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鍵屋無双 ~いや、すごい強いですよこのスキル~  作者: TAKUTOJ
9章 ダンジョンアタック開始編
78/170

6回

「アレク……怪我は大丈夫?」

「治ったよ」

「はぁ!?」


 心配そうにかけてきた声に対する僕の返答に理解ができない様子のリリアリーリ。そりゃそうだよね。あんな凄惨な包帯してたのにあっさり治るわけがない。ホントなら。


 それでも元気いっぱいの僕の様子にだんだん緊張を解していく魔女を見て、僕も少し安堵した。あんまり心配され続けるのも本意ではないし。


「昨日お姉ちゃんから聞いたよ。あたし眠っちゃって続き行けなかったんだよね?」

「リリアのせいじゃないよ。概ね、僕の怪我だろうね。いずれにしても続きは無理だったと思うよ? リーダーの判断だから」


 山岳チームの登山はリーダーの判断が絶対だと言う話を聞いたことがある。例え、進むのが最善と思えてもリーダーが否と言えば進めない。命を預かるリーダーの責任はとても重いんだ。それをわかっていない者はそもそもチームに入れない。リーダーが決めた事に異を唱える者もチームを混乱させるだけだし、責任が無い者の意見は概ね身勝手なものだ。


 冒険者パーティーも同じだ。命を預かる者への信頼がチームを向上させるし、生き長らえる秘訣でもある。もちろんリーダーの資質も大事だと思うけれども。


「ゲルトはギルドかな?」

「うん、5階層の討伐依頼の報告に行ってるはずだよ」

「そっかー」


 朝から蜥蜴のクズ魔石の納品へ向かったから、きっとランクアップも兼ねて時間がかかるだろうね。帰ってくるのは昼前じゃないかな、そんな考察を含めてリリアリーリと会話を続ける。


 今日はオフと聞いて妖精リンカーラは秘境に里帰りをしているらしい。僕の右肩が少し寂しいのはそのためだ。思案顔をしたリリアリーリは一転してこちらを向いた。


「ねっ、アレク。元気だったら魔道具屋に行かない?」

「あれだ、リリア、なんか買ってもらおうと思ってる?」

「バレたか」


 舌を出して明るく返事が来た。全く悪びれる様子がないから呆れるよね。


「じゃあ、行こっか」

「え? 良いんだ?」

「買ってあげるとは言ってないよ? 気晴らしも必要かと思ったんだ」


 肩を窄めてそう言うと、リリアリーリは事の他嬉しそうだった。買ってもらう気満々なんだろうか……そうじゃないよね?


 白を基調としたいつものローブの装いとは打って変わって、今日は若草色のスカートに白のブラウスを着ている。最初から外に出る気だったみたいだ。そう言えば僕は普段着あんまり良いの無いね……。


「リリア、先に服屋に行ってもいい? 余所行きの普段着無いんだよ」

「うんうん、見繕ってあげよう!」


 おお、頼もしいじゃん。それにしても凄く嬉しそうだな? なんかある?


 オシャレなんて何時ぶりだろう……あれ? 生まれてこの方オシャレした記憶が無いぞ? あちゃー、マジか。ゲルトレイルがいつも替えの服持ってるのって意外に凄いんだ……今更だらしなさに気がついてしまった。アレだ、革の鎧とか服もだけど、施錠したりするから替えが要らなくなってるんだよ。だからオシャレに気を使うなんて考えもしなかったんだろうな。


 うーん。ん? コレってデート? あわわわ……これまた今更気がついてしまった。リリアリーリが喜んでるのコレか?


 やべぇ、緊張してきた。いや、相手はリリアリーリだ。落ち着け……。


 緊張解錠。


 ふぅ、落ち着いた。


「それじゃ行きますか」

「うん!」


 外に出るとすぐリリアリーリは僕の腕に絡みついてきた。なんでも王都は危ないからと言うのが彼女の言だ。サリアラーラが攫われた事もあるから、概ね間違いではない。間違いではないけれど、積極的だな、今日のリリアリーリ。また緊張してきそうだ。


「そう言えば、サリアは?」


 そう聞くと一瞬彼女の顔が引き攣った。あ、ダメな質問だったみたいだ。難しいね、女の子との会話って……。しぶしぶだけど彼女は答えてくれた。


「お姉ちゃんは昨日私に付きっきりだったから二度寝しちゃったんだよ」


 疲れてるみたい、とリリアリーリはそっぽを向いた。自分のせいで寝てるけれども、こうして出かけている自分に少し罪悪感があるんだろうか? 余計なことを聞いたようだ。


「そっか。ところでさ、服屋ってオススメのお店とかあるの?」


 あっさり話題を変えておこう。ほら、やっぱり成功したみたい。リリアリーリはこっちを向いた。


「うん、あるよ。案内するね!」

「じゃあよろしく」

「まっかせなさい」


 左手でドンと胸を張ってから、彼女は僕の左腕を引っ張って歩く。うーん。なんか新鮮だ。王都をこうしてのんびり歩くことなんてこれまであったかな……ないな。自分のための買い物なんて仕事関係でしかやったことないし。


 茶色の綿パンを2着とTシャツ、黒の上着を購入した。リリアリーリの見立てで。あんまりオシャレがわかってない僕にはコレが似合ってるかどうかさえイマイチわからないけれども、同行者が満足そうだから良しとしよう。


「それじゃ魔道具屋に行こう」

「うん」


 リリアリーリが魔道具屋って、どういう物を必要としているんだろう? さっぱりわからない。聞いたけどはぐらかされたから、着いてのお楽しみってことでお預けだ。僕達は道すがらスイーツの話やさっき買った服のこと、冒険者としての活動以外のたわいもない話をして過ごした。オフだからね。


 魔道具屋に着くと、彼女はサッと僕から距離を空けて直ぐに店員に話しかけていた。あー、お預けどころか、内緒なのか。気になるなぁ。まぁ、無粋なことはやめておこう。小さな雑貨コーナーのような棚を見つけた。うん、魔道具ではないみたいだ。


 アクセサリーとか、ミニサイズの置物などが並ぶ。小指のサイズの綺麗な破片? を手に取ってみた。魔石をカットした感じか? 虫の翅に見えなくもない。なんだろうこれ。


「おまたせ~」


 何やら紙袋を下げて、リリアリーリは嬉しそうだ。買い物を終えた。僕はボディガードだったんだねぇ。まぁ、いいけどさ。


「お持ちしましょうか? お嬢様」


 僕は丁寧に手を差し出した。フラクシス公爵お抱え執事の所作を真似て。リリアリーリはかなり逡巡した後で悔しそうに首を横に振った。本当は持って欲しかったのかもしれない。中身が見えると困るものなんだろう。でもお嬢様扱いは嬉しそうで。


 午前中の束の間のデートを楽しんで、僕達はダンジョンからの嫌な記憶を少し追いやってリフレッシュすることが出来た。




束の間の休息でした。

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