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「え……シュナイデリン様がご病気!?」


 なんで!?


 どういうこと!?


 は!? いかん、取り乱した。貴族って衝撃的なニュースでも初見でさえ狼狽えないのなんでだろうね? 鍛錬次第? 生まれてからの教育の賜物か? どっちもか……。


 シェイナとイケメンの姿がないと思ったら、臥せっているみたいだ。


 フラクシス領に入り、城塞に着いたのはいい。だけどほぼ連行されるかのようにフラクシス城塞の謁見の間に通されたから、何事かと訝しんでいたんだよね。


 マサテュール公爵が早馬で飛ばした金庫の解錠の情報が届くやいなや、すぐに要請の返事が来たから、嫌な予感はしていたんだ。


「そうなんだよ、ヴァレント……いや、マグニアス君」


 目の前にはフラクシス公爵とお付の人たち。彼は僕が名誉伯爵になっていることに驚いてはいたけれど、ちゃんと応対してくれていた。言い直すのも無理はないよね。ただし、貴族同士で名前を間違えるのは本当はタブーだ。ダメじゃん。


「いったいなぜ……」


 なんとなく予想はしている。だけど当たってほしくはない。


「察しているかもしれないが、金庫のせいだ」


 やっぱり。


 シェイナが確認に行ったんだろうって。


「大丈夫なんでしょうか?」


 恐る恐るそう問いかければ、公爵は苦い顔をした。


 え?


 やばいの?


 跡取り息子と大事な娘が同時に病気で倒れている。そして事態は緊急を要していた。金庫どころでは無いのじゃない?


「専属医が付いている……予断は許さないが」


 とても苦しそうだ。でも公爵として自領の宝を放うって置くことも出来ないからその内に大きな葛藤を抱いているのだろう。とても残念なことに、立ち入ることが出来ない部類の話だ。今は我慢か……。そんな余裕はないのだけれど、僕にも。なんとかしたい。


 どうすればいい?


 転移で飛ぶか?


 いや、今はそんなことできない。くそ……貴族めんどくさい。ちゃっちゃと行って施錠でも解錠でも施すことができればいいのに。


「申し訳ありませんが、金庫の確認が済みましたら、シュナイデリン様の様子を見させてください」

「何を言って……」


 案内されている部屋の金庫に向かって僕は勢いよく歩き出す。連れて来ている【虹色の翅】と護衛として【漆黒】のうちの3人、クワト、ヒカリ、ブライトも慌てて僕の後に続いた。公爵の返事も聞かずに失礼だとは思ったけれど、こうしちゃいられない。


 金庫は案の定、魔族アングルメールの呪いが掛けられていた。でも【拡散】は一回きりの効果だったみたいで、部屋に充満していることがなかったのが救いか。でも、確認に行った人たちはきっと……。


「ごめん、サリア、リリア。後のフォローお願いね」


 金庫の呪いを解錠してすぐさま僕はシェイナの元へ飛んだ。




 -----




「シェイナ!!」


 苦しそうに咳き込んでいるシェイナの様子がすぐに目に入った。当然転移で飛んだからだ。だけど部屋付きの侍女やたぶん専属医がびっくりして臨戦態勢に入ったのがわかる。


「邪魔するな!!」


 行動施錠(ロック)


 全員に施錠と言う名の拘束をして場を支配する。


 掛けられた呪いは遅効性の毒だけれど、全身に回れば命に関わる。


解錠(アンロック)!!」


 周りに何かをしたことだけでもわかるようにスキルを口にしておいた。


 傍から見たら完全に悪役な気がする……。突然現れて全員を止めて、寝ている人に追い打ちを掛けている構図だ。


 我ながら酷いな。


 シェイナの毒が完全に無くなるのを確認して安堵。


「アレク……あなた、どうしてここに?」


 さっきまで咳き込んでいたのが嘘になるくらい呼吸が整ったシェイナの声は相変わらず甘ったるかった。くすぐったい。


「具合悪いって聞いたから、突然ごめんね。もう大丈夫でしょ?」

「……ええ。そうみたい」


 自分の様子を少し振り返って考えてみたのか、彼女は完治している自分に気づいた様子だ。さっきまでの息苦しさがないだけでだいぶ違うと思うけれど。


「邪魔したね、もう行くよ」


 唖然としている部屋の者たちを解錠して自由にする直前に部屋を出て、転移で元の金庫前へ戻る。「あっ、待っ」というセリフを最後まで聞けずに飛んだ。


 これで僕の憂いはなくなったね。


 名誉貴族バンザイ。


 多少のリスクはあるけれど、この立場が守ってくれる。


 過信は禁物であることは重々承知の上だけれど、あのまま放っておくことなんて出来ないからね。平民だったら絶対にできない行為かも。それでも僕はやってしまうかもしれないけれども。


 正直、シェイナに会えて嬉しいし、もっと話していたかった。


 でもあれで限界だっただろうね。


 あと、イケメンも気になるところだけれど、彼のところへは転移で飛べないから。


 なんか、ごめん。


「ただいま」


 突然の帰還に【虹色】と【漆黒】が驚いたものの、今は精霊と妖精が何かと場を繋いでくれているところだった。威厳を込めた話し方を今回もノリノリでしているしゃぼんに苦笑いが出る。だけどフラクシス公爵一行は深妙に彼女の言を拝聴していた。


 無理があるとは思ったけれど、【虹色】や【漆黒】の影で転移して、そっと帰ってきてみれば、彼女たちが注意を引いてくれているおかげで、違和感なく帰ってこれたんじゃないかな?


 いや、なんとなくバレている気もするけれど。どうにでもなぁれだ。シェイナが無事ならもうそれでいい。後は名誉貴族の権限という権限を使って逃げる道を切り開く。


 ジョージの先見の明、恐るべし。ありがとう!




 -----




「名誉伯爵、そなたはどう考える? 此度の金庫の件だが……」


 徐に切り出したフラクシス公爵の言葉を反芻する。はっきり言って意味はわからないんだけれども。どう答えたらいいものやら。


「全領地への、あるいはルクセンへの宣戦布告か、または魔族と与する領地があるのか」


 僕の予想の呟きに公爵以外の皆が息を呑んだのがわかった。


 ピリリと場が凍る。


「ふむ」


 悪くはない答えだったのか、公爵は満足そうに頷いている。貴族との会話は疲れるから、そろそろ御暇したいのだけれど、ダメですか?


 会話を邪魔しないように静かに入ってきた執事が公爵に何やら耳打ちをした。眉毛を大きく上げた公爵にもたらされた情報とは……。


「いえ、それが……」


 チラチラ僕に目を向けてくる執事に合点がいった。なるほど。シェイナの快気の様子に怪しい侵入者とその風貌の情報で、僕を見ていると。


 どこ吹く風で目を逸らしておこう。






 厳しい目をしたフラクシス公爵は僕にこう言った。


「息子も頼む」


 やっぱりバレちゃったか。様子見させてって言ったし、消えたし。


「ご案内を」



久しぶりのシェイナさんでした。


お読みいただきありがとうございました。

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