1の巻
プロローグ的なお話
※今章は時系列無視の展開が続きます。閑章みたいなものかな。
「いらっしゃいませ~」
カランカラン。
ドアの鐘がなる直前から挨拶をする。タイミングって大事だと思わない? 僕は入ってきたお客さんの顔を見る前から挨拶するよう心がけている。できる時だけどね。
そして、顔を見てすぐ興味をなくす対象がある。仕方ないよ~、冷やかしって分かってるんだから。こんな端っこにあるこじんまりした店に足繁く冷やかしに通う愚か者を、僕は相手にしないようにしている。
面倒くさくなったら、お店を施錠してそいつだけ入れないようにすればいいんだけど、憎たらしいことに、ヤツは僕におやつを持ってきてくれる。我ながら激甘対応だ。いや、甘味の誘惑に勝てないでいる僕をどうか許してやって。
「ねっ、アレク。今日はりんごパイだよ~、前に食べてみたいって言ってたから持ってきた! 一緒に食べよう?」
コレだよ! 断れないように誘い口が巧妙だ。
「リリア、今ね仕事中なんだけど?」
「お客さん……いないよね?」
「あ、ハイ……」
十分タメを作って言うから破壊力が大きい。コレ絶対どっかで使おう。タメの長さが絶妙なんだよこの子。長過ぎず、短過ぎない"間"が大事だ。
そうそう、僕は今店舗を構えることが出来たんだ! ようやく開業ですよ!
15歳になったからジョブを手にしたんだ。これまでの3年はあっという間だった。振り返ると本当に色々あったなぁ。
冷やかしのリリアリーリと一緒にパイを食べながら、過去を語り合う。




