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「なん……だよ……コレェ!!!!」
状態自動解錠。
大きな怒りはすぐさま「平静」にもっていかれる。我が【鍵】に。なんだろ、血圧上がるからか? いちいち人の怒りに水を差す【鍵】スキルにうんざりする。
いや、そんな事言ってる場合じゃない。
僕の目の前には倒れた【鷹の爪】とリリアリーリ、ゲルトレイルがいた。傷だらけでうつ伏せの赤髪と魔力切れっぽいリリア。
膝立ちのまま意識を失っているドレクスラーに、盾がボロボロになるまで耐えていたであろうディーバ。ライバーとエチュレーラは聖女リナフレアを庇うような位置で倒れている。聖女は癒やしの魔法を使い果たしたのか、マジックシールド展開をし続けていたのか、魔力切れだろう。
魔族が二人倒れている。
問題はそこじゃない。
「彼らを一箇所に集めて!!」
「「「はい」」」
指示を出し、転移後一瞬にして目に入った情報を僕はすぐに切り捨てた。
なぜなら……。
サリアラーラが魔族の一人に喉から掴み上げられていたからだ。
「なにしてるんだ、お前ぇ!!!!」
サリアラーラの側に転移した直後に愛剣を振り上げた。ヤツの手ごとサリアラーラから離す。
落ちてくるサリアラーラをキャッチすると同時に魔族を睨んだ。
喉を掴む手が思いの外強く、切り離したにもかかわらず、離れない。手首を思いっきり絞って力を抜かせることで、剥がすことに成功した。その手を捨ててブロードソードをぶっ刺す。
片手でサリアラーラをゆっくりと下へ寝かせる。意識はないみたいだが、顔から涙が流れていたことはじっと見ないでもわかった。
僕の血はまた温度を上昇させていく。
「お前は絶対に許さない!!」
魔族の手ごと地面に刺した愛剣を引き抜き、僕は盾を構えた。真似できるとは思えないけれど、何度も見てきた彼らの十八番を魔族にぶつける。
シールドバッシュ。
ぱこん。
全く効いていなかった。
ですよねぇ~。
だけどそれでいい。油断や隙きを作るためだし。ほ、ほんとだよ?
確かに怒ってはいたんだけれど、【鍵】が僕をいつも冷静にさせる。これ自体がもう状態異常だと思いたい。
「なにかやったか?」
可笑しそうに笑う魔族を見上げて、僕の方が笑いが止まらない。目くらましだよ? 馬鹿なのかな?
でもあまり時間は無さそうだ。一気に行こう。足に集中攻撃をしていく。最初の魔族との邂逅で僕たちが行なった視線誘導のための布石。執拗に足にだけ攻撃を仕掛ける。だって届かないし。背が高すぎなんだよね、今回の魔族たち。
相手の状態はかなり弱っていた。混成パーティーにだいぶ削られていたんだろう事は想像に難くない。動きが緩慢で、手応えもない。
だけど……。
「そこのクズがな……、俺様に何をしたか教えてやろうか? この期に及んで謝ってきたんだよ。ウハハハハっ」
「うるせぇよ……」
ピシリと場が凍ったのが自分でわかった。【漆黒の翅】がピタリと動きを止めたから。いつもより低い声が出たのには自分でも驚きだった。だけど、思いの外僕の怒りはこの場に影響を与えている? うん、与えている。
状態自動解錠を施そうとした【鍵】に、僕は待ったをかけることに成功したみたいだ。僕の感情をいちいちコントロールしてくれるなと、【鍵】を怒鳴りつけてから。その怒りを【鍵】スキルが今度は勝手に周囲に撒き散らした感覚があったんだ。ほんとに【鍵】に意識があるんじゃないかと思えてならない。
「一つ教えてやる。この娘が謝ったのはお前じゃねえよ、たぶんな」
この言葉がお前が聞ける最後の言葉になる、と心で叫んで僕は魔族の胸を愛剣で貫いた。
サリアラーラを抱き上げ、一箇所にまとめられたメンバーを見渡す。
最後まで戦っていたサリアラーラはきっと皆に守られながら、魔法を繰り出していたんだろう。【鷹の爪】は最後まで僕との約束を守り抜いてくれていた。
目頭が熱くなる。もう少し早く来ていれば、事態は変わったか?
「お兄ちゃん……まだみんな息がある」
だけど虫の息だ。助けようがない。解錠すればいいか? 何を? どんな順番で? 状態解錠は確かに有効だろう。全員に?
僕は範囲を【漆黒の翅】【鷹の爪】【虹色の翅】が全員入るように広げた。
何が有効だ?
全員に有効な一手はなんだ?
しくじる訳にはいかない。
考えろ。考えろ。考えろ。
みんな弱っている。でも状態が全員同じじゃない。
だから解錠も同じ状態にセットできない。
くそっ、どうすればいいんだよ!?
ミーシア!! なにが5回目まではまだ無事だよ!? ギリギリどころかもう崖っぷちじゃないか!!
僕は八つ当たりと分かっていながら召喚獣のあの娘に文句を言った。
それだ!!
「【後退】!!」
【後退】:前の事象に戻すスキル。僕はこの場にいる全員のスキル、ジョブに範囲指定をセットし直して【後退】をかけた。
「「「ああ!!」」」
自分に蘇ってくるスキルとジョブの恩恵に安堵する。【漆黒の翅】は戻ってくる力を実感して活力を取り戻していった。
「リーナ、目を覚まして」
僕は聖女に声をかけて、状態:昏睡を解錠して覚醒させた。
「!?……アレクセイ?」
「おまたせ、リーナ。問答している暇はないんだ。皆を癒やして。お願いだ」
目が合ってパチクリと瞬きした聖女リナフレアは、僕の後続の言葉に目を見開いた。全員に癒やしをかけられる聖女を先に目覚めさせるのは急務だと思ったから。
戦闘ジョブはその職業補正で、耐久力や持久力が跳ね上がる。瀕死の状態だったとは言え、戦闘ジョブを取り戻せるのなら、あるいはきっとこの危機も乗り越えられるのではないかと。僕は自分がストロンガーベアーに吹き飛ばされた時のことを忘れはしない。ゲルトレイルが、自分だったら大怪我には至らなかっただろう、なんてニュアンスで言われたことをね。だったら状態解錠をそれぞれにではなく、スキル、ジョブを失う前に戻せばいいのではないかと思った。
皮肉にも八つ当たりしたミーシアのおかげで思い出せたんだけれどね。彼女から【後退】をもらっておいて本当に良かった。
聖女が癒やしに入る前に、全員をマサテュール領の我が家へ転移させた。
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