7回
『ヴァレント殿
いかがお過ごしだろうか? 今回はコルトー城塞地下の情報を送る。と言っても、依頼にあった見取り図だけになる。『期待していたまえ』と言っておいてなんだが、本当に申し訳ない。あの領地は危険だ。行くのなら心してかかることだ。
コルトー公爵領は軍事国家と言ってもいいくらいの領地だ。独裁政が行き渡っている。とてもではないが我々では探りようがない。下地が無いと言えばそれまでだが、当地の闇組織も力が感じられない。子飼いの騎士団や兵士の質が高く、治安も恐ろしくいい。犯罪が少ないが、それは罰則がキツイからに他ならない。
城塞地下にたどり着くのは困難を極めるのではないだろうか?
行くのであれば、健闘を祈る。行かないのであれば、見取り図は焼却することをオススメする。
【怠惰の蛇】』
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何だこの内容!? コルトー公爵領恐るべし。
ダンジョンから帰還を果たし、午前中をリリアリーリと買い物に出かけていたら、留守の間に手紙が届いていた。【怠惰の蛇】ジャンヌからだ。
軍事国家並の領地……。よくそんなとこから地下の見取り図なんて取ってこれたな……下地が無いなんて言っておきながら。金貨92枚分の仕事はしてくれているようだ。
僕達の地力がない今、コルトー公爵領に行くのは時期尚早じゃないかな。むしろ最後に回してもいいかもしれない。結局のところ、王都を中心に行くわけだから、順番なんて大した問題じゃない。
無策で行けるような領地じゃなさそうだね。
ギランテッサの情報はまだ無いようだ。そんなにポンポン集められても対処できないし、ちょうどいい。ダンジョンも中途半端だし。
「アレク、服買ったのか?」
目を見開いて、ギルドから帰ってきた赤髪が問う。意外そうな感じがちょっとイラッときた。だけど着替え魔人にしたら嬉しいことなのかもしれない。
「まあね。どう?」
「うん、いいんじゃないか?」
「だってさ、リリア」
そうでしょうそうでしょうとやたら頷いて満足気なショートカットの髪の魔女は胸を張った。
「いいなー、わたしも行きたかった」
至極残念そうなサリアラーラはまだ眠気眼のまま、羨ましがっている。多分服にでは無いんだろうな……。
「で、【怠惰の蛇】はなんて?」
ゲルトレイルの問いには答えずに、手紙をそのまま渡した。彼は目を通すと直ぐに僕を見る。
「行くのか?」
首を振った。
「無理だね、今は」
赤髪も顎を引いて同意を返してきた。力を付けるには足りないものが多すぎる。力を得るには知識が足りない。力を行使するには余りにも貧弱だ。人材もない。
八方塞がりに思える時は、いっそ目の前の事を片付けてから打開策を探るべきだよね? まずはダンジョン10階層をなんとかしないと。昼食の準備に向かった魔女2人を他所に、ゲルトレイルと今後の打ち合わせを進める。
「アレク、あんな怪我した後で直ぐにまた潜るつもりなのか?」
「そりゃあね、10階層は行っておかないと」
次に進めない。次ってなんだ? パーティーはなんのためにある? 有名になるためか? 名声? 生活の安泰? 強さを求めるのか?
「ゲルト、パーティーで何を成し遂げたいんだ?」
「俺はAランクの冒険者になる。そして自由を得たい」
自由……か。確かにスキルありきのこの世界で自由は得難いものだね。そもそも戦闘職を回避して、自由に生きるのが僕の目標でもあった。でも、この世界は本当に歪んでいる。人の可能性を尽く否定するこのシステムに喧嘩を売るにはまだ僕には力が無さすぎるね。
うん、腹は決まった。どこまでやれるかわからないけれど、【鍵】と【門】をコンプリートして、この世界を変えてやる。
「そっか。いい目標だね。まずはダンジョンを足掛かりにランクアップと行こうか」
「おう!」
昼食を終えた僕達は準備を新たに整えて、ダンジョン6階層へと向かう。お次は7階層だ。




