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鍵屋無双 ~いや、すごい強いですよこのスキル~  作者: TAKUTOJ
19章 バランス崩壊はダメでしょう?
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 何が起きたのか。


 八卦神門が異常事態らしい。どこぞの声が『継承者二名を観測』なんて言ってたから、僕達二人がいること自体おかしい事を正確に捉えた様子だ。そりゃぁそうだよね。本来いるはずのない僕が、勝手にお邪魔してるわけだから。唖然とする僕ら二人と、正確には僕と目が合って、ホログラムのクグモもびっくり顔をした。


『なんでここにアレクがいるの……?』


 呆れとも驚きとも同居したクグモの声に僕は安堵した。知ってるクグモだ。


「やあ、クグモ」


 片手を上げて挨拶すると、クグモも応えてくれる。


『相変わらず、アレクは人を驚かせるのが上手いね』


 まるで生きているかのような反応に正直びっくりだよね。これって記憶を反映したホログラムのプログラムなんだよね? えらいAI搭載してる気がするんだけど……。


『さて、エドガー・フレイツァー』


 クグモはまず仕事をするらしい。エド爺との違いがはっきりするよね。できる男の感じが滲み出てるし。ギリギリでスキルをくれた爺さんのと明確な違いを目にして若干のため息がこぼれるのも仕方がないと思う。


 ウンウンと頷きながら考えを巡らせていると、クグモは既にエド少年へと【貼付(ペースト)】を授けた様だ。ダウンロードよろしくエド少年はじっとしている。


『アレク、なんでここに?』

「成り行きなんだけどね」


 苦笑して、これまでの経緯をクグモに説明した。【明門】で爺さんに会ったこと、スキルをギリギリまでくれなかったこと、10代のエド少年の所へ行って、継承を早めたらあんなボケ爺になる前に八卦神門の継承者になって、若いエドがスキルをくれるようになるんじゃないかと思ったことなどだ。


『なるほど、そんな手があるなんて考えもしなかったよ。確かに僕も苦労した覚えがある』


 ホログラムのクグモも苦笑を禁じえなかった様子だ。全くエド爺ったらみんなに迷惑かけてるんじゃないのか? 【明門】というより鬼門だよね。


「凄いな、【貼付(ペースト)】か。【切取(カット)】との相性抜群じゃないか!」


 事前に話し合っただけでは曖昧だった理解も、スキル取得による理解によって確信に変わる。エド少年は明らかに興奮気味だ。彼は話し合う僕らの方へ歩み寄る。


 まぁ、言ってしまえば【強奪】スキルの出来上がりだよね。しかも相手の【スキル】を切り取って自分に貼り付けるんだから、凶悪だ。はたしてそんな事できるのか? 能力はイメージによってどんなものにも昇華する。だけど、明確なヴィジョンが無ければ成立もしない。


【スキル】をどんなものとして捉えるかで違ってくるかもしれないよね。人を1枚のパッチワークみたいにイメージ出来れば、その人の繋ぎ合わさった一切れの【スキル】の布切れを切り取ってしまえばいい。それを自分という布切れに、継ぎ接ぎなりワッペンなり、タグなりイメージしたらどうだろう? うん、いけそう。


 裁縫男子の出来上がりだ(笑)


 でも、これ二人に説明するの難しいな。自分で考えてもらえばいいか。やり方の基本は頭に入ってくるんだし。イメージも人それぞれだしね。パッチワークが通じるとも思えないし。


「エド、【貼付(ペースト)】と【切取(カット)】で君の人生はこれからかなり優位に切り開いて行けると思う。この二つでやれる事は多い。いや、多過ぎる。敵がいるかい? そうであれば弱体化が可能だし、味方を強化する事さえ可能だ」


 クグモはエド少年をマジマジと見る。


「だけどね、強すぎる力は色々と厄介事の種にもなる。気をつける事だ。その力で、世界を救う必要は無いよ。やってもいいけどね」


 チラッと僕を見てから、クグモはエド少年に薫陶を残す。苦笑気味だけれど、その後のクグモの人生は聞いていない。どうなったのか気になるけれど、聞くのも無粋だろうね。幾分柔らかさを感じるから、最悪の事態は避けられたんだと思いたい。あと、忍者がどうなったのかも気になるところだ。


「【切取(カット)】って人体には効かないんだよな?」

「おっそろしい事だよね、そんな事出来たらさ」


 やれやれと肩を窄めて見せると、エド少年は明らかにほっとしていた。優しい人で良かったと僕も胸を撫で下ろす。


「だけどね、人の記憶とか、【スキル】だって【切取(カット)】できちゃうんだよ」

「えっ!?」


 僕はエド少年の【貼付(ペースト)】と【切取(カット)】を指定して切り取る動作をした。


『緊急事態発生、継承者のスキル剥奪の動きを計測。エドガー・フレイツァーを保護します』


【明門】のシステムアナウンスが部屋に木霊する。どうやら彼のスキルは部屋に守られた様である。なんとも不思議なことが多いね。この世界の【八卦神門】はエド少年を継承者と認め、守るように働いている様だ。以前勇者召喚の光から【鍵】が僕をスキル剥奪から守った様に。


 でも当のエド少年はびっしょりと汗をかいていた。スキル剥奪の感覚が襲ったみたいだ。何事も実践あるのみだね。


「僕はね、自分の記憶を【鍵】で【施錠(ロック)】した事があるんだよ。だから【貼付(ペースト)】と【切取(カット)】がそれをできないわけが無いって思うんだ」


「うん、奪われそうな気配は感じた」


 お互いに首肯し、そのスキルの異常性を確認する。


「どうだろう? クグモもこっちに来ない?」


 僕の提案に一瞬考えた末、クグモは笑った。


「呼んでくれるのかい? どうやって? 君は召喚された側だろう? エドは既に君を呼んだ状態だし」

「そうなんだけどね」


 やってやれなくはないと思うんだよね。試してみる価値はあると思うんだ。ミーシアが可能性を引き出す【鍵】の使い方を教えてくれたんだし、召喚獣が召喚して何がいけないのか? 誰にも分からないし、そんなルールがあることも定かではないわけだ。やってみて無理なら無理なんでしょう。それじゃ、やるしか?


『サルトビ・クグモを召喚しますか? はい/いいえ』


 脳内アナウンスに対して即座に「はい」を選択。祭壇のクグモのホログラムが静かに消え去る。魔法陣が形成され、徐々に人の輪郭がハッキリと現れ、よく知った顔が目の前に出現した。


「やあ、クグモ。さっきぶり」


 驚いた顔のサルトビ・クグモを今度はハッキリした存在として認識できた。


「いやいや、久しぶりなんだけど……」


 あ、そうか。あの世界のクグモにしてみれば僕を召喚してから随分経つのかな?


「何年ぶり?」

「5年」


 ほほう。もう5年も経過したクグモと会ってるのか……不思議だ。


「え?……エドガー・フレイツァー?」


 いかにも今気づきましたと言わんばかりのクグモは幾分取り乱している。エド少年の方も、さっきのホログラムが若干若くなって目の前にいる事に混乱状態なんだよね。


 簡単に説明すると、ここはエドガー・フレイツァーの世界で、僕がクグモを召喚したんだと言う。クグモは説明を聞いて処理するのに時間を少し要した。


「八卦神門の継承者が3人も同時に……」

「というか、エド爺若いし」


「初対面で爺言うな! お前もか!?」


 相変わらずのエド少年である。


「君がどれだけみんなに迷惑をかけているかって事だよ、エド」

「そんな無茶苦茶な!?」


 確かに将来の自分の預かり知らぬ事で文句を言われるエド少年は可哀想だね(笑)


「それで、どうして呼んだのかな」


 サルトビ・クグモはある程度落ち着いてから徐ろにこちらを向いて尋ねた。


「もちろん【貼付(ペースト)】と【切取(カット)】についての理解を深めるためだよ」

「ほほう」


 パッチワーク云々は置いておいて、できそうなことを述べていく。そしてクグモの発想についても教えて貰うつもりだ。


「そうだね……あんまり使っては無いのだけど。鎧をイメージしているんだ。例えば『当世袖』の右側にスキル【剣術】、左側に【馬術】、『兜』に【投擲(とうてき)】なんかを当てはめて、それを【切取(カット)】してしまう感じだね。【鍵】の鑑定眼で予め相手のスキルを見るだろう? そして自分か仲間に【貼付(ペースト)】するわけさ。まぁ、装備させるってイメージ」


 なるほど、視覚的にわかりやすい。相手の装備という名の【スキル】を奪って、こちらに装備させると。パッチワークなんて知らなきゃ説明不可能だからね。布のツギハギなんて言ってもキョトンだよ、トホホ。




 さぁ、クグモが来たんだから何かエド少年を大躍進させられないかな?


 とにかく【鍵】をなんとかできないか探ってみようか!



お読みいただきありがとうございました。

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