1幕
新章スタートです。
「いらっしゃいませー」
カランカラン。
こんな時間に誰だよ〜。朝日が顔を出したまだ早い時間にも関わらず、お店のドアに手を掛けた音がする。僕は咄嗟にお店の挨拶だ。ドアに仕掛けた鐘が鳴る前にちゃんと言えたで~イェイ。
「アレク! 冒険行こうぜ! 冒険!」
お客様じゃないようだ、塩対応を心掛ける。
「そんなもん心掛けるもんじゃないだろ!」
おっと、心の声がダダ漏れだったみたい。気をつけないと。目の前に現れたこの男は赤い髪が特徴のやさぐれ冒険者ゲルトレイル(17歳)だ。まだ少年と言っていい。歳上だけど。馴染んだ良い焼け具合の革の鎧を着こなす中々のイケメンだ。両肩に手斧を仕込み、長い柄の斧を背負う。黒の綿パンを何着も持ち歩き、革のブーツを履いているヤツだ。
ゲルトレイル(17)
冒険者
スキル:【斧術・下】
ジョブ:【戦士】
ランクE
なかなか冒険者らしい人物ではある。スキルの斧術のおかげでパワーファイターなイメージだけど、緻密な戦術を好む策士だ。頭は良いらしい。なのに授かったスキルとジョブが【斧術】とか【戦士】なんだから困ったもんだよね。人は見かけによらないいい例がこちらにいらっしゃるゲルトレイル先生だ。
「お断りします。今日はご予約のお客様が来やがるんで」
「敬ってんのか、嫌がってんのかわかんねーわ!」
苦笑しながらもツッコミをくれる数少ない冷やかしの1人でもある。
彼との出会いはダンジョンだ。【鷹の爪】がやっと9階層に辿り着き、僕をポーターとして雇った時のポーター仲間でもある。
「ゲルトは暇なんですか? 暇なんですね? 持て余してるんですね? 誰もパーティー組んでくれなかったんですね? わかりますわかります、そういう時辛いですよね」
「……」
あちゃー。無言で撃沈とか、メンタル弱過ぎないかな。大丈夫? 手に持った鉛筆くらいの棒で項垂れた頭を軽くつついてみる。
「仕方ありませんね、ボディーガードに付いてきます? 報酬も出しますよ」
本当はボディーガードなんて微塵も必要ないけれど、お互いに護衛依頼のなんたるかを学ぶいい機会じゃないだろうか。僕は雇う側として、彼は雇われる側として。
ゲルトレイルは一気に立ち直る。彼の美点だ。瓦解したパーティーを立て直すには必須スキルと言っていいだろう。
「そのお客様って奴のところに行くのか?」
「違うよ、それは後、じゃあ行こうか」
僕は身支度を整えると軽めのリュックに商品を丁寧に入れて動き出す。
そして、僕達はスラム街を練り歩いた。




