1の時
王都ルクセンから南へ向かうと、この国の8つある大関所の1つ、フラクシス関所がある。それぞれ公爵家の名の付された関所だ。僕は今、この関所に来ている。
関所内にある執務室は合計で5つ。
領主室
財務室
会計室
管理室
事務室
そして駐屯所、訓練所、医務室、休憩所、会議室に待合室。様々な機能を搭載した巨大な関所。
僕は仕事として、この部屋の各金庫に付ける南京錠と鍵の登録に来ているんだ。大口の仕事だ。と言ってもこれは表向きのもので、本当の仕事はここを襲うハズの敵の捕縛または撃退。その援護をして欲しいとの事だ。
公爵家で間者をいち早く見抜いた手腕を買われたんだ。剣の実力とかでは断じて無い。
大関所は時折色々な攻撃や悪意に晒される。公爵家の手の者だったリ、傘下の伯爵家だったり様々だ。ただ証拠が残らないためにどこの公爵家も大関所問題に頭を悩ませているのが現状だ。止めればいいのに、全員で。
ただ、面白いものでトカゲの尻尾切りができないシステムになっている。日和見貴族がこの国にはいないのだ。必ずどこかの公爵家か王族の下にいるから。悪事が通りにくく、バレやすい。それは上の者に響いてくるから、下手な策は取れないんだ。
どういう仕組みかと言うと。
知事=公爵
市長=伯爵
町長=子爵
村長=男爵
の様な役回りで、必ずその領地に帰属するシステムなんだ。だから、下が何かやらかせば、上にまで波及してしまうという訳だ。
その上で他の公爵家の嫌がらせをする訳だから、かなり巧妙な手口を必要とする訳で。どうしようもないな、貴族。馬鹿じゃないだろうか? 使われるのは主に平民だ。それも高スキル持ちの。捕まえても、足が付かないように闇組織や、他の貴族家からの者を巧みに絡ませたりする。それで関係ない所で関係を壊されたりするようだ。
この世界のスキルシステムと同じ程胸クソ悪い貴族のやり口に辟易する。
歩哨の王都側に身を寄せて僕は今後を考えていた。
背中のブロードソードの革の鞘が刃と擦れてカチカチいわないように、纏めて施錠する。1つの物として扱うことが出来るんだ。地味に便利なことが出来る【鍵】スキル。多才だ。
とりあえず僕は各部屋を関係者だけ入れるように施錠した。これで書類関係は完全に守られたから、もう仕事終わりでいいよね? 周りからはわからないから何しに来たんだってところだけれども。
僕は暇を持て余していたから、兵士たちの訓練所で一緒に訓練に参加させてもらった。いや~、スキル持ちめっちゃ強い。歯が立たないよね。僕の剣技が笑えるレベルってのもあるけれど、それにしたって強い。
新米の【剣技】を持つ【剣士】が、熟練の【剣士】で戦闘系スキル無しの剣士に押し勝ってしまうんだから、理不尽なものだ。
僕の弱さは兵士たちの矜恃を守ったようで、ほぼ皆が仲良くしてくれるようになった。
フラクシス公爵家傘下の兵士たちは統率の取れた忠誠心の強い者達に見えた。どうやら待遇が良いらしい。公爵は自ら兵士たちに声を掛けては激励を飛ばしたり、労ったリするんだって。新米の兵士のお兄さんが名前で呼ばれてぎょっとした様子を話してくれた。
孫子の言う"己を知"る強さを垣間見た気がした。
夕日が大関所を照らし出し、西日で人の目を細めさせる時に、それはやってきた。
僕はブロードソードを手に握る。




