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鍵屋無双 ~いや、すごい強いですよこのスキル~  作者: TAKUTOJ
閑章 その頃の勇者たち
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2 唐沢 幸太郎(からさわ こうたろう)

閑章2話目

「ようこそ『勇者様方』」


 という声にハッとする。今まで歪んでいた視界が急に晴れたそこは、なんとなく湿気の多いところだなと唐沢幸太郎は咄嗟にそう思っていた。


 目の前の絶世の美女とも言うべき、お人形のような人から発せられた声に我に返る。こっちを見て勇者ってなんだ? 彼の頭は疑問符でいっぱいだった。そもそもここどこだよ、というところから説明してほしいと彼は思う。


 周りを見渡せば自分の側に背の高い男の子と、自分と視線がさほど変わらない女の子がいた。どちらも容姿端麗である。しかし彼自身は劣等感を抱くことはない。


 なぜなら、彼自身が過ごしてきた世界では、唐沢幸太郎そのものが『イケメン』と持て囃されてきたからだ。自分に自身があるなしとは関係なく、周りがそう騒いでいたのだから、彼自信が自分のことを『イケメン』なのだろうという認識を持つのは仕方のないことだろう。それを表に出すか出さないかで真のイケメン力が試されるのかもしれない。実にどうでもいい。


 両隣にいる二人の顔を見ると、やはり自分と同じ様に困惑顔だ。事態に付いていくことが出来ていない。当たり前だろう。自分だって始めたばかりのレストランの皿洗いのバイトへ向かう途中に、突然ここへ飛ばされたのだから。


 家は母子家庭で、妹と弟がいる。高校に入ってから申請を出し、バイトの許可を得て始めた仕事で、ようやく家庭の助けになれると思っていた矢先のトラブル。彼の思考は今『早くバイトに行かないと』という焦りで埋め尽くされていた。


 家計の足しに、妹や弟のために、毎日頑張る母のために、唐沢幸太郎は自分の自由を大いに削った生活を決意している。彼らの顔を思い出してはニヤけが止まらなくなるが、喜ばせてあげたいというのが彼の本来の願い。


 現実感のない今の状況をどう理解したらよいのか。


「皆様はこの【召喚陣】によって選ばれた【勇者】様です。お迎えに上がれたこと幸いでした。私はここルクセン王国第一王女レイミル・リング・ルクセンと申します。お見知りおきを」


 幸太郎の目の前の少女は王女と名乗った。見慣れない豪奢な衣服に身を包み、見たこともない淡い水色の髪。まさに夢見ているような感覚だった。


 訝しんで少女を凝視した。


 すると、彼には不思議な情報が目の前に現れる。



 レイミル・リング・ルクセン(17)

 ルクセン王国第一王女

 スキル:【掌握・上】

 ジョブ:【召喚士】



 スキル【鑑定】が働いた結果だ。


 恐る恐る状況を確認していくと、様々なことに驚かされる。


 まず、目の前にいる女騎士達。全員が何かしらの戦闘スキルと戦闘的なジョブが表示されたから。


 そして、横にいる二人のスキルやジョブの多さ。明らかな違いに、選ばれたと言われた事が嘘ではないのだと思わされることになった。


 そして自分。


 唐沢幸太郎(15)

 スキル【剣術・上】【槍術・極】【身体強化】【魔道・下】【鑑定・上】

 ジョブ【勇者】【剣士】【槍師】【魔法使い】

 特異属性:炎属性

 称号:勇者


 横の二人とほぼ代わり映えのない能力だったが、【極】という部分だけ得意なものなのかなと推測できた。


 とあるアニメで短槍使いの用心棒に憧れたのが始まりだったが、唐沢幸太郎は棒術や薙刀に興味を抱いて、映画の足軽兵のエキストラに応募して参加したりしていた。自分が槍を好きであることがスキルに反映されていることに思わずニヤけてしまう。


 バイトへ行きたいのに、ワクワクしている自分もいる。少々複雑ではあったけれど、彼はとりあえず王女の話すことに耳を傾けることにした。


 状況がいまいち飲み込めないものの、彼らは武器庫に連れて行かれ、コレと思うものを手にするように促される。好きなものを持っていけというのだ。


 ルクセン王国の武器庫には様々な防具が並べられていた。数多の武器、盾、少しの騎士鎧、ブーツは魔道具の系統で各属性が付与された高級品が並ぶ。


 この王国の地下に走る元王族専用通路から魔物達が向かっているという説明を受けた。これから、これらの防具を身に着けて戦いに行けという。


 なぜ僕たちが? という疑問も大いに過っていたが、なぜかすんなり受け入れている自分がいる。思考とは裏腹に勝手に動いている身体に戸惑った。


 選ばれたという意味では紅一点の女の子を見た。


 スキル【剣術・上】【拳術・極】【身体強化】【魔道・下】【鑑定・上】

 ジョブ【勇者】【剣士】【武闘家】【魔法使い】

 特異属性:水属性

 称号:勇者


 あ、素手の時にも恐ろしいタイプだな、とそんなことを思う幸太郎。女の子には逆らわないでおこうと決意をこっそり抱いた。




 そして自分の意識とは別のところで、装備をしっかりと着こなして地下へと向かう自分たちを、どこか客観視させられているような感覚に襲われながら見ていた。

もう一つ続きます。

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