3の時
机に沈む僕をゲルトレイル、サリアラーラ、リリアリーリが心配そうに見ていた。僕の店舗から。
「あの~、アレク~? お客さんだよ〜?」
冷やかしじゃん。机に頬をつけたまま、3人を睨む。
「1個銀貨2枚ね、そこに置いといて」
どうせ買う気もないだろうから高値に設定しておく。気だるげにぞんざいに扱ったところで、彼らにはなんにもダメージは入らないんだから塩対応でいい。
「スイーツあるよ~、一緒に食べよう?」
「いらない」
「冒険行こうアレク!」
「行かない」
「体調悪いのアレクセイ? 何か作るよ?」
「いい。放っておいて」
3人はお互いを見合わせて困った顔をした。僕の抜け殻状態に困惑しているんだろう。こんなこと今までになかったからね。人間関係をダメにするような事を避けてきたから。僕は自分で何やってんだろうと思う。だけど、今はどうしようもない。
そういえば、この3人揃ったの初めてか? 冷やかし3人衆に昇格だな。あれか、パーティー【冷やかし】。
「おい、アレク。変だぞ! あれか、恋煩いか?」
「こ、こ、恋、恋煩い!? 誰と!?」
「お姉ちゃん、動揺し過ぎだよ、まだそうと決まったわけじゃ……」
家を施錠して奴らを締め出した。出口を設定しておいたから、施錠したらちゃんとそこへ吹っ飛んで行ったけど、怪我は無いはず。ギャーギャー聞こえるが、無視だ。もう耳にも届かないけど。
カランカラン。
お客だ。
店に出る。すると公爵家の使いの者だった。手紙を持ってきて僕に手渡すと、その人はすぐに店から出て行った。
封は公爵の印と封蝋が施されている。
中身は依頼書だった。大関所への錠前交換並びに警備員のバイト。日にち指定で間者を見つけて欲しいとの事だ。人員は僕を合わせて4人まで認めると。
後で聞いたことだけれど、幽閉されているマグニアス伯爵の裁判が始まる前に、襲撃があると予想していたのだという。全部の大関所が襲われる計画があったらしい。事を起こした公爵家も襲われる様に仕向けて、疑いの目をそらされるように取り計らうのが常なんだと。アホじゃないだろうか。経費の無駄遣い甚だしい。税金をそんなとこに使うなよ!
この計画、ぶっ潰してやる……。
やる気に火がついた。店舗も解錠してやろう。
ドタドタと流れ込んでくる者達を一瞥すると、僕は赤髪に注意を向けた。
「ゲルト、護衛依頼、受ける?」
おう! と返事が元気よく返ってくるのはいいけれども、危険だよ? まぁ、もしもの時は守ってやるか。
「じゃあ、準備もあるから、1刻後に南門集合ね、わかったら急いで。物資や食器具は要らないから。それと寝具も要らない」
「行先は?」
頷きながらも必要な質問だけ寄越してくるゲルトレイルは本当に頭の回転も良いようだ。短く大関所と応えて、自分の生活スペースへ振り返る。それだけで赤髪はすぐに出て行った。この行動力も魅力の1つだな。
「アレクセイ、私達も役に立てる?」
この聞き方よ。控えめなのに、ちゃんと自己主張もするんだから、脱帽だね。何がなんでも着いて行くという強引さは無いものの、そこにはちゃんと意思がある。魔女サリアラーラの小さな主張は、僕の琴線に触れる。聞き方ズルいよねぇ。断りにくいったらない。強引さは僕にとって拒絶の対象だけど、役に立ちたいという控えめな願いは揺さぶられる。なんか、手の平の上で踊らされてる感が……気の所為だよね?
「危険だよ?」
彼女達はしっかり頷いた。来るらしい。
「森に帰ってる暇は無いよ? そのまま行くの?」
「王都にいる時はね、大体の準備は出来てるんだよ? 最低限のものが宿にあるからゲルトよりも早いよ?」
リリアリーリにドヤ顔を向けられる。イラッとしたから脳天チョップをお見舞しておいた。
「いったぁーい。暴力反対!」
両掌で押される。ギャーっ! 僕の体は壁に激突した。
痛い。
死んだフリを決行した。ピクリとも動かない。行動施錠を自分に施した。
「あ、アレ、アレクセイ? 大丈夫? ちょっと、アレクセイったら!」
揺さぶるサリアラーラに酷く動揺するリリアリーリ。
「アレク……ど、どうしようお姉ちゃん!?」
なんかこの茶番も面倒くさくなってきたからすっと立つと同時に"がー!"って大声出したら、二人とも声に出さずに固まってくれた。
「じゃ、南門集合ね」
フフンと鼻で笑ったら2人は悔しそうにしながらも笑ってくれた。




