七
「はい、3階級昇格おめでとう」
「なんで!?」
ランクCの階級章を手渡されたところだ。
ここは王都冒険者ギルドの会議室。机を挟んで向かいにはドヤ顔を向ける受付のチーフに昇格したミランダが。
「アレク君……なんでも何もあなた、【鷹の爪】の紹介状持ってきたじゃない」
いやいやいや、ランクA特権とは言え、3階級昇格ってなんだよ!? オーバーアップでしょう!? え? 普通なの? ランクA特権どんだけだよ!
「あ~、違う違う」
あのね、とミランダは続ける。僕は今まで商業ギルドへの資金調達のため冒険者ギルドでの昇格をできるだけしないように立ち回ってきた。だから冒険者ギルドも僕の意向を汲んで昇格しないように常時依頼のランクアップ対象外のものを勧めていたんだ。
当時のあのおしゃべりギルドマスターは鍵屋の僕が望めばランクアップできるようにいつでも準備しておくように指示を残していたんだって。そしてフラクシス公爵家からも強い推薦状が届いていた。
オマケに僕が【鷹の爪】のランクA特権の紹介状を持ってきたから、3者の推薦で3段階上がるとか!? やりすぎでしょ?
「そうでもないのよ……」
困った顔でミランダは僕を見つめる。おもむろに紙を取り出して、描きながら説明してくれた。
「まず、ギルドマスターの意向でアレク君はEランクになっていたのよ。あの魔女のサリアちゃんの扉の件でね」
でも、僕はそれを望んでいなかった。ギルドマスターは心底助かったからボーナスだけではなくランクアップも決めていたんだって。12歳で既にランクEとか……ないわぁ。アレ初仕事だよ、鍵屋としてのだけれど。
「で、フラクシス公爵家はふらっとギルドに来て、推薦状を置いていったのよ。もちろんご本人じゃなくて執事の人がね」
あのできる人だな。洗練された動きが神がかってたんだよねぇ。
「それにね……この推薦状にもう一筆あったんだけれどね? マグニアス伯爵、公爵代理の権限で君が望む時にランクアップをするようにって」
だから僕はこの時点でランクDだったらしい。そこへ僕がランクA特権の推薦状を持ってきたと。
「アレク君にしたら突然の事でびっくりかもしれないけれど、ギルドとしてはやっと処理できるから喜んでいるのよ」
おおう、塩漬け依頼ならぬ塩漬け昇格処理だったのか……。ランクCなんて一体何をさせられてなんの責任が付くんだろう?
「あ~、大丈夫よ。アレク君の階級章には公爵家と伯爵家のエムブレムが刻んであるから、よっぽどの事がない限りギルドからの横槍とか国から依頼が届くことは無いし。"お抱え"扱いだそうよ。良かったね」
何がいいんだか……。お抱えって断れないやつだよねぇ? うーん、どんどん深みにはまっているような気がしないでもないな。
思ったんだけどさ……やっぱりミランダは説明すごく上手いのに、絵心無さすぎじゃない? これ単純に矢印とか、棒線とか歪みまくってるしさ。字が上手いからいいけど、微妙だなぁ。
それにしても、一気にパーティーでランクトップに躍り出てしまった。ごぼう抜きじゃないか。DからCになるのってかなり時間がかかるって聞いてるんだけど。……恐るべしランクA特権。あ、でもランクA特権と言えども、CからBとかBからAには出来ないんだって。あくまでもCまでが最大の効果範囲らしい。さすがにAやらBが推薦だけでなれるもんなら世の中理不尽がまかり通ることになる? いや、ギルドの威信とかメンツとか力関係に大きく影響しそうだよね。強く出られないと、本当に困った依頼を高ランク冒険者に受けてもらえなくなるし。
とにかく強制依頼をあまり受けなくていいのなら、願ったり叶ったりだね。ゲルトレイルのランクアップをどうするか考えるかぁ。うん、他人事になると急に楽しくなってきた。ダンジョンで【斧術・笑】を一気に高めるチャンスだね。せめて【上】くらいになっておいてもらいたい。ついでに僕も【鍵】のレベルを上げたいし。
一度帰ってパーティー名をちゃんと決定しないと……。




