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短いです。m(_ _)m
エドガー・フレイツァー世界の本来の人生
エルフの森の王国の中で、孤立した村がある。エルフ王国と諍いを起こしては対立し、争いは絶えない。森から、その場所から出る精霊達の恩恵を受け、力を強大なものにしてきたエルフ。そして人の中でも異端な力を持って生まれ、捨てられた者たちが集う村。2つが起こしてきた争いは長く続いている。長寿のエルフが繋いできた伝統の強さとは違う異質の能力を持つ小さな集落は拮抗していた。その力は、人数においても力においても人よりはるかに強いはずのエルフに対抗出来るほどに異質だった。
木々を伐採し家を築き、木々を焼いて生活を営む人の群れをエルフはことの他嫌った。森はエルフに恩恵をもたらし、一つ一つの木は神聖視している。それを人は遠慮もなく扱う。言い争いから小競り合いに発展し、ついには全面戦争になった。
エルフの王は戦争で妻を亡くし、その憎悪は増す一方で、人はエルフから住処を奪われて数を減らした。絶え間ない復讐の連鎖は規模を拡大していく。
エルフの王の生命は、森と契約を結び、およそ1000年の寿命を森とエルフの繁栄のために使う。契約の儀式から1000年間拘束されるエルフの王の生き方は最高の生き方とされていた。精霊の力を授けられるという。その力で次代を担う王へと引き継いでいくのが伝統だ。
しかし異変は起こった。森の各地から光の柱が立ち上り、次々に姿を表す祠。誰も立ち入ることの許されない建物の出現にエルフ達は恐怖を覚えた。しかし依然として祠はなんのアクションも起こさずに自然と森に覆われて行く。精霊の力は、エルフの戦闘をする精神を徐々に嫌い始めていた。
1000年が近づくにつれ、王は焦りを表に出すようになった。精霊の力が失われ、弱った力を次代に引き継いでいかなければならない現状に焦っていたという。エルフ王国の衰退を恐れたのだ。ついぞその能力は取り返されることなく、悲嘆のうちに亡くなったエルフの王。エドガー・フレイツァー御歳70の頃だ。
エルフ王の死を悼み、20年は異端の村との争いは休止された。老体にむち打ちつつも易々と祠を巡って【八卦神門】を巡り全てをコンプリートした頃にはエドガー・フレイツァーは80に届いていたという。
ただ、コンプリートできたスピードは10年という破格の速さだったため、8人いる【門番】の中では堂々の2位だ。最年長でありながらの快挙とも言える。
エルフと人の戦争の歴史。
これがエドガー・フレイツァーの大まかな背景である。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
僕達継承者3人が祠から出ると……。
ザザザザザッ
途端に威嚇射出された百ほどの矢。地面に突き刺さった剣山もびっくりな矢の数々。
「っ!?」
キター!!
エルフ!!
思えば、妖精の世界で思い巡らせた矢を向けられる光景に、命の危機にも関わらず興奮するよねー。あー、エルフを生で見られる日が来ようとは!!
とりあえずエド爺に危害が及ばないように、【施錠】を。僕とクグモはここで死んでも、元の世界に帰るだけだからね。エドガーについては【鍵】が守ってくれるかもしれないけれど、祠の中だけの力かもしれないし油断は禁物だ。
僕たち三人の周りには既にエルフが囲んでいた。至近距離から矢を番えるエルフ達に興奮を抑えることは出来ない。エルフ……綺麗だなぁ。美し過ぎない?
クグモと視線を合わせる。
範囲設定、周囲100メートル。感覚で繋がった僕達三人は、何も言葉を交わさなくても大丈夫だ。
「【行動施錠】」
クグモが50名はいるであろう周囲のエルフに施錠をかけた。空かさず僕も続く。
ガラガラと弓と矢筒が周囲に転がって行った。
「……っ!?」
以前、カガ・サギリに施した【武装解錠】だ。
実に50程のエルフ達が携行していた弓と矢筒、携帯していたナイフが彼らの足元へ落ちていく。驚愕のエルフとエドガー。まさに口をポカンと開けていた。クグモは苦笑しているようだった。
「一気にやったね……」
と、こぼしたクグモだけど、発想なかったのかな?
「さて、回収しておこうか」
僕はお構い無しに彼らの武器を全て【門】でエドガーの部屋へ送った。エルフの身体能力がどれ程のものかは分からないけれど、施錠中だからひとまずは安全だ。
エルフと言えば、彼らは弓を構えた格好をしながら、固まったままである。彼らのリーダーがどこにいるかを鑑定て見れば、先頭の女だった。
種族:エルフ
名前:フィリアエンデル・シルフェスタ・フォーレスフィート
性別:女
加護:【風の精霊王の祝福】
立場:近衛騎士長
状態:【不安】【焦り】【戸惑い】【恐怖】
名前長っ……。
近衛騎士ね……、全員って訳でもなさそうだけれど。ふむ。
「弓を向けたんだから、覚悟はできているんだろうね?」
クグモが静かな怒りを先頭の女に向けた。行動施錠をかけられているから返事はできないけれど、命の危機は感じているようだ。圧倒的な数の暴力を一瞬で覆されたんだから、仕方ないのかもしれない。【八卦神門】継承者を三人も同時に相手にしなきゃいけないんだからそりゃ、大変だろうね。まぁ、そんな事知る由もないだろうけれど。
はっきり言って、【八卦神門】継承者を複数人相手にするなんて、まず勝利不可能だと思うよ。例え魔族のアイツでもね。僕だってお断りしたい。
「クグモ、この人たち【行動施錠】中だから喋れないんだよね。先頭のこの人だけ解錠する?」
「いや、手練かもしれないからね。慎重に行こう」
さすが【首領】は違うね。
だったら【部位解錠】でいいかな?
手を近衛騎士長にかざした。
「「えっ!?」」
クグモもエドガーもびっくりしている。一部分だけを解錠するの知らなかったかな? エド爺は仕方ないとはいえ、クグモは【鍵】を使わなさすぎじゃないか?
僕がエルフの顔にだけかけた解錠を説明無しに理解してくれるのは助かると言えば助かる。リンク具合が素晴らしい。召喚獣扱いもなかなかどうして、いいもんだ。クグモは言う。
「近衛騎士長に問おう。ここはエルフの土地か?」
「……いかにも」
なんか、歯切れが悪いね。そう主張しているだけか? 少しだけ顔を顰めたのを見逃すはずもない。実際なぜ初対面で"近衛騎士長"ってバレてるのか、頭の中は大混乱中なのかもしれない。今度は僕が。
「だけど、君たちは負けた」
くっきりハッキリ事実を突きつける。
悔し涙が近衛騎士長の頬を伝った。
「敗者の君たちは捕虜になってもらおう。と言っても僕たち単独の行動だから【森の民】に迷惑をかける訳にもいかない。エドガー、君ここを登録して村に戻りなよ。村長に報告してくるんだ。ちなみに君の部屋には……わかるね?」
エドガーは先を言わない僕の意図を察して頷くだけだった。【転移】でここから消えて行く。
さて、50名のエルフの捕虜、人質基エルフ質どうしようね?




