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 案内された地下の宝物庫はカビや苔が生えたジメジメした場所だった。換気が出来ない状態だから仕方がないのかもしれないけれど、これは酷いね。均等に配置された魔道具の光も、古いトンネルの切れかかった電気のような点滅具合だ。魔力のこもった魔石を変えると光は設置した時と同じ様な状態には戻るらしい。その状態がどんな明るさかは知らないのだけれども。


 さてさて、荒れたマサテュール領の宝物庫とやらはどんな具合なんだろう?


 宝物庫の鍵を開けてくれたのは、掃討戦で伯爵軍総指揮を執っていたマシュラーン子爵だった。名誉貴族とは言え、僕は伯爵で彼は子爵だ。立場がひっくり返ってしまったから僕の方が気を使う。でも、マシュラーン子爵はそんな事おくびにも出さない。貴族って凄いねぇ。


「では、マグニアス名誉伯爵。こちらへ」


 他領の、ドヌマン公爵の宝物庫では最初2人しか入れなかったけれど、ここは自領だから、連れてきた全員で入ることが出来た。ジョージは横で『なんなら気に入ったものがあったら持って行くといい』なんて太っ腹なことを言っている。


 流石に古の盟約で保管されている『キングブレスレット』の様子は見ておくべきと言うことで、子爵と公爵が護衛を連れて同行した。いや、正確には僕たちが同行しているんだけれどね。


 ちなみに今回の掃討戦でマシュラーン子爵は伯爵に間もなく叙勲されるらしいから、立場的には同格になるみたいだ。実にどうでもいい。まぁ、でもおめでとう。


 以外にも宝物はしっかり管理されていた。善政の伯爵が宝物庫の管理者だったようで、前公爵の散財癖から守り抜くことに成功していたらしい。出納記録みたいなものでガチガチにホールドされていた。良かったね、ジョージ。


 やはりと言うべきか、一番奥にある宝物庫の中のさらなる部屋の前にまで辿り着いた。


 営業チャンスではあるのだけれど、ここは寄付しておこうか……。


「サビサビですねぇ。リック、南京錠のスペア持ってきてる?」


 後ろから付いてきている少年に声を掛ければ、彼はカバンからプラチナ製の南京錠を僕の目の前に持ってきてくれた。貴族仕様とは言え、プラチナ製ってのがね……。魔力登録はしない。


「新しいのに取り替えておきます」

「すまないな」


 ジョージは苦笑気味だったけれど、多分何も言わなくてもこちらの意図は伝わっているのだと思う。察しが良いからね、貴族って。鍵はマシュラーン子爵に渡しておいた。


 全員でキングブレスレットが収められているであろう台座に近づいた。1メートル四方の正方形の台座に鎮座する金庫がドンとこちらを向いている。



 金庫

 状態:呪い

 呪い:【麻痺】【拡散】

 拡散:込められた呪いを部屋中に充満させる。

 術者:アングルメール(魔族)



 またお前か。


 アングルメール。


 会ったことはないけれど、この術者はドヌマンの呪いと同じ者だ。さてさて、どうなるんだろう。


「呪われてますね……」

「なんと!?」

「やはりか……」


 子爵は驚き、公爵は予想済みと……。僕はサリアラーラとリリアリーリに目を向けて合図を送る。二人は頷いて前に出てくれた。


「確認してもらいますね……リン、いける?」

「いいよーまかせてー!」


 最初に飛び出てきたのはリリアリーリの相棒、妖精リンカーラ。彼女は元気よく魔女のポケットから出てきて、子爵や公爵がその目で視認できるように姿を現した。普段は仲間以外には見えないらしい。謎仕様だね。子供にしか見えないっていうような、何かしらの条件でもあるんだろうか?


 実際にジョージと子爵は目を見開いて絶句していた。所見ではもの凄くきらびやかな光のキラキラを撒き散らしているようなエフェクトみたいなのがかかるらしいから、びっくりするのも仕方がない。


 リンカーラは金庫を凝視して、その状態を確認している。


「およそ1ヶ月前にー、仕掛けられてるねー! 前のと同じ魔力を感じるよー」


 うん、流石。


 1ヶ月前か。ドヌマン公爵領より前か?


「ん? 呪いがかね?」

「そうだよー! 開けたら最後ー!」


 間延びした雰囲気とは裏腹に、全員にショックを与えるのに十分な情報だ。小さな翅人からもたらされた事実に、僕の発言の裏付けが取れる。まぁ、なんでお前がわかるんだよ? っていう痛い視線はなかったわけだけれど。


 そんなちょっぴり自虐的なことを考えていると、サリアラーラが一応詠唱を開始した。一応と言うのは、周りを納得させるためのデモンストレーションの一環だ。僕がよくやる「鍵の眷属よ」みたいなやつ。一緒にしちゃダメだけどね、本物だから。


 しゃぼんは登場するのにノリノリだった。彼女もアレを患っているのかもしれない。


「無を司る精霊よ。我に叡智を賜らん」

「契約者たるサリアラーラ・コネットの請願により応える。サリアよ、汝の願いは何か」


【虹色】と【漆黒】しかシャボン玉は見えなかったわけだけれど、突然現れたように見える公爵達にしたら驚きを隠せずにいた。一般人の僕らのようなオーバーリアクションなんてしないんだけれどね。


 うわぁ、黙らせたい。『願いは何か』だって、叶えてくれるのか?


 やっちゃっていい? うん、ダメなの知ってるけど。


 なんだよ、残念精霊。かっこよく出てきたし(笑)


「うふふ。あのね、この金庫に掛けられている呪いがどんなものか教えてくれる?」


 サリアラーラはしゃぼんに優しく話しかける。しゃぼんも少し威厳を感じるね。訛りやめてるからかな? もの凄い嬉しそうだけど。


 サリアはピンポンの時も今も、精霊の真名を口にすることはない。そうしたところで発音されないらしいからだ。そして知られてはいけないものでもあるらしい。知ったところで発音出来ないんだからあんまり意味もないんだけれどね。


 僕は一瞬とは言え、彼女と契約したから真名を知っていたはずなんだ。契約が切れたからかどうかは確認しようがないのだけれど、思い出せない。鮮明に契約したこととか契約時の情景は思い出せるのに、名前はさっぱりだ。


 まあだからしゃぼんでいい。彼女は言った。


「【麻痺毒】に【拡散】。2つが掛けられている。精霊殿が言ったとおり、開けたら最後だな」


 うわぁ、黙らせたいパート2。


 西日本の政令指定都市に住む、お笑い大好きな国民は、自国の訛りを誇りに思っているから、他都市へ行っても訛りを崩さないという。だけど、その語彙の豊富さは首都の3倍はあるという。ホントかどうかは知らないのだけれど。


 それに当てはめられるとすれば、しゃぼんもまた語彙が豊富なのかもしれない。訛りを一切出さずにいけしゃあしゃあと話している辺り、近からず遠からずだと思う。


 もたらされた情報に一同が恐怖した。


 そりゃそうだよね。


 妖精に精霊、会うことすら奇跡の存在に、衝撃的なニュースである。その真実性が確固たるものになっていく感覚に皆が意識を持っていかれている。







 不安に支配されているこの場を崩すのはやっぱり僕だよね?


「じゃ、開けますか!」


「「「ちょっと待て!?」」」


 うん、わかってた。


 説明なさすぎたからね。





お読みいただきありがとうございました。

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