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今回は4部構成です。

 カタコトカタコトと馬車は進む。


 ゲルトレイルの故郷デラーマ公爵領を乗合馬車で後にした。特に彼の実家やその街に行くことも無く、ダンジョンから繋げられた城塞地下から出て直ぐに引き返してきたんだ。ゲルトレイルはあまり故郷に執着していないから、要望も無くあっさり帰ることにもなんの反応も見せなかった。


 王都から八方に広がる8大公爵領の城塞からまっすぐ進めば大関所があり、入出領税を払えば、また馬車でまっすぐに王都へ帰ることが出来る。領地間の関所は高すぎて利用者は少ない。隣の領地でも、王都へ一旦入ってからの方が何かと安く済むんだ。なんだかなぁと思わなくもない。


 馬車は大関所で乗り換えだ。無事に4人とも乗合馬車に入ることが出来、貸切状態になる。気が楽でいいね。


「アレクセイ、今回は上手くいったの?」


 サリアラーラは遠慮がちにこちらを向いた。前回成果がなくて気が抜けていたんだけど、今回は喜ぶでもなく、ガッカリでもないから気が気でなかったようだね。


「うん、一応はね。でも今すぐ役に立つものでは無いみたい」


 よくわからない返事を返す。デラーマの祭壇室で得たスキルは本当に使えない。"今は"。だけど、将来"化ける"と思う。【門】のスキルが揃えば、【鍵師】はきっと……。


 僕は【鍵】と【門】の持つそれぞれの効果や能力に仮説を立てた。きっと8つの門から得られるスキルは僕の思っている能力のうちの大半が予測通りのものだと思っている。多くの能力のうちの8つの機能だろう。


 だけど、その機能は使い方次第でとんでもない事件や事象を起こすに違いない。それこそ世界がひっくり返るほどの。【鍵】ですら人の想像を遥かに超える力があるんだ。【門】が備えているポテンシャルと僕の想像力次第で、あるいは考え方や発想次第で……。


 僕は身に宿る恐ろしいスキルに身震いした。


 3人は僕の様子をじっと見ていたけれど、最初に動いたのはリリアリーリだった。腕をさすっていた僕にマントをかけてくれたんだよ。ありがとね。


「アレク、ちょっと横になったらどうかな? 疲れてるんだよきっと。ほら、お姉ちゃんの膝空いてるから」


 リリアリーリはそっと僕をサリアラーラの方へ押した。腕をさすっていたから無防備だったとは言え、あんた押し方うますぎやしませんか!? すっぽり首がサリアの太股へフィットしてしまった。


「「ぅぇっ!?」」


 二人同時に小さな悲鳴をあげる。お互い顔が真っ赤だ。慌てて身を起こそうとした僕をリリアは抑えに入るし、サリアは頭を撫でてきたから諦めて目を瞑った。小さく「おやすみ」と言う言葉しか頭に入ってくることなく、僕は意識を手放した。



 ーーーーー



「アレクは何を抱えてるんだろうな……」


 ボソリとゲルトが言ったから、思わず私の膝に頭を横たえ、眠っているアレクセイを見やった。


 最下級の冒険者で、商業ギルドに在籍していながら、この中では1番強い男の子の寝顔を私は堪能している。


 ゲルトが言うように、アレクセイは何か大きなものを抱えている。城塞地下の特殊な部屋に秘密があるのだけれど、私たちには入れない部屋なんだ。彼の【鍵】スキルの力で無理矢理入っているのか、自然と受け入れられているのかは判断する余地がない。あまり話してはくれないんだ。


 3年の付き合いになる彼とのやり取りや、パーティーでの行動を見ても、彼の身勝手な行動というよりは最大限私たちを守るための行動なんだと思う。だからこそ歯がゆいんだ。相談して欲しい。だけど、何かが私たちに足りないのか、彼に足りないのか、それすらも今はわからない。


 どうしたらいい?


 とりあえず私は彼の頭をそっと撫でて癒されている。本当は癒してあげたいんだけれど。


 彼がどうしてか"ピンポン"と呼ぶ私の契約精霊も、彼の左肩が好きなようで、よく定位置に収まっているんだ。けれど今は彼の左肩は私の膝にぴったりとくっついている。仕方なさそうに私の周りにふよふよ浮きながら明滅していた。


 馬車はまっすぐ進むだけだから、この幸せな時間もあっという間に終わってしまう。ずっと続けばいいのに。



 ーーーーー



 アレクにマントをかけてあげたはいいけれど、お姉ちゃんがものすごい睨んできた。自分でかけてあげたら良いのに、と思わなくもない。


 お姉ちゃんはわかりやすいねぇ。そんなに睨まなくてもアレクはきっと気づいているよ? お姉ちゃんがアレクの事が好きで、私がそれを少し遠慮してることもね。


 諦める事はないんだろうなぁ。お姉ちゃんが少しでも引いたら、私はアレクをきっと離さない。私も諦めるなんてできないから。でも今はお姉ちゃんの手助けをしてあげよう。


 本当はアレクは私たちにあまり興味はないって知ってるんだ。悲しいことだけど、事実だ。私たちがおしかけているだけで、アレクには好きな人がいる。きっと叶わない恋をして傷ついたんだ。


 フラクシス大関所での彼の変化はきっとそういうことなんだと思ったんだ。失恋が彼を大人にした部分がある。放心している時間も多かったし、ため息も。


「アレクは何を抱えてるんだろうな……」


 ゲルトが言った何気ない一言が、私を思考の渦から引き戻した。そうだ、今は自分の色恋よりも、アレクの変化の方が心配だよ。時々何かにうなされるように頭を抑えている時があるし、難しい顔をしている時間が多くなった。


 私はアレクに何をしてあげられる?



 ーーーーー



 城塞地下の部屋から出てきたアレクは複雑な表情をしていた。芳しくない結果だったのかはわからない。前回の様子とはまた違った雰囲気だったんだ。


 "今は"役に立たないと言いながらも、将来役に立つだろう出来事か、能力かはわからないが、何かを体得したのはわかった。


【鍵師】という特殊なジョブを持つ俺のダチはどんどん前に進んでいる。果たして追いつけるのか? いや、そもそも同じ世界を歩いている気がしない時がある。本当に不思議な男だ。


 俺だけが知るアレクの能力。2つ以上のスキルやジョブを他人に与えるという強力なスキル。正確には"解錠"というらしい。これによって俺は【軍師】というジョブを開放された。


 一気に軍略や判断能力が引き上げられたのをつい昨日の事のように思い出せる。こんな恐ろしいことは他人には言えない。絶対にこの国を敵に回すだろう。祭司達が黙っていないはずだし、王国が抱え込む未来も透けて見える。


 さっきアレクが身震いしていたのはそういう事と関係があるのだろうか? もしかしたら特殊な部屋で何かあったのかもしれないし、新しい情報を得たのかもしれない。


【軍師】の能力がパーティーの立ち回りを導いたり、事の最善を考えるよう促してくる。貰ったジョブでアレクの成功のルートを必ず見つけてやる。


 魔女2人によって眠ったアレクを見て、俺は決意を新たにした。



パーティーのそれぞれの気持ちでした。

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