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短いです。
これはまた趣味悪いねぇ……。
ギランテッサ城塞地下、牢獄が左右にズラっと続いているんだよ。これ、元王族の避難ルートなんだよね? スペースなかったのかな……。それとも避難する事を想定してなかったのか。例えばだけど、ギランテッサの元王族がこの通路を使って逃げようとした時に、囚われている人達に暴言吐かれながら走ってる姿はなかなか自業自得でシュールな気もする。
死臭がすると言うのかな……表現しずらい嫌な臭いがだんだん強くなって来た。
「う……」
誰が発したのか分からないくらい、いや誰が言わなかったのか分からないくらいに、皆が固唾を呑んで閉口したみたい。最初に見た牢獄の奥には、鎖で繋がれた腐った死体が座った状態で壁にもたれかかっていた。ほぼ全員がロを押さえたのが分かる。
「ひでぇ……」
魔物掃討戦で放置されたのかもしれない。罪人とはいえ、あまりにも酷い。彼らは投獄されたまま、上に引き上げられる事もなく、モンスターの進行を恐れながら見ていたのかな……。魔物たちが檻のすぐ向こうにいて、さぞ恐怖したことだろう。その後も閉ざされたまま放っておかれたのだとしたら、目も当てられない。
【状態施錠】範囲仲間全員を指定。
病原菌からくるかもしれない死への病から皆を守る。
しばらくおぞましい通路を歩くと、扉へ到達した。造りが似ているとはいえ、各城塞の地下の有り様は同じではない。範囲の施錠対象を探ると、幸いなことに扉の先には何も感知することはなかった。頷くとヨンザがすばやく扉を開ける。
牢番の詰所のような部屋があり、輪っかに束ねられた鍵が戸の横の壁にかかったままなのが見えた。
「主、この先に魔物の気配が……」
クバイトさんが【漆黒】を代表して僕に報告をしてくれる。もちろん僕も感じていたことだけど、形式美も大事だしね。この部屋の戸を開けたら、魔物がわんさかいる様だ。だけど進まないわけにはいかない。
【八卦神門】の扉があるハズだからね。そしてついでに【王の腕輪】の金庫の状態も見ておこうかな。魔族アングルメールがいた時点で手遅れな気がするけれど。地下がこの有り様だから、ギランテッサ公爵領の先行きは暗いものだと想像に難しくないよ……。特に依頼を受けたわけじゃないから金庫をどうこうするわけでは無いけれど、ジョージには報告しておかないとね。後日【転移】して呪いを解いても良いから。
さてさて、どうしよ。
赤髪に目をやって丸投げかな。彼は苦笑をしながらも首を上下にして、指示を出し始める。凄い頼りになるねぇ。【軍師】が板についてきた感じだろうか。今度羽根の軍配とか、団扇的なものでもプレゼントしようね。
似合わないか(笑)
「アレクは奴らヘ拘束を。【漆黒】と【虹色】は確認後、中央突破。君たちは遅れず付いて来ること」
それぞれに支持を出しながら我らが軍師ゲルトレイルは後ろを振り返った。僕の傘下へ入った【怠惰の蛇】と【獅子の咆哮】から来た4人を見る。彼らもこのミッションでだいぶ打ち解けて来たね、動きに無駄がなくなって来たように思う。元々がよりすぐりの人達だから心配してなかったけど、順応性高いのはいい事だよね。
いちにのさん、で戸を開けた瞬間に、一気に行動施錠。他種多様なモンスターの雑多な群れを止める。【漆黒】を先頭に僕らは真っすぐに走った。行き止まりにあると思い込んでいた八卦神門の扉はこのモンスターハウスとも言うべき部屋の隅に淡く光りを発っしながらその存在を僕に示している様だった。
登録完。
中央突破が成功したものの、目的地がココとはね。先に【王の腕輪】から確認すべきか悩ましい。とりあえず全員が戸を抜けたのを目視してからゲルトレイルを仰ぎ見た。
「困ったことに、この部屋にあったよ。僕の探しもの」
「そうなのか?」
小さく頷いておく。ふむ、と言いながら考え始めた赤髪の横でリリアリ一リが提案を挟んだ。
「あのさ、アレク。【漆黒】の皆にこの部屋をまかせて、わたしたちで【王の腕輪】の状態確認に行かない?」
モンスターハウスとは言え、負ける要素のない戦闘であることと、呪い系は妖精、精霊の本分であることとを上げながら彼女は言う。
「妥当だな、良いと思う」
すぐに思案顔をやめたゲルトレイルが魔女の意見に乗っかった。
「地下には本当に誰もいないのかな」
サリアラーラの呟きが妙に大きな声の様に感じるほど、辺りは静かだ。ギランテッサの人間がいないのなら、事は簡単に済む。どうかいませんように。
【漆黒】とそれ以外に分かれた僕たちは、収められているかもしれない宝物庫を目指すことになった。後で聞いた話だと、モンスターハウスはあっという間にお掃除されたとか。どんだけだよ。
「誰だ!!」
しばらく地下を無遠慮に歩いていたからか油断していたからかはさておき、人はいた。ギランテッサ兵だ。なんだ、いるのか。地下のモンスターに恐れをなして完全に閉鎖したのかと思っていたのに。でもまぁ、宝物庫もあるわけだから、全てを閉じるにはあまり良い策ではないとは思うけれど。
「通りすがりの者です。お気になさらず」
「そうか……って、ちょっと待てぇ!!」
やっぱりやり過ごすのは無理か。う~ん、どうしようねぇ。
「僕たちは冒険者です。とあるお方の依頼で地下の様子を探っておりました。ところで、僕からも質問が」
兵士の鼻先に剣を向ける。
「どうして魔族がこちらに?」
そうなんだよ。
種族:【魔族】
名前:ガ一グナバル
スキル:【豪腕】
ジョブ:【武闘家】
彼はこちらの質問に答えることなく、バックステップを繰り出してから距離を取った。ファイティングポーズからは想像もできなかったのだけど、なんと仲間を呼んだらしい。信じられない事に、床からゾンビのようにわらわらとはい上がって来る魔族達を僕らは唖然と眺めた。
アレの出番じゃない?
「サリア、スクロールを」
言った途端に悪い顔をする【虹色の翅】はずいぶんと毒されていると思うね。この僕にね。サリアラーラの魔力消費に施錠し、とことんリザードマンを出させよう。
強行突破といきましょうか!!
うわあぁぁぁ、なんと言うか、同士討ち感がはんぱねえですよ。【魔族】VS【リザードマン】の構図がエグい。
なんかごめん。
せっかく貰った(違)スクロールを有効活用しただけなんだよね。いそいそと㒒たちは彼らの横を通り抜けて、宝物庫の前に来る事ができた。あっさりと。
やはり。
金庫は呪いがかけられていた。【毒】、【遅行】というものだ。なかなかに酷いね。毒にかかっているのに、いつかかったか分からない様にかな? 様々な罠を仕掛ける【魔族】アングルメールは人類の天敵じゃないだろうか。いや、敵なんだけれども。何故こんな罠を仕掛けてまわるのか分からない。【魔王】と組みする感じでもなければ、配下っぽくもないし。
「どうする?」
赤髪の問いかけに僕は首を横に振った。依頼されているわけでもない領地の宝物庫に入っている時点で手遅れは十分理解しているけれども、何の思い入れもない責任もない荷を負うつもりはないんだ。引き返す選択に嫌悪感も罪悪感も湧かない。
こうして僕たちはギランテッサ城塞地下の制圧に成功した。この事実を知る者はこの領地に一人もいない。
お読みいただきありがとうございました。




