5話
妖精族のダンジョンはすこぶる短かった。
人には物足りないレベルで、短い。距離にして3階層くらいか。ミノタウロスの時の半分以下。リリアリーリにとっても楽な仕事じゃなかろうか? 3階層にたどり着く。
そう思いながらも、"魔族"の存在が気になる。でもなー、精霊を邪悪って言ってたからなー。イマイチ信憑性に欠けるんだよなー。本当に魔族? ていうかこの世界で魔族って初めてワードだけど。
「アラーラさん、魔族って何?」
「その残念な呼び方やめてってば! お願いだから!」
魔族とは魔王に類する人種なんだって。さしずめ魔法に長けた人間ってくくりらしい。耳と髪の色が特徴的なんだとか。もしかしてとんがり耳? 頷かれる。あ、もしかしてエルフが魔族ってパターン? いや、確認するまで結論は出さない方が精神的ダメージが少ないかも。焦ってはダメだ、頑張れアレクセイ!
魔女は違うの? そう聞くと首を振られた。魔女は人間の中からしか産まれない。サリアラーラはとんがり耳じゃないし。結論急ぐなアレクセイ。
最奥の部屋に近づいた頃に、一際大きな物音が響く。
魔法の衝突音だ。僕と魔女は頷き合うとその場から駆け出した。
そこにはボロボロの妖精達と人間。そして捕まっているクィーンと思しき妖精と、確かにとんがり耳の、肌がなんとなく灰色をした人が相対していた。
「リリアー!!」
「お姉ちゃんっ!?」
感動の再会を果たしたその場面は、事の他偉そうな"魔族"によって遮られる。
「今度はどこのネズミが入ってきたんだ、あぁ??」
なんかイラッときた。行動に施錠でも掛けてやろう。クィーンさんの縛りも解錠しておく。お、なんか頑丈そうな縄だね。
対魔のロープ
魔法を制限する縄。縛られた者の魔力を吸い取る。
おおう! 欲しいなぁ、アレ。便利そう。貰えるか交渉しよう。なんかやる気出てきた! ここへ来て魔道具とか! いいよいいね。使い道は残念ながら今は思いつかないんだけど、ロープってなんかいいよね! 岩を登ったり降りたりする時の役立て方がなんともそそる。魔道具を普通の用途で使うな? でもロープだよ?
開放されたクィーンがキョロキョロしている。どうやら解けた縄に困惑しているが、慌てると、ろくなことが無いのは分かってるみたいだ。慎重に魔族との距離を計っている。大丈夫だよ、あいつ今動けないからね。
動けないことにも気づいていないのか? なんか余裕そうだな。
えっと、普通に考えたらあのロープ、魔族のだよね? ちょうだいって聞いてみようかな? でも倒したら討伐者のものだよね? 冒険者ギルドでそう習ったし。うーん。
「あのさ、コレお前の?」
めんどくさくなったから直接聞いてみることにした。僕はスタスタ歩いていって部屋の最奥で縛られていたクィーンさんの側からロープをクイッと引っ張る。中央に仁王立ちの魔族の目の前に来てから聞いてみた。
その場の全員が固まった。魔族でさえも。あ、こいつは動けなくしたんだった。
この間誰も動いていなかった。全員の目だけが僕に向かっていたのは気付いていたんだけど。解せぬ。
魔族はコクリと頷いた。
「じゃあさ、コレ貰っていい?」
魔族はコクリと頷いた。
「マジで!? やったー! ありがとうな! お前意外といいやつ? 初対面最悪だったのに……人は見かけによらないってほんとなんだねぇ」
「……」
すごい嬉しい。うわー、厨二心爆発しそう。定位置(入口付近)に戻る。
「あ、なんかごめんね、場の空気めちゃくちゃにして? 続きどうぞ?」
「「「ぇぇぇぇ!?」」」
大ブーイングが起きた。一発触発の場面を台無しにした自覚はあるけど、僕は満足だ。対魔のロープゲットだぜ! 全員あんぐりと口を開けている。クィーンさん解放したんだから帰らんの? 首を傾げる。あ、じゃあロープでなんかやる? カウボーイみたいな投げるヤツとか面白そう!
事が終わってから僕は気がついた。あの魔族、行動制限掛けてたから頷くしかなかったのかな? まぁ、答えは闇の中だね。
こうして無事にクィーンは解放され、リリアリーリも念願の妖精魔法の習得に勤しめるようになったとか。
めでたしめでたし。
壊れてきているアレクセイ
次回、説明回




