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No.7

「どうなってる……?」


 才賢の魔道士ライバーは独り言ちた。事態についていけないのだろう。今まで遭ってきた困難や厄災が嘘のようにピタリと止んだから。そりゃそうか。酷かったもんねぇ。ダンジョンの呪い。


 彼らは不思議なものを見るように僕に視線を落としたが、僕は肩を窄めるジェスチャーでやり過ごす。言うつもりは無い。信じて貰えるかどうかが問題ではない。


 ダンジョンの呪いに鍵を掛けたんだ。


 面白いように静かになったダンジョンを、入口まで何の問題も無く抜けてきた。


 思えば悲惨な初仕事だ。荷物を運ぶだけの簡単なお仕事のハズだったのに……。自分の秘密の1部を晒すことになるわ、ミノタウロスに襲われるわ。寿命縮んだから!!


 帰りは短い距離だが、ギルドの手配した馬車で眠りにつくことができた。ギルドに着いても目を覚まさない僕をリーダーが運んでくれたようだ。


 ギルドの仮眠室から起き上がった僕は、眠気眼のまま受付に併設された酒場へ向かう。そこにはリーダー以外の【鷹の爪】が揃っていた。


「皆さんお揃いで」と声を掛ければ。


「リーダーいないだろうが」とツッコミが返ってくる。心地よいテンポだ。ギルドで報酬を貰った僕は、個人的に彼らから呼ばれていたんだ。酒場で話そうって。


 彼らは僕に成功報酬を上乗せした。聖女の命とギルド監視員の命を救ったことになるから。そして迷惑料。こんな子供に負わせるものでもないでしょうに。


 だけど、彼らの感謝と謝罪は本物だった。若く、勢いのあるパーティーなのに傲ったところが無かった。全くなかった訳では無いけれど、事後処理の仕方は大人顔負けだ。彼らから学べるだけ学んでおこう。


「アレク君、助けてくれてありがとう」


 祈る時のようにしっかり両手を組み合わせて、リナフレアは僕にお礼を言ってきた。目を逸らす。いかん、このシチュエーション苦手のヤツですで!? しどろもどろに返事をする僕をみんなが笑う。


 一頻り笑われたあとドレクスラーが2階にある会議室から降りてきた。


「盛り上ってるなぁ! そうだ、アレクセイ。ギルド長が呼んでるぜ。今すぐだ。アーノルドの件だってよ。報酬上乗せされるだろうよ。やったな!」


 全部説明してくれたよこの人。ダンジョンの件をドレクスラーがある程度説明してくれたらしい。ギルド長とか面倒臭いなぁ。報酬要らんから回避したい。そういうとみんなは苦笑しながらやんわりその案を却下した。やめておけと。はいはい、わかりましたよ行きますよ。とぼとぼと2階へ上がった。


「アレクセイさん。いらっしゃい。こっちですよ」


 いつかの女神が手招きして呼んでくれる。この人は届かない依頼書をさりげなく取ってくれた偉大な職員だ。名前をシェイナと言うらしい。偽名だけど。


「ありがとうございます。ギルド長ですか、緊張しますね」


 クスクスと笑ってから受付嬢は励ましてくれた。


「大丈夫ですよ、気さくな方だから。どうぞ頑張って!」


 気持ちがほわっとする。惚れてまうやろー! いかんいかん。気をしっかり保たないと。優しいお姉さんは好きですか。


 ノックしてから返事を待つ。入室の許可が下りて部屋に入れば、監視員アーノルドとゆったりしたソファーに身を委ねる茶髪のご令嬢がいた。


「驚いたかしら? ギルド長若っ!? って思ったかしら? いいのよいいの、私を見ればみんなそんな反応なんだから。いいわ、教えてあげる。私は貴族でね、公爵家の人間よ。権力でこの地位にいるのよ。そう権力でね。なぜギルド長か気になる? ええ、教えてあげる。言わばアレよ。経験を積ませるってやつ。それと実績。まぁ、こっちの方が本命ではあるのよ。ちゃんとキャリアを積んでおかないと権謀術数渦巻く貴族社会で生き抜くことは難しいわ。あなたにわかるかしら? まあいいわ。それで実績のためのギルド長ってわけ。それで、今回あなたに報酬上乗せの話が来た訳だけど、アレよね、アーノルドを助けてくれたって聞いているわ。ギルドの失態が私の貴族としての傷になる所だった。本当にありがとう。アーノルドの事もね。心配ないと思ってたんだけど、びっくりしたわよ。はい、これ報酬。命に替えるには安すぎるけど、許してちょうだい。深くは聞かないわ。あなたにも詮索されたくない事情もあるでしょう? それより聞いてくれるかしら、こないだのパーティーでね……」


 怒涛のおしゃべりさんだった。そしてサラッと貨幣の詰まった袋を僕の目の前にドンと置いた。皮袋が分厚くてあまりガチャガチャ鳴らなかったけれども、重さは十分に伝わった。恭しく受けとったが、そんな所作は全くもって意味をなさない。


 貴族の在り方や処世術、マナーなどの大事な話の核心には触れない思いの丈をありったけ聞かされる。随分無駄な時間を過ごしたが、詮索されない感じがとても好印象だ。


 唖然としている僕にもお構い無しのおしゃべりにアーノルドも苦笑を禁じ得ないでいる。止められないんだろうなぁ。ある意味ギルドの闇を垣間見たな。職員がしっかりしているパターンなのだろうか。結論を下すにはまだ情報が足りない。集める気もないけど。


 こうして僕は初仕事では有り得ない程の報酬を受けとったのだった。





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