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久しぶりすぎ……
「エド爺さぁ、ここ以外にも祠あるでしょ? そこへ行こう」
「だから!! ジジイはヤメロ!! ほこらは森に9個あるって話だな!!」
この子メンタル凄い強い。ゲルトに半分あげられたらいいのに。それにしても祠が9ヵ所ねぇ。1つ多くない? ルクセン王国で言うところの王都地下にある【八卦神門】の祭壇ってところかな? 八方向にある門を線で繋ぐと八角形になるわけだけど、対面を線で繋げば丁度中心にくる場所が王都地下の忌まわしき勇者召喚のあの部屋だ。
さてさて大森林でも【八卦神門】の場所、祠になるようだけど、正八角形を形成しているのかな? 土地の高低差も考えるとどうなってるのかさっぱり分からないね。森の時点で見渡したところで木ばっかりだから、目視は不可能だ。ルクセンも、地下にあるから目視は無理だったね。うっかりさんめ。
「じゃあさ、とりあえずこの【切取】の使い方を一緒に考えようか」
「……?」
・獲物の解体
・食材の調理
・装備の裁断
・武具の切断
・データカット
最後のはほんとにヤバイ。
「データ」って何の?
考えるだけで身震いする。
何が恐ろしいかって、イメージでそれが実現できてしまうところだ。もちろん検証は必要でしょうよ。できると思ってできなかったら、超恥ずかしいし。でも、できてしまった時にどうするかが大事だ。大惨事を引き起こして責任取れないのが一番ダメなパターンだよね。
【森の民】の集落の部屋へ戻り、エドと【切取】について話し合う。やっぱり同じスキルを持っている人がいるっていいものだなぁ。唯一無二のスキルのはずなのにこうして世界を別にした同スキル継承者と交流できるなんて。秘密を共有できる存在の有り難い事と言ったらないね。
カンテラを消し、暗くなった部屋を眼の解錠によって【暗視】出来るようにする。寝静まったエド少年を起こさないよう注意して外に出た。村はとても静かだ。
【止門】はいったいどこにあるんだろう。そもそも【八卦神門】は時代を経ても同じ型を保っているのか? 建物が移動するとは思えないけれど、ルクセン王国とこの大森林の違いが酷すぎる。共通点が見いだせない。中の造りだけは変わらないけれど。ヒントもないならルクセンでの【八卦神門】を参考にするしか無いのか……。村長に祠について尋ねてみようか。
それにしても森だねぇ。圧倒的に森。開けた場所もほとんど見当たらないし。
ちょっと村の外へ行ってみよう。エド少年の離れから北へ向けて進むと、村と森の境界線あたりで違和感を感じる。なんだろう?
外は真っ暗だ。ちょうど木で作られた柵から上へ向けて不可視の壁のような圧がかかっている気がする。バリア?
スキル【範囲結界】
へぇ。【魔法使い】系がいるのか……。結界の外をを見て【転移】を発動させる。まぁあっさり出たよね。暗視で真っ暗な中クリアな視界を確保しつつ、長い長い森を歩く。召喚獣特典で疲れないのがとてもいい。
さてさて、【八卦神門】の位置関係を思い出しつつ、登録している【転移】位置を探りながら、進むべき道を考える。
当たって砕けろを地で行くのはどうかと思うけれど、森がこうも森すぎて、行くしかないよね。視界が悪い分、足で稼ぐのだ。村を背にスタスタと歩を進めること、体感3時間。もう夜中と言うか朝に近い。新聞配達の人達が出勤し始めてもいい頃合いじゃないかな。なんて昔の生活を思い出しつつ、歩く歩く。
こうも静まり返った森を進むのに気味が悪いのは悪いのだけれども、【暗視】による視界は世界最強のハンディライトのようなはっきりくっきりの状態だから。ほんっと【アサシン】ってズルいよ。
『八卦神門【止門】を観測』
脳内アナウンスが【止門】を捉えたらしい。どこだよ。森すぎてわからん。踏みつける小枝がパキッてする度に、虫や小動物、鳥が散って行くのを耳にしながら足は止めることはない。
祠が目の前にあるのに、木々のせいで、それと認識するのはかなり難しい。天然のカムフラージュが実にいい仕事をしている。これ【鍵】が無いと探せないんじゃないか……? 僕はエドガー・フレイツァーを不憫に思った。
70で手にできるとは言え、その年齢であと6つの門を探すのか……。【鍵】なしで、この探索を? 詰んでないか……。
目の前の【止門】を睨みながら、この場所を登録した僕は、エドの眠る部屋へと転移する。
直後、立っていた場所に数本の矢が刺さった事を僕は全く気がついていなかった。
一一一一一一一一一一
朝だ。
エド少年の頬をつねってみる。
起きない。
エド少年の頬をつねり引っ張ってみる。
起きない。
エド少年の頬をつねりねじってみる。
起きない。が、少しだけ身動ぎした。お? いけるか?
エド少年の頬をつねりねじり引っ張ってみた。
「いだだだだぁぁぁああっ!?」
「おはよう」
渾身の笑顔で挨拶したけれど、少年は涙目で睨みつけてくる。
「じゃ、【止門】に行こうか」
「他に言うことあるだろぉがぁぁ!?」
おそらくヒリヒリしているであろう頬を、彼は手の平で覆いながら叫んだ。他に言うこと……『カルシウム足りてる?』、なんか違うよね?
【止門】へ転移を発動し、目の前に祠を観測した。
「矢?」
足元に踏みつけた物を見て2人で首を傾げる? まずいかな……?
「エド、入るよ」
若干の焦りはあるものの、僕たちは【止門】への進入を果たす。ほっと息を吐いたあとは、お馴染みの作業だ。エド少年が【八卦神門】のレプリカに触れて起動した。
いつか見た40越えたようなサルトビ・クグモがホログラムとして現れる。
『我は八卦神門二代目継承者サルトビ・クグモという。【止門】へよく参られた……』
ホログラムが不安定なのか、ザザっと消えたり残像を映したり忙しい。ついに祠内からブザーが鳴り響いた。
ビビーーーーーーーービビーーーーーーーー
『緊急事態発生、緊急事態発生。継承者二名を観測。ホログラムのメモリーを更新、システムアップデートを開始します』
「え……なにコレ……」
ホログラムが完全に消え、待つことしばし。
20代のサルトビ・クグモが再び祭壇の上に顕現した。
お読みいただきありがとうございました。




