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鍵屋無双 ~いや、すごい強いですよこのスキル~  作者: TAKUTOJ
10章 アレクの長い夢編
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3部

 外はもう真っ暗だ。


 日本庭園ばりの庭はほんのり灯籠の中の蝋燭によって灯されている。僕は施錠対象者がいないか範囲指定の範囲を広げ、動いている対象を探った。


 松のような木の上に、【忍者・下忍】なる者が潜んでいた。敵か味方か……お話を聞いてみよう。


 行動施錠(ロック)アンド転移。


 彼の後ろに回った。木の上だから不安定なところが厄介だねぇ。


「こんばんは、いい夜ですね」


 そう言うと、黒ずくめの存在は身をピクリと動かしただけで固まった。あ、いや行動施錠(ロック)中だから動けないんだった。これ確か、喋れもしないんだっけね? 妖精の秘境で魔族は頷くことしかできなかったからなぁ。なんとか話はできないか? 脳内で喋らせられるか意識を向けてみた。


部分解錠(パーツアンロック)を頭にかけますか? はい/いいえ』


 できた。「はい」を選択。


「密偵かな? 何の用? フェイナス国のカガ・サギリさん」


 カガ・サギリ(22)

 ジョブ:【忍者・下忍】

 スキル:【忍法・中】【隠密・下】

 所属:フェイナス国


 彼女の左肩に手を置いてできるだけ友好的に話しかける。あ、こういう手練は捕まったら舌を噛んでしまうんだっけ? やっぱり部分解錠(パーツアンロック)は危険じゃないか? まぁいいか。


 彼女を掴んだまま転移であてがわれた部屋へと飛んだ。


「ちょっと失礼」


 忍者頭巾をそっと剥がす。眩しい。どえらいべっぴんさんが現れた。くの一か。ポニーテールに結い上げた黒い髪はツヤツヤで、茶色い瞳はまっすぐこちらを見て幾分怯えを見せているものの、睨んでいるようにも見えた。全身真っ黒だから他に表現しようがないけれど、可愛いというより美人に類する人だ。


 武装解錠(アーマードアンロック)


 可哀想だけれど、人質だからねぇ。どういう原理かは不明だけれど、彼女からポロポロと武器が周りに落ちていく。どれどれ、短刀に手裏剣、巻物!? 術書かなんか? うわぁホスィ。文字読めても原理がわからなさそうだねぇ。糸みたいなのはなんだろう? 針も数本出てきた。小さい毒瓶とか……怖っ。このお姉さん本物だ。


「あ、貴方は……?」

「僕? 僕はね……」


 ニヤリと口端をあげて、座っている彼女の顎を右手の親指の爪でクイッと上げる。見上げたカガ・サギリはキッとこちらと目を合わせたものの、怯んだ。屈辱からの恐怖に変わる表情は酷く美しかった。


 きっと彼女は得体の知れない僕の容姿を測りかねているのだろう。見たこともない革鎧にブーツに銀髪だからね。この国の人達はみんな黒髪だったから、彼女もサルトビの一族も。


「サルトビさんのお友達だよ」

「……ふざけないで!」


 疑問符が付きそうなほど僕の答えに思考を巡らせた後、彼女は叫んだ。正直に「召喚されました」なんて言うと思ってるのかな? 言って信じるのか? まぁ知る権利のなさそうな相手にわざわざ手の内を晒すのもどうかと思うし。


「どうして『ふざけ』ていると思うのかな?」


 僕はゆっくりと彼女の顎から手を引いて、しゃがんで視線を同じにした。カガは大きく目を見開いてたじろぐ。【下忍】ということだけれど、経験はそんなに積んでいないのだろうか? 素人とも思えなかったけれど、どうにも不安定に見える。


「ヴァレント殿! いかがされた!? 大きな声がしたが?」


 引き戸の向こうからサルトビと数名の足音と、呼ぶ声が聞こえた。部屋を施錠(ロック)し直したから、入ってこれないようだ。危ない危ない。この部屋からサルトビ以外の人間を行動施錠(ロック)して戸を開けた。


 サルトビは口をパクパクしながら声を発せていない。状況が理解できないのも頷ける話だよね。いきなり女の人を部屋に連れ込んでいるんだから。召喚された人間がだよ? しかも【忍者】(笑)。


「密偵? さっきお庭でお会いしたからね、少しお話を聞いてみようと思って。僕のお客さんだから、変な真似はしないでよ?」


 そう言うとその場の全員はあんぐりと口を開けた。カガさんもサルトビさんもお付きの人たちも。こんなべっぴんさんが拷問される姿とか想像したくないしね。話を聞いてみて危険ならあっさり引き渡すのも吝かではないけれども。


「ヴァレント殿、それはどういう意味かな? ここへの侵入者であろう?」

「うん。だけど僕の手柄だ」


 うっと一瞬怯んだサルトビだったけれど、さすがは【首領】、すぐに持ち直した。


「そうはいっても貴方は我の客人で、ここは我の屋敷だ。その侵入者は引き渡していただきたい」

「道理だね。もちろんそうする。貴方の邪魔をしに来たわけではないからね」


 そう言うとサルトビはほっと息を吐いた。


「だけど拷問は僕の流儀に反する。手荒な真似はやめてほしい。できなければ貴方への協力は考えさせてもらう。送還する?」


 何を偉そうに。自分で言って自分でそう思った。全面協力するつもりだったけれど、サルトビの出方がまだわからないからね。残虐だったらいやだなぁ、と思いながら彼を見た。サルトビは逡巡したと思ったら、口元を優しく上げた。


「ヴァレント殿の人柄を好ましく思う。丁重に扱うとサルトビの名に賭けて誓わせてもらう」


 僕は頷いて彼女を引き渡した。話を聞いたところで僕はここへ来たばっかりだと思い直したからだ。事情なんて聞いてもわからないし。それにサルトビの、八卦神門継承者の先輩なんだから、いろいろ学んでからでも遅くはないはずだしね、判断するにも情報が足りないんだから。


「で、貴方は?」


 あ、解錠(アンロック)するの忘れてた。テヘ。彼女とサルトビのお付きの人たちの行動を解いてあげた。しかし彼女は黙っていた。まずいことでもあるのかな? じゃ代わりに。


「彼女はカガ・サギリさん。フェイナス国の【下忍】だね」


 鑑定()てわかるでしょうに。そう思って周りを見渡すと全員がまたポカンと口を開けた。意味がわからない。


「ヴァレント殿はどうやって、いや、なぜ知っているんだ!?」


 ぇぇぇぇ。鑑定()ればわかるじゃないか。


「逆にお尋ねするけれども、どうしてサルトビさんが鑑定()ないのかわからないんだけど? すぐわかるでしょう?」


 二代目八卦神門継承者が聞いて呆れる。あんたどうやって八卦神門の扉を全部開放したんだよ。【鍵】スキル10レベルにどうやって昇華させたんだ? この場で話してもいい話ではなさそうだから、これ以上は言わないでおこう。その雰囲気を察したのか、サルトビもわずかに頷きを返してくれた。


「本当に貴方には驚かされてばかりだな」


 サルトビはそんな言葉を呟いた。はあ? 初対面でしょう?


 大きな疑問を残し、夜は更けていく。







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