3 ドレクスラー・バイン
タグに異世界転移と勇者召喚を追加しました。
友であるアレクセイの【転移】という特異なスキルで王都に戻ってきた【鷹の爪】。そのリーダーたる男は一路真っ直ぐ冒険者ギルドへ向かう。メンバーには【虹色の翅】の赤髪と魔女の一人を連れていた。
王都地下にいるはずの彼らが戻ってきた。閑散とした冒険者ギルドに違和感を感じつつも、メンバーを開いていない酒場に残し、ギルドマスターの部屋へと急ぐ。
「!? ドレクスラーか!!」
ギルドマスターの驚愕の表情に困惑が隠せない。なんだ? おかしいか? 彼は訝しげにギルドマスターを凝視した。
「なんだ? 無事でいるのが不思議そうだな?」
彼は言葉をあまり選ばないし、目上の者にも物怖じしない。此度もギルドマスターとの会話に遠慮の欠片もなかった。
「いや、そうじゃない! そうじゃないが……」
突然言葉を失うギルドマスターに対してさらに疑いの色を見せる。何がある? いや、何があった? ドレクスラーの頭の中で警鐘が鳴り響く。
「お前には言っておくか……冒険者ギルド本部はもう終わりだ。俺ももう長くはないだろうよ。なんせ王都の冒険者はほぼ全滅したからな」
「なんだとっ!?」
何言ってやがる! とギルドマスターの胸ぐらを掴んだところで、何の解決にもならないことは十分にわかってはいたが、そうせざるを得なかった。彼の性分がそうさせるのだから。
「全滅ってなんだっ!?」
抵抗もしないで胸ぐらをつかまれたまま、ギルドマスターはため息すら吐かない。王女と冒険者たちの間に立たされた彼の立場は胃に穴の開く、頭に円形の皮膚が露出するほどの耐え難いストレスを生じさせていた。
曰く。
王女は冒険者のクエストを無理やり破棄、解除した。
曰く。
冒険者たちは怒り狂って地下へ潜った。
曰く。
王女は勇者召喚を行なった。
曰く。
地下の生物の全ての【スキル】と【ジョブ】が供物となった。
こうして70年前の召喚魔法陣は、完成と発動を見た。結果は3人の『勇者』の召喚に成功。複数のスキルとジョブを所持した類稀な人類の誕生である。異世界からやって来た最強の勇者を、王族は手に入れた。
説明を聞いて怒りがこみ上げると同時に、自分たちの立場の危うさを感じ取る。自分たちに起きた力の消失はそういうことだったのだ。今更ながらに恐怖の感情が湧いてくる。
あの王女……、分かってて決行したのか?
アレクセイを追い出したのは、自分に仕えている騎士への同情とか?
それにしてはあんまりな追い出し方ではあったが、気取らせないためか?
自分に力が戻っているのはなぜだ? 召喚の供物とは一時のものか?
ドレクスラーの頭の中はギルドマスターとの会話の最中もずっと警鐘が鳴り続けている。ここが正念場だと、どう切り抜けるか考えていた。
「それで、全滅ってのは穏やかじゃないな」
頷くマスター。
「供物に捧げられた【スキル】【ジョブ】を失った者たちは魔物と魔族にやられたそうだ。討伐に向かった勇者たちがそう言っていたそうだ」
第一王子の近衛騎士団と第二王子の近衛騎士団も地下で掃討戦を行なっていたはずだ。彼らはどうなったか、問い詰めたがマスターは首を横に振った。
王女は全てを承知で?
正気の沙汰じゃないな、とドレクスラーは思ったが、口にしないだけの分別はかろうじて残っていた。
「俺達は運が良かっただけなんだろうな……」
「そのようだな……」
たまたま地上に戻って報告を行うはずで、変な光を見て下に降りたことにしておいた。説明ができないことの方が多いからだ。疲れに疲れ、やつれたギルドマスターが思考を放棄している様子だったのも幸いした。問い詰められれば変なことを口走ったかもしれないし、言葉を多くすればボロが出る自信があった。こんなときは相棒のライバーの方が向いていると思うのだ。
「それで、その勇者様とやらが、魔族も倒してくださったと?」
様付けし、敬語を使いながらも敬意の欠片もない物言いでドレクスラーは続ける。
ギルドマスターへの報告といいながら、ほとんどギルドマスターの話で終わった会合を終え、ドレクスラーはメンバーと赤髪、魔女を引き連れて宿へと引き払った。
しばらく後、ギルドマスターは病気を理由に退職。
その姿をこの世界で見る者はもういない。
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