2の巻
開業に向けてのあれこれ。
13歳頃の過去話
「いらっしゃいませ」
僕は今、商業ギルドに足を向け、受付にたどり着いたところだ。冒険者ギルドと違い、小綺麗なオフィスと言っても過言ではない清廉された会社に来ている感覚に陥った。受付のお姉さんもやり手の匂いがプンプンする。
「どうぞ、おかけ下さい」
カウンターへ行くと椅子を勧められる。コロは付いていないがなかなかの椅子だね~。凄いよ商業ギルド!
「アレクセイと申します、今日は相談に」
「アレクセイ様ですね。ようこそいらっしゃいました。本日はどういったご相談でいらっしゃいますか?」
対応も素晴らしい。"みてくれ"子供の僕にも丁寧だ。僕は開業に向けてのアドバイスを求めることと自分のスキルを提示する。
「なるほど、良いスキルをお持ちですね。ぜひアレクセイ様の商業ギルド加入、お手伝いさせてください。まず、お聞きしたい点ですが……」
店舗つまり拠点の有無、営業時間、営業方針、営業内容、各種手続きの方法、税金、ギルドの方針等を聞いたり説明したりしてくれたんだ。打てば響く会話に詳しい情報、かなり素晴らしいギルドのようだ。
「入会に伴って、発生する義務ですが……」
収支報告が毎年いるらしい。国に対する税金はギルドが肩代わりする代わりに年会費が店舗や売上の規模で発生するようだ。
この辺りは冒険者ギルドと少しだけ似ている。でもクエスト事に取られる斡旋料に比べて、年間計算だから考えようによってはこちらの方がやりやすいと思う人もいるだろう。商人はみんなこっちを採用して当たり前だから疑問はないようだが、冒険者が引退してこちらに鞍替えする時に困惑する案件らしい。
「登録料は金貨5枚です。こちらは向こう5年の手数料や各種手続き、税金、斡旋料などに補填されていきます。5年後に差引の分が返還されることになっています。例えば売上から計上される税金が5年で金貨1枚でしたら、各種の手続き料などを含めても金貨3枚と銀貨数十枚が返ってくることになりますよ」
金貨1枚を登録のための目標にしていた僕はかなり勉強不足だったようだ。足りるけどね、エッヘン。自信満々で聞いている僕に、受付嬢は笑みを浮かべた。
「登録はなさいますか? メリットは店舗の紹介や斡旋も登録完了後なら、直ぐにでもできることですね! デメリットは大金が直ぐに消えてしまうこと」
副音声に、スグに取り戻せるでしょうけれど、と聞こえた気がした。世の中の受付嬢はどうしてこうも優秀なのだろうか? 僕が会った人達が特別なだけ?
「残念ですが、今日はご相談だけです。お時間取らせて申し訳ありません。参考になりました。近いうちに登録に上がります」
「はい、ではその時を心待ちにしておりますね、アレクセイ様」
次は鍛治工房だ。
僕は予め引いた図面があるか、胸ポケットを確認する。うん。ちゃんと紙の手触りがその存在を主張していた。
商業区とは言え、鍛治工房は遠い。鍛治工房は騒音がするから、王都では中心部から離されて、西門付近に配置されている。ちょうどダンジョンが近いから探索中心の冒険者には大助かりの位置にある。
お目当ての鍛治工房はあんまり流行っていないところだ。それがいい。地味な物を頼むから、あんまり忙しいと請け負ってもらえないかもしれないし。
着々と準備が進んでいることに、自然と頬も緩む。
「こんにちはー!!」
「おう!! アレクか! いらっしゃい! 今日はどうした?」
大きな挨拶で鍛治工房へ入るとスグに親方が出てきて返事を返してくれるのだ。まぁ、この工房は親方1人経営なんだけどね。髭面のナイスガイなんだよ。頭は剃っていてイカついが、心優しい御仁だ。その名をガインズ鍛治工房。
例の如く、冒険者から転向した鍛冶屋さんだ。
「発注ですよ~、お仕事の依頼です」
「マジか!?」
たま~に愛剣ブロードソードを研磨に出すんだけど、それだけで凄く喜んでくれる。今回も多分それだと思い込んでいるに違いない。ここが流行っていないのは、おおよそ想像通り、この顔のせいでしょう。でもめちゃくちゃいい人なんだよね。皆に紹介してあげたいんだけど、今から僕の仕事をして欲しいから、もうちょっと待っててね。
「これなんだけど……できる?」
「どれ……!? ……面白そうだな」
図面を親方の見やすい方向に向けて広げた。これを大きさ5種類ほど作って欲しい、とお伝えする。サンプルにも初期費用が掛かるだろうから、僕は手持ちの鉄塊と銀貨を数枚テーブルに置いた。
「わかった、いっちょやってみるか。いつまで?」
要件や期日を伝えてガインズ鍛治工房を後にする。
コレの完成も楽しみだ。




