2幕
王都の地下に避難用の通路がある。
古くてジメジメしたそこはもう捨てられた廃墟だ。城から抜けるための王族専用の避難用通路だったそこがスラムのメイン住居になってからもう70年になると言う。
ダンジョンの魔物達がここへ迷い込んだ事から捨てられる原因になった場所だ。今は王都の"闇"がこの場所にある。
そんな怪しく危険な場所に足を踏み入れているのにも理由があるんだ。仕事だからね。
僕が危険な仕事をしているわけでも、させられている訳でもないんだ。なんせ鍵屋だからね。つまり、鍵開けの仕事を頼まれたんだよ。闇組織のドンから。
めんどくさいんだよね。巻き込まれたくないから断りたいけど、そこに開かない扉があるのなら、行くしか? ないよね~。職業意識の高すぎる僕には断れなかったんだ。"ならば開けましょう"ってなもんだよね。実際開けるのは金庫らしいけど。
嫌な記憶が蘇る。開けた瞬間ドンってやられなきゃいいんだけど。あの痛みはもうこびりつく程のものではなくなったし、夢に見ることも無くなった。細心の注意を払って開けよう。
幸いにも、スキルで開けられないものは無いから、鍵開けに集中しすぎて危険を回避できないってことも無い。護衛もいるし、今回は上手く立ち回るための土台にしようと思っているんだ。だからゲルトレイルを成り行きだけど雇えて良かったよ。
「なあ、アレク……ほんとにこんな所に人が居んのか?」
「居るのは魔物だよ?」
「え!?」
「うーそ」
「……」
メンタルどうにかならないかな……。慰めるのも面倒臭いから放置で、ドンドン進む。カビ臭い通路が延々続くのかと思ったら、少し開けた所へと出た。布で仕切られた家、のようなものや元コテージだったもの、破れたテント等に住む人々が集まる集落だ。
隙間からこちらを見て、興味をなくす者がほとんどだったんだけど、向う見ずはどこにでもいるようだ。そっとゲルトレイルに目で合図した。立ち位置を代えた彼が背負った斧を手に構える。すると近づこうとした男は直ぐに元の居場所に戻っていった。
雇った甲斐があった。これだけの事で回避出来る揉め事があるなら、もう護衛様様だね。今度から危険な匂いのするお仕事は護衛を連れて行こう、そうしよう。無駄に絡まれるのも嫌だし。
ようやっと目的地に辿り着く。そこは王族が逃げる時の休憩に使う部屋のような場所だった。いや、実際その目的で使われていたんだろう。ドアが無駄に立派だし、王家の紋章まで付いている。
何が出るのやら。
トン、トトン、トン。僕はノッカーを予め言われていたリズムで叩く。今月の客用のノックの合図らしい。毎回変わるから、覚えても無駄だ。
闇組織のドンとの面会時間の始まりだ。




