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鍵屋無双 ~いや、すごい強いですよこのスキル~  作者: TAKUTOJ
9章 ダンジョンアタック開始編
73/170

1回

「では、手続き完了です。気をつけて行ってきてくださいね」


 ギルドの新人受付嬢ラーミファさんが首を少し傾けてSラインを作った。茶髪のショートヘアの毛先が真下へ垂れていく。彼女から手渡された紙は、ダンジョンの通行許可証。


 僕達新パーティーはついに正式なダンジョンアタックを行う。赤髪をリーダーとして結成されたパーティーだけど、実は10階層までしか進む権利がない。ランクの問題だ。


 リーダーがEランクの冒険者だからだって。無論、新パーティーゆえにダンジョンアタックの権利は最初は10階層までだからあまり気にすることは無い。例えAランクの人間を揃えても、結成された新パーティーであれば10階層までしか進むことは許されないそうだ。一旦帰らないといけないらしい。


 普通の魔物の討伐依頼と違い、ダンジョンでは思わぬ事態に遭遇する確率が跳ね上がる。わずか10階層にも満たない階層で命を落とす高ランクがいる。魔物にやられることもあれば、罠にかかることもある。


 油断が主な原因と言っていいのかもしれない。凶悪な麻痺毒を含む小さな虫にやられる者もいれば、無害そうな家畜に似た肉食の魔物に転がされる者もいるし、単なる落とし穴で亡くなる者もいる。


 ダンジョンは決して油断してはいけない。わずか6階層で足止めを食らう冒険者達もいたんだから、宝の部屋という罠にかかって。


 とりあえず10階層をクリアして、ゲルトレイルのスキルアップや冒険者ランクアップを目指して行ってみよう! うーん、楽しみだねぇ。


 そう言えば、僕達がアタックするダンジョンは王都の近くにある、以前【鷹の爪】と行ったダンジョンと同じところなんだ。60階層以上あるって言うあの。名前は「蒼き森のダンジョン」。誰が付けたのかは不明だ。


 西門から出てしばらく歩けばたどり着ける。結構な荷物があるから、ポーター雇えば良かったかな? なんて思ったけれど、駆け出しのパーティーがすることではない。あくまで初心を忘れてはいけない、と言うか初心者だからね。


 ワイワイ言いながらの4人の旅も板に付いてきたかな? 遠慮はなくなってきたね、うん。いい傾向だと思うんだ。


「1階層に出てくる魔物や罠は把握してる?」


 ゲルトレイルはこちらを一瞥し、魔女達は頷きを返してくれた。実は1階層から3階層には罠は無い。4階層から急に悪辣な罠が出てきて5階層でゆる~い罠に変化する。緩急をつけた罠に冒険者達はかなり精神を消耗させられるんだ。


 厳戒態勢で望んだ階層をあっさりクリアして油断を誘いつつ、次の階層で嫌がらせの罠が張り巡らされていたり、そうかと思えば一切罠の無い階層だったりするんだ。そのくせ魔物はだんだんと強くなっていくし。


 傾向と対策を話し合いながら歩いて行くと、ようやくダンジョンの入口にたどり着いた。ここにもギルド監視員がいて、通行証を渡せばダンジョンアタックを開始できる。


「【虹色の翅】の通行を認めます。10階層で1度帰還して下さい」


 そうなんだ。【虹色の翅】が僕達のパーティー名。「虹色」を書いたのがリリアリーリで「翅」を書いたのが僕だ。虹色と翅が選ばれた回数が3と2であとはバラけたから、順番も多い順でこうなった。


 由来なんて無いただの名前だけど、妖精の翅を連想できてとても気に入っているんだ。【鷹の爪】にならって適当な付け方だけどね、気にしない。変な名前じゃなくて心底安心したのは魔女2人だった。


 ギルド監視員から当然言われるであろう注意事項をしっかり聞いて、僕達はダンジョンの入口から最初の1歩を踏み出した。


 最初に歓迎してくれるのは、なんにも無いただの空洞。広さにして約20畳くらいかな? 奥に下りの階段があるんだ。そこから魔物が徘徊しているってわけ。


 一応施錠対象があるか確認する。


 近くにはいないみたいだ。目配せすると3人は僕の後に続いた。戦闘職じゃない僕が先頭にいるのは当然僕に盗賊の役回りができるからだね、罠解除の。1~3階層で僕の出番はなさそうだけれど、ゲルトレイルの采配に任せているからこのまま従うのが鉄則だよ。


 3階層まではひたすらゲルトレイルに斧を振るってもらう。【軍師】自ら提案してきた事案ではあるけれど、斧術を鍛えるにはちょうどいいと思うし、魔女2人の魔法はオーバーキルだしねぇ。男達の出る幕がなくなって、ヒモと変わらなくなるから、ぜひ遠慮してもらいたいものです。


 赤髪の戦士の斧無双の蹂躙劇が1~3階層に展開されている。非常に暇だ。戦闘が始まると戦士以外の3人が一旦下がるから、傍観するしかない。なんせ斧術の敵になる魔物がいないんだ。ゲルトレイルならミノタウロスにも勝てるんじゃないかな? と思わされるくらいの無双っぷりなんだから。


「アレク、欠伸は流石に失礼だよ……」


 苦笑気味にリリアリーリから注意が飛んできた。ごめんごめん。純粋に眠いんだよね。やることないもんなぁ。気持ちはわかるからか、リリアリーリも若干遠慮気味だ。油断はできない、と言っておいてアレだけど……暇だよねぇ。


 ふと気になってゲルトレイルの斧術を鑑定()てみた。【斧術・中】になっている。そうだよねぇ、3階層になっても全然威力が変わらないからおかしいと思ったんだ。魔物の強さが変化しているのに、赤髪の無双っぷりが勢い落ちてないんだよ。苦戦する様子もないし。


 コボルト達が悲鳴をあげる暇もなくバッサバッサと斬られては魔石に変わっていく。まぁ、ソロでも行ける場所ではあるんだけれどね。やっぱりスキルとジョブがマッチしている人間は強いって再認識させられたんだ。軽く嫉妬心が芽生える。【鍵】は確かに強力で、無敵だと思うけど……やっぱり戦いに華があるよね、戦闘職ってさ。


 4階層入口前にたどり着いた。


「ゲルト、お疲れさん。ここで休憩する?」

「そうだな……でも行けるぞ。お前達、暇だったろ?」


 ゲルトレイルの回答に僕達3人は大きく頷いた。苦笑する赤髪はどこか照れくさいような無念そうな、なんとも言えない顔をしていた。


「4階層は僕の出番だからね、ゲルトは歩くだけにして回復しとくといいよ」


 自信満々に告げる。なんせ【鷹の爪】と何度も通った道だ。女盗賊エチュレーラに何度も手解きをレクチャー受けたから、【鍵】がなくても通る自信があるんだ。安全のために【鍵】使うけどね。


 まぁ、見てて。


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