9の時
閑話の3話を移動させましたので、こちらが26日分の最新話です。
よろしくお願いします。
フラクシス大関所の会議室に、伯爵と要職に就いている子爵2人、兵士たち数人が詰めている。囚われた6人の侵入者と、捕縛の立役者である魔女2人、赤髪の戦士もその中にいた。
僕は会議室のドアをノックして入室を果たす。
連れを見て伯爵が声を発した。
「そちらは?」
そういえば彼女の関所入場の手続きしてないな、と思いながらも話を進める。
「こちらはランクA冒険者パーティー【鷹の爪】所属の"聖女"リナフレア様です。今回の彼らへの尋問にご協力をいただくために、来ていただきました」
そう言うと、会議室がどよめく。とんだ有名人が来た、とザワザワしだす。リナフレアは1歩前に出て僕の前に並ぶことで、場に静寂をもたらした。聖女の自然な所作で作り出された雰囲気に誰もが息を呑む。
「バーミル伯爵様、ご紹介に預かりました【鷹の爪】リナフレアと申します。此度はアレクセイ・ヴァレントの要請により、こちらへ馳せ参じました。突然の来訪、失礼致します」
伯爵は一瞬だけ驚いたが、すぐに貴族の気品を発する。
「これはご丁寧に。貴殿のお噂はかねがね。滞在は勿論大歓迎ですぞ。して、聖女殿がお力添えをくださると言うのはどういう?」
挨拶だけで入場許可を取り付けるリナフレアは真に"聖女"だった。門番のおっちゃんは正しかったんだ。
伯爵の問いには僕が応える。聖女の魔法の助けで尋問を円滑にする事を伝えた。疲れている彼女には申し訳ないが、詠唱を行なってもらう。
【真実の審判】が発動した。捕囚達は嘘が見抜かれる事を実証されたことにより、あえなく自白することになった。
「では、私はこれで」
「聖女殿、ゆっくりしていかれぬか、礼ができておらぬ」
聖女は慈愛に満ちた笑顔で首を振った。「アレクセイにお渡し下さい」とだけ述べて退室していく。僕を置いて行くと帰れないの分かってるのかな? 色々困らせることは思いついたけど、今回は聖女に恥をかかせるわけにいかない。僕がお願いしたからね。やらないよ? ほんとだよ? 僕は会議室を出る時に1つお辞儀をして聖女を追いかけた。
「リーナ、"行きますよ"くらい言ってくれないと!」
しまった! という顔もなんだか似合っていた。
僕はリナフレアの状態:疲労をこっそり解錠して、【鷹の爪】が待つ27階層へと彼女を送り届けた。
「ただいま」
僕が掛ける声ではないけれど、挨拶大事だよね? さっきのリナフレアで学んだしね。リナフレアだけが体験した【八卦神門】の転移に彼女は聖女らしからぬはしゃぎ方をした。"すごいすごい"と喜んでいる。悪い気はしなかったけど、"内緒ね"とお願いしておいた。どっちにしろ説明できないと返される。
【鷹の爪】はリナフレアを一目見ると安堵した。彼女が意外にも元気そうにしているのにも驚いている。こういうところが彼らの観察眼、洞察力、結束力をお互い強め合っているんだと認めさせられる。ランクAは伊達じゃない。
少しの羨ましさと憧れを胸に、僕は27階層を後にした。




