ep04
ミーナはガッカリしていた。
スキルでだ。
「ミーナ、仕方ないよ。こればっかりは選べないんだから」
僕は姉の背中に手を当てて慰めている。
「うぅ、アレクぅ……よりにもよって【剣術】ってぇ!」
「ガキ大将の所産だね……」
そう言うと彼女は机に突っ伏した。わんわん泣き始める。女を磨いてきたのに! と叫ぶ姿は最早女らしくはないのだが、言っても詮無いことだ。
「それで、ミーナはどうするの?」
「どうしよう……」
勿論、将来の話だが、両親と僕を交えて家族会議が始まる。長々と話し合いは続いたが、結局15歳のジョブ継承の儀式に任せることにするらしい。
ジョブ継承。これまた僕にとっては忌まわしい習慣なのだけど。この儀式でジョブと呼ばれる固有の本人の職業が決まる。ややこしい話だが、実際に就いている職業ではなく、個性のようなものだ。
【戦士】という固有ジョブを持つ騎士がいる。この騎士は所持しているスキルが戦士系のものなのだろう。戦いにおいて戦士のスキルを持って騎士の勤めを果たす訳だ。確かに強いのだが、騎士の理念として、守りが肝要なのに、戦い方が攻撃特化だから騎士の本領を発揮するには十全ではないのかもしれない。
姉は【剣術】というスキルを授かった。それを活かさない訳にはいかない。剣術を必要とする固有ジョブに選択肢が狭められたという事だ。【鍛冶】や【裁縫】と違って選択肢は広いのかもしれないが、本人が望んでいた職人ではなく、戦いに身を置くジョブを与えられるのだろう。
本当に酷い世界だ。吐き気がする。
しばらくすると姉に王都から手紙が届いた。職業斡旋の手紙。掻い摘んで言うと、まず学院に通って【剣術】を磨かないか? という内容だ。プライバシーどうなってるの?
補助金が出て、親に負担がかからずに通える王都出資の学院。3年後に控えたジョブ継承で将来の人材確保を狙ってのことだろう。
本人もスキルを鍛えられて、親にもメリットがあり、王都は将来有望な若者を確保出来る。よく考えられたシステムだ。くだらない。
姉は王都行きを決めた。
僕を伴って。
なんでも、王都の学院には寮生活が必要になるのだが、その寮に空きがなく、近くの宿を買い取った新宿舎を活用するらしいのだ。普通の寮ではないため、付き人が一人許されることになった。
アレだ。執事みたいな役目。管理していてね、という感じらしい。新しい試みなので、まだ手探りなのだとか。そういう新しい風を吹かせる人が王都にいる。その事が僕の気持ちを高揚させていた。
新しい【鍵】の力を試すのにいい環境だ。楽しみが増えた。
この時僕は気づいていなかった。このスキルがとんでもない力を秘めている事に。