ep01
「あぅ……あぁ……」
目を開けるつもりでいると子供の呻き声が喉と耳を刺激した。あぁ、私が発しているのか。って、ぇぇぇぇ。まじかぁ。
いや、待ってほしい。確か今日は超強力なセキュリティシステムを掻い潜ってあの金庫を開けた瞬間、撃たれたハズ。
「あ、アレク。起きたのね~。可愛いぃ。くっちゃくちゃだねぇー」
あらゆる罠を突破して最後の最後、仲間の裏切りにあったんだろう。体よく利用されたんだと思う。金庫に罠は見当たらなかったからな。くそっ、私の仕事をなんだと思ってるんだ。中身は必要無かったし、報酬も大した金額でもなかったのに。
「アレクっ、おねぃちゃんだよ‼」
恐らく、成功報酬やら口止めやら裏の事情で殺られたんだろう。つまらない人生だったな。あんな奴らに利用されるだけで終わるつもりはなかったのに。仕事はちゃんと選ぶべきだったよ、トホホ。
「ミーナ、あんまりアレクをゆらさないでね。首がまだ座ってないんだから」
でも、あいつらの人生も今日で終わりのはずだ。なんせあのセキュリティシステム、私は行きだけ解除したからな。ざまぁ。うん、そう思うとちょっと溜飲も下がってきた。
「分かってるよぅ」
じゃぁ、目の前の事象に注意を集中してみますか。って、やめろォォォォ、振り回すなァァァ、目が、目がァァァ。といっても目はまだぼんやりしか見えないんだが。
「あぎゃァァァ」
どうやら抱っこして振り回されているらしい。やめて欲しいので泣いてやる。先程から交わされている会話から、ここが日本で無いことは察せられる。
どうやら生まれたてってわけじゃなさそうだ。自分はアレクというらしい。いや、自分なのか? 憑依か乗っ取ってしまったのか? 情報が圧倒的に足りない。もし、アレクが自分ではないのなら、可愛そうだ。本人はどこへ行った? 生まれてそんなに経っていないはずだが。もしそうなら、自分の記憶を封印出来たらいいのに。
「あわわ、おかぁさん、アレクが泣いちゃった! 助けて」
アレクが本来自由に過ごすはずだった人生を私という自我がゆくべき道を塞いでしまうんじゃないだろうか。そんな事をつらつら考えていると、ゲーム画面の選択肢のような表示が頭に浮かんできた。
『記憶を施錠しますか?』
はい/いいえ
なんだこれ!? 思わず「はい」を押しそうになる。いや、待て。施錠していいはずだ。今更生にしがみついて生きていたいとは思わない。ならアレクが自由に生きる道を提供するべきじゃないのか? しかし、思考を手放したら後悔するんじゃないだろうか。都合良く思い出せたらいいのだけど。
『一部の記憶を期限付きで施錠しますか』
はい/いいえ
できるのかよ!? 思わず突っ込む。うん、アレクが自分じゃないのなら子供時代をのびのびすればいいと思う。大人すぎる子供は違和感が半端ないし。奇異な目で見られたり、麒麟児扱いされて伸び悩むと落とされるとか惨すぎるし。
とりあえず、5歳まで封印しよう。バイバイ私。姉も母親? も悪い人ではなさそうだし、スクスク育ってくれたまえ。
5年後が楽しみだ。