるんじゃない? 思ったことを口走った。


「確かにそうかもしれませんね。でもこの方法で世界を救えるんでしょう?」


 そうか。彼はまだ世界を救っているわけじゃないんだ。初代に会って世界を救う話を彼にもしたかもしれない。目標がどこにあるのかわからないけれど、世界を救うことも今の彼の視野には入っているのかもしれないね。


「その後が問題ですね。上層部の手のひら返しにどう対抗するか? そういうことも考えておくことは今後の役に立つんじゃないかな?」


 サルトビはまた首を縦に振った。これで対処できないならそれまでだろう。少し冷たい思考だとは思うけれど、そういう結果になることは回避できない彼の運命なのかもしれないのだから。そんなもん蹴散らせれば言うこと無いんだけれどね。


 ふと気になったことを尋ねる。


「そういえばサルトビさんは今は【鍵】使えないんですよね?」

「ええ。貴方がここにいる限りはね。でも普段【鍵】を使うことはないですから、それほど困りませんよ?」


 今度は僕が驚いた。鍵を使わないだと!? 鳩が豆鉄砲を食ったように口をパクパクせざるを得ない。なんで使わないんだ? 僕の反応を怪訝に思ったのかサルトビはさらに言葉を重ねてきた。


「なぜそれほど驚くのですか? 【門】を開けるのが【鍵】の務めでしょう? それ以外に必要ですか?」


 カルチャーショックを受けたんだ。なんだこいつは!? 【鍵】の有用性を理解していないだと!? 呆れのため息をついた。それも盛大に。サリアラーラばりのため息だ。


 親犬に怒られた子犬のように情けない顔、眉毛を八の字にしたサルトビ・クグモはなんだか申し訳無さそうだった。


「どうやらサルトビさんは【鍵】の使い方をこれっぽっちも理解していないようですね? こんな強力なスキルを無駄死にさせているなんて……」

「え……? 強力なスキル……?」


 いや、むしろどうやって世界を救ったんだよ……【鍵】無しで。もしかして各【門】のスキルをコンプリートできたら行けるのか? どこまでも? 僕は【門】のスキルなんてなくてもこの【鍵】さえあればなんだっていける気がするけれど。


 僕は【召喚】期間中はできるだけ【鍵】のレクチャーをしようと心に決めた。きっと呼ばれた理由は別のことだと思うけれど、こっちが本命に思えるんだ。サルトビ・クグモはきっと【鍵】でさらに強くなるはずだ。あわよくば世界を救った後の出来事にも対処可能になるかもしれない。


「それで、サルトビさんはなぜ僕をここへ呼んだんですか?」

「それは……貴方が呼べと言ったからですよ」


 別の世界の僕が? もしかしたらこの現状を変えたかったのか? きっと思考パターンは変わらないのかもしれないな。僕という存在はサルトビ・クグモを好んでいるって事において共通しているのかもしれない。そう考えると別の世界の僕グッジョブ!


「そうですか? では貴方が何かを求めて呼んだわけではないと?」

「いえ、困ったことがあったら呼んでいいって」

「じゃ今お困りなんですか?」


 頷いた。彼はこの時点で裏切られることはないはずだから、いったい何に困っているんだろう?


「実は……」


 僕は実にくだらない用事で呼ばれたことにずっこけそうになった。まぁ、でも呼ばれたら行くしか?


 そんな軽いノリでも、どんな重い理由でも来ただろう。とにかく方針は決まった。八卦神門二代目継承者サルトビ・クグモの強化に努める。


 よーし、やりますか!



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