5の時
関所が見えてきた。
王都からここまでは石畳の道路が敷設された安全な道だ。王都にある8門から全てに敷かれている。ここ南方も例外ではない。関所を越えれば、後は領主が好きなように運営するため、同じ道路がある領地もあれば、土の道路の領地もある。
だんだんと大きくなる関所の景観に驚きを隠せない。デカ過ぎない? 要塞か!? って思うくらいデカい。8公爵が威信をかけて作るから、どこも立派なんだって。王都の8門もそれぞれの公爵がテコ入れするらしいよ。ため息も隠せないな、はぁ。
カタカタ……カ、タ、カタ。
馬と馬車が小気味よく停止した。着いたね。僕とゲルトレイルは馬車を勢いよく飛び降りた。程よく色あせてきた革鎧の内ポケットから公爵の手紙を取り出して、門番の兵士に見せる。
「ヴァレント殿ですね。お付の人はお1人ですか?」
「いえ、後ほど女性2名も到着します。4名でお願い致します」
後から来る魔女の特徴を伝え終えるとすぐ僕達は中へ通された。中も広い。先程の乗合馬車が遠ざかる音を聴きながら、領主の執務室へ招かれる。
中にいた人物は領主ではなく、ここを預かる伯爵様だった。眼光鋭いが、気さくな方でほっとする。
クライム・フォン・バーミル伯爵(40歳)
バーミル領、領主
スキル:【経営】
ジョブ:【弓士】
あえて突っ込むまい。
「ヴァレント殿、フラクシス公爵が期待しておられたよ。頼むな!」
「ご期待に添えるよう、頑張ります」
善処します、とは言わない。若いからね、こっちの方が印象良いと思ったんだ。
「伯爵様」
「なんだね?」
「すぐに錠前の取り替えを済ませておきたいのですが、構いませんか?」
驚かれた。まだ滞在する部屋さえ案内していないのに、着いたばかりで仕事熱心なことだと褒められもする。そして鍵の説明もしておかなければ。
「公爵様から、こちらの鍵の登録を伯爵様にしてもらいたいとの事で、お持ちしたんですが、領主室の金庫用だそうです」
うむ。と頷いた伯爵は、説明通りに魔力を宿して応じてくれる。実に話の分かる人だ。スムーズに終わる。
各部屋の金庫も全て作業を終わらせた。そしてゆっくりと関所の作りを見て回る。ゲルトレイルと防衛についてあれこれ話すのは面白い。彼は幅広い見識を備えている。なんで【斧術・笑】なんだろう? あ、「下」だ。失礼しました。
予め用意されていた部屋へと入ろうとドアを開けたら、悲壮な顔をした女の子2人が一気に怒りの形相へと変わる。
バタン。施錠。
中からドンドンとドアを叩く音が響く。"あれ、開かない! なんで!? 開けて!"とうるさい。そっちが中でしょうに。彼女達が諦めた頃合に僕はドアを解錠してやった。いつの間にか到着していた魔女たちを誰かがこの部屋へ案内してくれていたようだ。
「やあ! 遅早かったね?」
「「意味わからないから!?」」
おおー、久々にそろった声を聞いたなぁ!
嬉しそうにしていると、後ろから赤髪のため息が聞こえた気がした。




