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 蔦が酷いことになっているなぁ。扉が開けにくいよ、ほんと。力いっぱいゆっくり開けてみても、ブチブチと蔦が切れていくだけで、なかなか人が入れるまで開けられない。


 引き払ってからそんなに経っていないのに、魔女の家は草木で覆われていた。元々蔓のツタッた家だったけれど、ここまでとはね……。


 解錠。


 最初から使えばよかったよ。あっさり開いたから。


 僕は、行きたがっていたリリアリーリを抑えて、お供としてここにヨンザとジョアンサを連れてきている。リリアリーリとリンカーラ(妖精)を連れてきたら、精霊探しが出来ないと思ったから。仲悪いからね、精霊と妖精。邪魔にしかならんって思ったんだよ。


 3日経っても目を覚まさないサリアラーラの原因を探るため、僕はここに来ている。もしかしたら精霊ピンポンがいるかも知れないなんて思ったからだ。


 いないけどね。


 リリアリーリに姉のことを尋ねてみると、この家に住んでいる時、ピンポンと契約したというから、何かしらヒントが得られるのではないかとね、そう思ったから。この森は妖精の転移門やら精霊の契約やら、魔力の多い存在と関わりのある場所なのかもしれない。【魔弓師】のジョブのおかげで少しだけ魔力についての理解が得られた僕の浅い知識や経験では何の役にも立たないだろうけれど、家で看病したところで、なんの解決にも役にも立たない事がわかったから。こうして行動している。


 彼女の部屋だった場所に何かないかと3人で探してみる。家具事態は置きっぱなしだから、サリアラーラの部屋に無断で立ち入っているわけだけど、この際、仕方ない。


 プライバシーのアリそうな部分は全てジョアンサに見てもらうことにしたから、ちょっとだけ言い訳もできるかな? なんて思っている。


「兄さん、コレ……」


 何やら手帳サイズの紙の束を大事そうに抱えたジョアンサが僕に近づいてきた。彼女は僕を兄さんと呼ぶ。


 紙が落ちていかないように、見せたいと思ったページだけ指で挟んでこちらに渡してきたそれを、僕も丁寧に受け取ることにした。



 ◇ ◇ ◇


 強い光の球体がいつもこっちを見ている。なんだろう?


 近づくと離れるのに遠ざかると距離が縮まっている。


 付かず離れずだなぁ。こっちに来ないのかな?


【魔女】のスキルがどうもあの光に反応しているみたい。


 ◇ ◇ ◇


 あ、昨日より近いね、フフ。


 この調子なら、近い内にそばに来てくれるんじゃないかな?


 ◇ ◇ ◇


 これが精霊……凄い。


 ついていけばいいの? 聞いたけれど、返事なんて聞き取れない。いいや、ついていってみよう。


 精霊についていったはいいけれど、不思議な感覚ね。


 対して歩いていないのに、景色がガラッと変わっちゃった。


 これが精霊の世界?


 ◇ ◇ ◇


 契約かぁ、まさか精霊と契約できる日が来るなんて。


 リリーが羨ましがってる。


 でも、普段見えないものなんだって。


 このこは気を許している妹には姿を見えるようにしているんだって。


 そっか。街の人には見えないんだね?


 ◇ ◇ ◇



 サリアラーラの日記だ。ふわっとしかわからないし。大事な部分が全然書いてない。どこがどうなって精霊と会えたんだろう? 家の側か? どこに連れて行かれたんだ?


「よくわからんね」


 クバイトさんの苦笑を真似するしかない。


「でも兄さん。大事な情報ですよ?」

「情報?」


 はい、とジョアンサは続ける。彼女は、精霊との契約はきっと精霊の世界で行うんじゃないか? というような考察を述べた。うん、あり得るね。普段は見えないってところにヒントがあるんじゃないですか? と加えた。


 ふむ。


 そこら辺りにいる?


「ちょっと外に出てみる」


 そう言うと、ヨンザとジョアンサも僕に続く。


 鑑定眼、解錠。


 うわ……なんじゃこりゃ!? いっぱいいた。ピンポンサイズの緑の玉。


 風の精霊 たくさん 緑色

 水の精霊 そこそこ 水色

 土の精霊 そんなに 茶色


 各種、低位精霊体らしい。火はいなかった。


 魔女の家周辺にこんなにいたのか……。いや、妖精達はよくこんなとこに転移門こしらえたな、仲悪いのに……。


「こんなにいるのか、精霊……」

「兄さん!? 見えるんですか!?」

「お兄ちゃんすげえ!!」


 小さな称賛を浴びてしまった。ズルしてるから仕方ない。


「取り立てて強い精霊体はいないみたいだけどな」


 この子達と話せたらいいのに……やってみる? ピンポンもなんとなく話通じてたし? 静かにするように人差し指を上にして口元に持っていくと、二人は黙って僕の後ろに控えた。両手を広げる。


 精霊たちは僕の周りに集まってきている。ふーん、警戒心なし? あれか? 人間には見えないって油断してるのか?


 右手を前に差し出して、手の平を上に向けたら、風の精霊体が一体、僕の手に乗った。おおぅ、手乗り精霊、可愛い。丸いだけなんだけど、なんとなく意思が通った気がする。まぁ、精霊にしてみたら巫山戯て悪乗りしてるだけかもしれないけれど。


「あのさ、光の高位精霊体がこの辺にいたと思うんだけど、知らない?」


 手乗りんはびっくりしたように明滅した。


「うん、見えてるぞ~」


 そう言うと周りの精霊たちは一気に散開した。面白い! 手乗りんだけは身動きが取れていない。なんたって行動施錠中だからね。必死で逃げようと明滅具合が半端ないけれど。まぁ、慌てなさんなよ。


「あの……兄さん、もしかして、手に乗ってるんですか!?」

「そうだよ?」

「すげえ」


 ヨンザはさっきから凄いとしか言ってないな(笑)この子達にも見えるようには出来ないんかな? 僕は【鍵】で指定したヨンザとジョアンサが鑑定眼開放みたいな事ができないか探ってみる。


 無理か。


 精霊魔法士なんて滅多にいないんだし、出来たら儲けものってつもりだったから出来なくてもかまわない。ジョブ【精霊魔法士】っているのか? 職業として表示されたけどジョブとしてちゃんとあるのかどうか、わからん、まあいいか。


 眼がいけたんなら、耳もいけるか……?


『耳を解錠しますか? はい/いいえ』


 やっぱり!?


 はい、にしたら色々な音を拾いすぎてうるさいとか嫌だぞ?


『範囲指定しますか? はい/いいえ』


 なるほど。そんな手が。


 手乗りんに指定とかは? あ、できるんか。そっちのが限定感あっていいじゃん。手乗りんに指定して、僕の耳をご開帳。よし、いけるかな?


「なんか話せる?」


 急にパスが繋がった感覚があった。いい感じかな?


『わー、繋がってるの!? えーっ!? 契約してないのに!?』

「あのさ、光の高位精霊体いたでしょ? どこ行ったか知らない?」

『最近見ないよ?』


 普通に話せるな……。久しぶりの便利機能発見に心は躍ってるんだけど、サリアラーラの要件が先だよね。


「そっか。契約者の側にいないんだけど、なぜかわかる?」

『それは契約が解除されたからだね。普通は側を離れないよ? 妖精の場所には決して付いてはいかないけれど』


 あ~、それは知ってる。妖精の秘境ではサリアラーラ一人だったからな。確執がひどかったもん。今もそうだと思うけど。


 ピンポンと契約が解除された!? サラッととんでもないこと言った!? あちゃ、サリアラーラの状態をちゃんと見てないから、そこまでわからなかった。状態見るの精神的に怖いからなぁ。職業欄にもしかしたら精霊魔法士が消えてたりして……うかつだったかな。


 精霊に対する理解を深めたかったけれど、コレ以上の情報処理能力はないらしい。今更ながらピンポンのスペックに驚きである。


「じゃあさ、君たちより強いの、この辺にはいないの?」

『いるけどね。ただ特殊なんだ。あっちの方』


 丸いからどっちを指してるのかさっぱりわからん。あ、行動施錠してるから、微妙に動けてないからか。解錠っと。ぴょいと僕の手から離れた風の精霊は進行方向へ少しだけ進んだ。どうやらまっすぐ進めばいいみたい。


「ありがと、会いに行ってみるよ」

『うん、気をつけてね』


 パスを切ってから、進む。


 そうか……精霊との契約が切られるって、大丈夫なもんなのか? 3日も寝てるんだけど、デメリットというか、ペナルティみたいな状態? やばくないか?


 焦りが勝って走り出したら、ヨンザとジョアンサも「あっ」って言いながらすぐに追いついてくる。さすが、この子達いろいろスキル付与してるから、置いていかれるなんてことないんだろうなぁ。僕の方が追いつけなさそう。


 暫く走るとそいつはいた。






『助けてぇ、お願いやぁ』


 妙に高い声の、訛りのある、木に繋がれた精霊。


 無属性中位精霊体

 特殊個体

 状態:人型

 状態:拘束


 なんだこいつ?


 無属性?


 特殊個体?


 捕まってる?


 あ、目が合っちゃった。


 どんな状況だよ……。




お読みいただきありがとうございました。

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