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鍵屋無双 ~いや、すごい強いですよこのスキル~  作者: TAKUTOJ
7章 冷やかし客にご用心編
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3刻

「僕宛てに?」

「はい、2通届いておりますよ」


 はい、どうぞ。と目の前の女性に渡されたものは、封筒2枚。


 僕は今、冒険者ギルドの受付にいる。


 "アレクへ"という見覚えのあるちょっと下手くそな字で書いてある手紙。姉だ。凄く嬉しいんだよ? 僕は姉の事を尊敬しているし、適わないなと思うんだけれど、この「字が汚い」のだけは嫌いだ。


 日本で過ごした20年間も、字が汚いヤツが嫌だった。なんでだろう? 多分習字を習ってたときに友達がほとんど外で遊んでたのが思いの外ダメージあったんだろうなぁ。しょうもない理由だね。そんな八つ当たり的思考を姉に向けるのは良くないことだけれど、コッチに産まれてからもその考えが変わらない。


 そういう訳で身内の手紙を後回しにする僕。


 一方には何も書かれていなかった。貼られたメモ用紙の"アレクセイ・ヴァレント行き"という殴り書きとギルドの印鑑が押されるのみ。殴り書きにもイラッときている。汚い。


 ギルドの併設酒場のテーブルに移動して、飲み物を注文。こちらの手紙から開けることにした。


 開けるとメモが1枚、紹介状という小さな封筒がもうひとつ。


『【怠惰の蛇】を探し、紹介状を渡せ。シーダー』


 やる事が決まった。【怠惰の蛇】なる人物? 組織? を探して何かしらの情報を貰うか、協力をお願いするのかされるのか。僕はテーブルから視線を上げて周囲を見渡す。目的の人物は……いた。


 掲示板の前で渋い顔をし、紫の髪を黒のトンガリ帽子で隠している女の子に目をやる。なにか選考基準でもあるのかな? 困っているようだけれど、目が合いそうだから、そろそろもう1つの手紙を読もう。


 そう思っていると、何やら依頼書を数枚手に持ってテーブルの対面に座る魔女が1人。


「あのね、アレクセイ」

「ん?」


 討伐依頼と採取依頼で悩んでいるそうだ。解決策を提示する。


「ランクDの討伐を受けなよ」

「それじゃアレクセイが受けられないでしょ!」

「うん。だけど、ポーターにしておけば行けるって」

「……ダメよ! パーティーで行くんだからっ」


 でもなぁ、【怠惰の蛇】を探さないといけないし、クエスト受けてる場合でもないんだよ。そんな事を掻い摘んで説明と説得を試みる。サリアラーラは複雑そうな顔をした。なんだか悲し気だ。


「安心してサリア。こんなこともあろうかと、さっき受付で3人用のパーティー申請しておいたから!」


 サリアラーラはギョっとした瞬間顔を青ざめさせた。そして一気に受付へ向かう。何やら受付嬢と暫くお話した後、鬼の形相で戻ってきた。そして人がいないことを確認、からの~?


「なんてことしてくれたのよ!!」


 雷が落ちた。


 ほとんど人がいない昼下がりのギルド内、サリアラーラの叫びに反応したのはギルド職員だ。だけど、露骨にこちらを見てくる事はない。チラチラ気にしているようだけど。修羅場に見えなくもないんだろう。


 効率重視の僕のやり方は説明まで省いてしまうから、周りに理解されずに困惑されることが多い。ソロなら問題は無いけれど、もうパーティーで行動しているんだから、いい加減にしないと愛想つかされるね、反省しよう。


「ごめん、サリア。勝手に手続きした事はちゃんと謝るよ、反省してる。僕はダメだね。1人で色々やってきた事が多くて、パーティーで行動することの何たるかをあんまり考えてなかったんだ」


 潔く頭を下げた。なかなか声が掛からないからいつまでこの頭を上げたらいいかわからない。あちゃー、相当お怒りなのかな? でも流石にそろそろいいよね? ダメ? 僕は恐る恐る顔を起こした。


 そんなタイミングでゲルトレイルとリリアリーリが戻ってきた。


「どうしたの、お姉ちゃん? そんな怖い顔して」

「アレク、お前サリア怒らせるような事したのか?」


 先程の事を踏まえて、何も省かずに効率重視の事も、僕の想い含めて起こった事を説明すると、微妙な顔をされた。ズイっとサリアラーラが前に出てくる。


「わたしはそういう事を怒ってるんじゃないからねっ!? 2人とも聞いて! アレクセイったら酷いんだよ。私たちの3人パーティーね……」


「まさか……」


 皆まで言わずにゲルトレイルが僕の胸ぐらを掴んで立たせに入った。グーンと身が伸びる。暴力反対、タスケテ。リリアリーリに一瞬だけ目を向けたけど、彼女は首を振った。助けてはくれないらしい。


 パーティー申請の初回登録費用は無料で行える。名前の決まっていない僕達のパーティーはまだ残念ながら仮申請しかできていない。仮申請の場合はランクの1番低い者に合わせた依頼しか受けられないのだ。


 だから報酬の高い依頼を受けられるように僕を省いた3人用のパーティー申請をしておいたのだ。ポーター要員として着いていく事ができるんだから何も困らないのに。


 サリアラーラはボソリと呟いた。


「変更には銀貨2枚いるんだって……」


 3人はガックリと肩を落とす。


 今日は、新パーティー【冷やかし客】の誕生記念日だ。



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