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短めです。

 


「「「おかえりなさいませ」」」


 8人から出迎えられる。だいぶ慣れてきたとは言え、やっぱり普通に「おかえり」って言われたいよねぇ。固いよ。


 でももう、そうは言っていられなくなった。僕はクバイトさんへ公爵からいただいた任命書を手渡す。クバイトさんは紙を手にし、一読した瞬間に跪いた。何事かと慌てた後ろの7人もとりあえずクバイトさんの後に続く。いやぁ、疑問があってもクバイトさんに続いて跪けるこの子達、鍛えられすぎじゃない?


「直答を許す」


 身分差。


 嫌だわ、コレ。でもやるしか?


「最初の命令です。公的な訪問ならびに貴族賓客以外を除き、今後、僕に対する我が家での跪く行為、貴族に対するような接し方を禁じます。『今まで通り』接すること。異論は認めません」


 すぐさまクバイトさんが立ち上がる。その様子にただ事ではない何かを感じたような7人だったけれど、やはりクバイトさんに続いた。あ、真似してるだけかな? わからないことは執事長に倣え的な? まあいいか。ほんとは王になった高校生の女の子のように、平伏するのをやめるよう初勅みたいにかっこよく行きたかったけれど、僕では大した影響力もないし諦めた。


「アレクさん、名誉伯爵ですか……」

「そうなんですよ。さっぱり意図が読めません。みんなとりあえず応接室に来てくれる?」


 新しい専属契約が必要だそうだ。マサテュール公爵から、クバイトさんとこの子達との主従の契約を結んでおくよう言われた。家ごとひっくるめたものじゃなくて、僕との個人的な繋がりをきちんと文書に残しておいてほしいんだって。後々、これが力ななるはずだからと。


 応接室でその事を含めて、公爵との間にあった任命についての詳細を彼らにも明らかにしておいた。もともと僕の騎士になると誓ってくれた者たちだから、正直【虹色の翅】よりも深い関係ができあがってしまったという事だ。複雑ではあるけれど、避けては通れない問題だし、預かるって決めたのも僕だ。


 一通りの説明を終えて、彼らが僕との契約に即応したのを見てから執事長が締めの言葉を口にする。


「公的文書の体裁を整えるために、書類作成からしましょう。メリーヌとジョアンサに手伝ってもらいます」


 クバイトさんがそれぞれに指示を出してから、部屋には彼と僕だけが残った。


「なぜお受けに?」

「僕がここへ来た経緯はお伝えしましたっけ? それか知ってますか?」


 いえ、と短い返事が返ってくる。僕は王女に追い出されたことや、姉の事を伝えた。そして公爵から聞かされた『勇者』の事も。そのためにある程度の力が必要なことを諭され、受け入れたことなども説明していく。


「……なるほど」


「今、世情は随分目まぐるしく動いているはずです。もう迷っている時間はないのかもしれません。淘汰されるか、抗うか。僕の力がどこまで秘匿できるかも、わかりませんし」


 クバイトさんはもう一度「なるほど」と繰り返したが、苦笑はしていなかった。ことの重大さが徐々に身体に浸透していっているのかもしれない。


「明日、【鷹の爪】と僕のパーティーが帰ってくるので、もうちょっと情報があるかもしれません」


 準備をお願いします、といって僕たちの会合もこれで終える。昨日から目を覚まさないサリアの事も心配だし、ちょっと見てこよう。




 相変わらず、まだ眠ったままだ。


 今お世話しているのはクワトとヒカリ。メリーヌが書類作成に駆り出されているから、ヒカリが彼女の代わりに詰めてくれている。


「兄上。サリアさん、とても綺麗な方ですね」

「うん、そうだね」

「アレ兄のパーティー【虹色の翅】の魔女のお一人なんでしょ?」

「うん」


 二人は興味津々に僕との関係を聞きたがるけれど、特に話すこともないんだよねぇ。馴れ初めとか言われても付き合ってるわけでもないし。


 まぁ、知り合ったきっかけでも話そうか。彼女たちともコミュニケーションを図っておいて損はないし、妹みたいなもんだしね。僕のことを知ってもらう機会も必要だろう。彼女の世話といってもずっと寝ている相手のお世話なんて、やることが限られるだろうし。


 ポツポツと話し出すと彼女たちは真剣な表情で僕の話に耳を傾けている。妖精の秘境での出来事のところでは二人は活き活きと顔を輝かせている。そんなに面白いとも思えないんだけれどね?


「それで彼女に言ったんだ『アラーラさんはどう思う?』って。そしたら『そんな残念な感じで呼ぶんじゃねぇ』ってすごい形相で怒るんだよ。君たちも彼女が起きたら気をつけてね? このお姉さん怖いからね」


 引き攣った顔でうんうん頷いているから、本気にしたかもしれない。ま、いっか。実害があるわけでもないし。この辺の悪戯心がどう転ぶかわからないけれど、それも楽しみにしておこう。フフフ。


 サリアラーラの寝ている側で冗談を飛ばしていたんだけれど、彼女は静かなままだ。





 怒って起きてくれるんじゃないかって、淡い期待は何の効果もないわけで。




お読みいただきありがとうございました。

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