九
ダンジョンに潜る目標を定めておこう。
ゲルトレイルの【斧術】のスキルアップと冒険者のランクアップは外せない。後、僕の【鍵】もスキルアップさせておきたい。10段階あるって、幽霊のサルトビ・クグモが言ってたしね。今現在の僕の【鍵】レベルが4。どうやっても確認する術がない。脳内アナウンスを頼るしかないのかな……。
でもなぁ、ゲルトレイルは【軍師】様だから、そっちもこっそり上げておいて欲しいんだよねぇ。常にリーダーシップを取らせるようにしていかないと。それにしてもパーティーなのに軍師って、一体どこに向かってるんだろう(笑)
「だいたいこれくらいあればダンジョンに行けるらしいよ」
僕は【鷹の爪】から貰ったアドバイスの中で、必要な物資のリストを作ってみんなに見せた。三者三様にメモを覗き込んで思考を巡らせる姿が頼もしい。
「なるほどな。でもカンテラは必要ないんじゃないか? ピンポン(精霊)がいるし」
そうだ! と言わんばかりに強い明滅をする光の精霊がなんだか嬉しそうな、胸を張ってそうな感じで回っている。張る胸なんてないけどな。頼られてすこぶる嬉しいのかもしれない。
「ダメだよ、魔力を使いすぎたら危険だ」
この街で襲われたんだから余力は残しておかないと。疲れすぎて精霊が力を発揮できない時もあるんだから、精霊契約も万能ではないと言うことだよ。自分の魔力を供給して魔法代行して、活躍できるわけだから、術者が元気でいないと意味が無い。
そう言うとサリアラーラとピンポンは少し落ち込んだ。ピンポンの方は明滅の仕方が弱まったからそう判断しただけだけどね。
「フフフー! じゃあたしの出番ー?」
妖精リンカーラが名乗りをあげる。明かりを担当したいのか? よくわからないけど、自信満々に意見を発した。
「じゃじゃーん! "翅光"」
ピカーーーーっ。
とその場が輝いた。眩しいよ。まだ目の焦点が光の映り加減に邪魔されて定まらない。いや、なんだろう、見たいところが光で見えない?
何が起きたのかと言うとね? リンカーラの翅の部分が光ったんだよ。じゃじゃーんなんて言うから注目した途端アーク溶接のような強い光が辺りを支配したんだ。
案の定みんな目がやられたようだ。
「……凄いね……リンカーラ、その光はいつまで続けられる?」
「うーん? 一瞬だよー」
使いづらいわ! カンテラは要ると……。どうやら全員が同じ結論に至ったようだ。だよねぇー。でもこれいざって時に助かるかも。使い所を間違わないように脳内メモに書いておいてよ? 軍師様よ。
一通り物資の話し合いが済んだから、今度は装備についてだね。
「僕からなんだけどね。ブロードソードの予備として、小さめの剣が欲しいんだ。できればミスリル製で」
「ミスリル……?」
3人は恐ろしく希少で高い鉱石の名前を聞いてあんぐりと口を開けた。岩亀の討伐の話をしたらさらに呆けた3人。ねぇ、聞いてる? 硬い敵にも対抗出来る装備はいると思うんだ。
「アレク……あのな……」
「うん?」
「スキルで倒せるんならそれでいけよ!」
訓練にもなるしって、あそう? うーん、ミスリルソード欲しいんだけどなぁ。上目遣いに3人を見回したけれども、誰一人理解者はいなかった。ちぇーっ。こっそり買いに行こうかな小遣いで。
「リリアは杖は要らないのか?」
あっさり僕の意見は流されていく。最近こんな扱い多くないか? いいけどさ。そう言えばリリアリーリの装備、未だに見たことないな。
「うん、要らないね。妖精魔法に媒体は存在しないんだよ。翅は別だけどね」
いまいち妖精魔法の理解が得られない。どうやって使っているのか、魔力変換効率みたいなものは存在するのか? そもそも妖精魔法ってなんだ? はっきりしないことが多い。聞いたところで"感覚の問題だよ"だってさ。習得した者にしか理解できないようだね。魔法自体が使えない僕にしたら理解するのは果てしない時間が要りそうだ。諦めよう。
「リリア、護身用になにか持ってる?」
「……持ってない」
ガッツリお説教してやろうかと思ったけど、注意喚起だけにしとこう。
「アレクさぁ、ミスリルソード買うつもりでしょ? その時に見繕ってよ。私の護身用の何かを」
あらー、バレてら。公認ってことでいいかな? よし、買うぞー! リリアリーリの護身用かぁ、何がいいかな? 魔女と言えばやっぱり箒かなー! おおう、いいね! 箒の耐久性に施錠かけたらいいんじゃない?
「ぅわ~、なんか嫌な予感がしてきた。アレク、やっぱりいいや。ゲルトに頼むから」
なんだと! 衝撃で動けないぞ! 視線だけゲルトレイルに合わせたらヤツは肩を窄めるだけだった。ムカつく。
ダンジョンへの準備はどんどん進んでいく。




