8回
7階層の20畳の部屋だ。階段下を覗けば迷路が展開されていた。苦手なやつだ。こういう勘が働く人ってすごいよね。スラスラ~っと出口を見つけるとか、一種の才能だと思うんだ。あ、そんなスキルないのかな?
「で、ゲルトはランクアップできたの?」
サリアラーラが前を向きつつもリーダーたる赤髪に問いかけた。階級章をゲルトレイルは人差し指と薬指に挟んで見せてきた。な~にをカッコつけてんだか……。
「おお、アレク意外お揃いだね」
地味にグッサリくるなぁ。いいんだ、彼らよりランク高いし。ぐすん。まぁ、【冷やかし】3人組が揃ってランクDなんだと思えば少しは気持ちも収まると言うかね? あれ、なんか目にゴミが。
ギルドへ蜥蜴のクズ魔石30個を納品して、依頼を達成した僕達はゲルトレイルに報告を委ね、パーティーとしての貢献度を上げ、ゲルトレイルのランクアップを果たすことが出来た。怪我以外は上々の出来である。
「迷路だねぇ」
リリアリーリがボソリと呟いた。だけど顔はキラッキラに輝いている。得意のやつかな? 魔物もいるんですけど、大丈夫ですかね? 大丈夫そうだ。サリアラーラの方を見ると、彼女はもっと活き活きしている。そそるのか? 全く理解できないんだけれど。迷路めっちゃ苦手なんですけどー。
7階層の迷路は日々変化しているらしい。だから冒険者達が作る地図は7階層のものは皆無だ。作ったところで無駄になる。
ある時、冒険者ギルドの研究者の中に、日々の迷路の地図作成を冒険者に依頼した者がいた。約半年分。法則性はあるのか? 微妙な変化なのか、大掛かりか? どんな頻度で変わるんだ? 7階層に寝泊まりして観測した者までいる。
結論として、日々決まった時間に、迷路は様変わりしているということだ。パターンはなく、ランダム性が強い。全くもって繋がりを掴むことさえ出来ずに研究は終わりを告げた。研究費が出なくなったのだ。成果の上がらない報告に、ギルド側が匙を投げた。
ただ不思議なことに、ここにいる魔物達はこちらが攻撃を仕掛けない限りは襲ってこないという習性があるんだって。だから、時間をかけさえすれば、誰でもこの階層を突破することが可能だそうだよ。それ故にギルドも重要性をあまり感じていないんだって。
リーダーに目をやる。どうやら彼も魔女2人に迷路を攻略してもらうつもりのようだ。大丈夫なのか? 【軍師】が導いている答えは脳を休めることだったりして……。彼女達がワクワクしてるんだし、時間をかければ誰でも攻略できるんなら、それに時間も制約されていないしいいんじゃないかな。うん、頼んだ。
ーーーーー
ああ~、歩いたなぁ。足がパンパンだよ。浮かれに浮かれた魔女達の後を追いかけるのは大変だった。T字路に差し掛かると二手に分かれて進むのかと思いきや、斥候役にどちらかが進み、どちらかが待機する。自然と動く彼女たちの動きに合わせ、僕がサリアラーラの、ゲルトレイルがリリアリーリの後を追う。
行っては戻りを繰り返していたけれど、合理的だと結果は教えてくれた。8階層への入口前に着いたから。
僕はイタチ属性だから(なにその属性)来た道を戻るとか考えたくないから途中で思考をオフにした。迷路の攻略を少しでも考えようとしていた僕の意識は既に8階層の攻略に向けている。だって、ついて行くだけでいいんだから。時間を有効活用しよう。
8階層はゴツゴツした岩だらけの荒野だったはず。もちろん進み方はゲルトレイルが決めるからいいとして、問題は魔物だ。飛翔サソリというおかしな魔物がいるんだよ。
飛ぶわけではないんだけれど、ジャンプしてからの滞空時間が異様に長いんだって。跳躍でよくない? って思うんだけれど、さながら飛んでいるようだって事で。最初につけた名前が定着しているんだから改名したところであんまり意味はないのかもね。
ストロンガーベアーの時の痛い教訓を活かして、この階層では自重しない。命を最優先だ。油断しないようにって言いながら油断するんだからままならないものだよね。注意力の問題かな。高ランクでも命を落とす事もあるって本当のことなんだ。
「楽しかったね! お姉ちゃん」
「うん」
事の他嬉しそうだった魔女を背に8階層へと赴く。




