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ep07

 ついにこの日がやってきた。


 スキル継承。


 既に【鍵】スキルを持つ僕にいったい何が起こるのか。あるいは起きないか。この世界の人はスキルを貰える。神殿にある大聖堂で司祭が取りまとめる儀式だ。人には過ぎた能力を手に入れる場。勿論スキルは凡庸なものが多いから、一概には言えないが、努力もせずに手に入れることが出来るのだから過ぎた能力で間違いないはずだ。


 国はこの儀式を奨励し、義務化させるのにかなり国力を割いたという。また、このスキル継承の儀式で人口把握、経済効果、王都活性化など国力強化を推し進めている。国の中枢に切れ者がいるという噂だ。近年の王国の発展は周辺諸国を怯えさせているという。


 姉が【剣士】のジョブを得て、警備隊に配属されたのにもこういう事情があるのだろう。僕は同じ轍を踏みたくはない。国の仕事は結構だ。この世界で鉛を体に受けたくはない。


「では、次の方前へ」


 目の前の少女が緊張と期待を両方ないまぜにした複雑な顔で進み出る。朝から並んでいて、陽が僅かに上がった。背丈ほどあった地面に写る影が随分短くなっている。ようやく次が僕の順番だ。


 目を上げると、少女が祭壇にある水晶を右手で上から押さえたところだった。わずかな光を発して水晶は元の透明なものへと変わっていく。司祭は水晶を覗き込み、若干残念そうな顔をした後、ニッコリ少女を見返した。


「おめでとう。君は【家事】スキルを得た。万能なスキルだから大事にね」


 少女は喉を鳴らして固唾を呑んで聞いていたが、司祭の言葉を聞き終えると、みるみるうちにガッカリ肩を落としていった。とぼとぼと身を翻して僕の横を通り過ぎて行く。


 正直羨ましい。平凡な生活が約束されたんだから。国に縛られないスキルだ。僕には【鍵】があるからいいけど、この世界の人にとってはこのスキルが全てだ。可哀想に。そう思考が固定させられている事にも気づいていない。


 僕はゆっくりと歩を進める。


 机の前に座り、名前を用紙に書き込んだ。これで税が発生するんだから怖いね。年間半銀貨5000円だ。高いのか安いのか、微妙だ。この世界の一般王都民の最初の税だから安いのだろうが。冒険者の薬草採取のクエストが報酬1銅貨100円だから、考えさせられるね。でもこの税には公認の抜け道が用意されている。


 冒険者登録すれば、免除されるのだ。


 勿論冒険者登録すれば、その立場を維持するために働かなければならない訳だが。そして多くのクエストは王都民の必要を満たす仕事だから、結局国の為に働いているのだが。


 国の偉いさんの頭脳を空けて見てみたい。どんな構造してるんだろ。15歳になればジョブによってさらに選択肢が狭められる。世知辛い構造だよね。


「では水晶に手を乗せてください」


 目の前に持ってこられた鎮座する水晶を鑑定眼で見る。


 スキル付与の水晶

【潜在能力開花】:触れた者の潜在能力の中で適正と思われる能力をランダムで引き出す魔道具


 運任せかよ!?


 いや、突っ込むとこそこじゃねぇぇぇ。なんつーオーバーテクノロジーだよ、おい。ビックリした!


「あの、どうしました? 手を置くだけですよ?」


 おおぅ、やば。僕はゆっくりと、恐る恐るを装いながら手を水晶に近づけていく。


 ドクン……ドクン……。


 鼓動がうるさく鳴り響くのがわかる。


 慌てて【鍵】スキル発動の準備だ。


 手に水晶が触れるといきなり光だした。


 !?


 僕は新スキルをすぐさま施錠した。


 冷や汗が背中を伝う。


 風が体を冷やしていくのがわかる。


 顔色が悪くなるのを僕は肌で感じた。


 これはやばい。


 ダメなやつだ。


 僕は【鍵】スキルが反映されるようにした。


 帰り道、司祭が言った「【鍵】ですか、珍しいですね。うーん」という困った声しか思い出せなかった。


 この世界はいったい僕に何を望んでいるんだろう。


 途方に暮れながら、学院寮へと帰った僕を姉はわかったような顔で慰めてくれた。


「アレク、スキルが全てじゃないわ」


 可哀想な目で見てくる姉に、僕は初めて悪意を抱いた。

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