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 王都の地下には王族専用の避難通路があった。そこは70年前に閉鎖され、スラムが形成されている。捨てられた道。捨てられた人々が住まう場所。


 しかし、魔物が侵入して王都が襲われると分かってから、避難勧告が出された。もうここにスラムはない。


 一般人のいなくなった王都地下道。


 中心部へ近づけば近づくほど、どこから流れ込んでいるのかわからなくなるほどの魔物の生息具合に驚かされた。


 ダンジョンから流れてくることは分かっている。なぜなら魔物が魔石に変わるから。地上の魔物にも核と言われる魔石は存在するが、姿がキラリと消えて魔石になることなどない。肉や皮、骨などの討伐部位が残る。


 そもそもなぜ避難勧告が出せたのか。


 魔物の襲撃や侵入を予測できたのはなぜだ? 観測していたとは思えない。スラムや道を捨てたのに……。


 僕はこの避難勧告をずっと不思議に思っていた。闇組織のシーダーは言う。『間もなく避難勧告が出されるはずだから、今のうちにマサテュール領へ移動せよ』と。


 なぜ?


 前もって知っていたから、最初は疑問に思うことはなかった。『きたか』と思ったから。裏組織の情報は信頼できるものばかりだったから、疑いはしなかった。でもなぜ、避難勧告を出せるんだ?


 確かな根拠があったんだろう。


 魔物や魔族がここへやってくるという確かな根拠が。


 それが『勇者召喚の魔法陣』発動。


 さっきの閃光がそうだったのかもしれない。いきなり魔族が横穴から出てきたこともそれを証明しているように思えたし。


 魔族は言った。「お前たちが『勇者』か」と。


 それを確かめるために、魔物を引き連れ、魔族たちはこの中心部へ向かっているという。


 僕たち特別10人隊(現9人)基準で言うと、魔族は弱いけど、一般基準だと相当強いはずの者たちが押し寄せている。『勇者』を亡き者とするために。


『勇者』なんてまったくもって興味はないけれど、中心部には僕の大切な仲間がいる。彼らは強いけれど、何が起こるかわからないから、焦る。


 思考がやたらと消極的になりがちなんだけど、とにかく【漆黒の翅】を引き連れて、中心部へと足を向けている。


 もう彼らと合流するために転移しようと思った矢先だった。



 魔族が10人も目の前に現れたんだ。


 遭遇戦。


 初撃は僕の【矢の雨(レインシュート)】。効いた様子はない。力を込めたわけではなかったけれど、ノーダメージの感触に眉を寄せた。


 魔法が効きにくい相手なのかもしれない。観察していたのは僕だけではない。しっかりと様子を確認した【漆黒の翅】のそれぞれは、シャラリと鞘から抜剣した。


 体格差はあっても負ける気がしない相手。だけど油断はできない。


 魔族たちは好戦的に笑った。バトルジャンキー臭がぷんぷんする。


 あの笑った顔を変形させてやろうって思った。


 クバイトさんの【盾術・上】を確認してからというもの、一つ試してみたいことがあるんだよ。僕じゃなくて、【漆黒の翅】にやってもらいたいことなんだけど。ちょうどこの通路は横並びに7人並べるから……。


 必殺ブルドーザー。


 クバイトさんのシールドバッシュを見て思ったこと。


 避けられないように一列に並んだ状態での全員一斉シールドバッシュ。楽しそうじゃない?


 鋒矢の陣のような形に並ばせて一気にシールドバッシュを掛けに行ってほしいなぁ、なんてお願いしてみたら、全員がニヤついた。面白そうって思ったのかも。あれかな、僕の影響がちょっと出始めたかな?


 真ん中先頭にはブライトが立った。右にリック、クワト、ヒカリ。左にヨンザ。メリーヌ、ジョアンサだ。ブライトの真後ろにはクバイトさんが控える。その後ろが僕。


 盾術は見事にキマった。ノックバックした魔族に襲いかかり、二人の魔族が倒れる。




 だけど僕たちの善戦はこれで終わりを迎えた。




 ブリンドランガ

 魔族

 スキル:【剣術】【盾術】

 ジョブ:【魔戦士】



 驚いた。やっぱりスキル一つ、ジョブ一つの世界ではないって事だ。この国の行く末が心配になるレベルでやばくないか? 相手からしたら一番先頭に居る魔族の鑑定結果に少々驚きつつも、慌てるレベルではないこともまた事実で、落ち着いてはいる。


 だけど、最初の閃光から拭えない妙な胸騒ぎが僕にまだ緊張を強いる。


 魔族たちは二人が倒されたことに驚いていたが、自分が倒されることなど全く心配している様子はない。仲間だった屍を越え、僕たちに近づく8人の魔族。


 対峙する僕たち。



 また、あの光がやって来た。


 先回よりもなんとなく野太いような光。スピードはゆっくりだ。津波に似た光のうねりに身を構えつつも、通り過ぎようとするそれを、僕は鑑定眼で見た。


 召喚魔法陣の……


 ブツリと鑑定が切れる。


『警告!! 召喚陣起動によるスキル吸い上げの波動を観測。

【八卦神門】と【鍵】を緊急施錠します』


 鑑定眼が突然切られ、スキルをいきなり施錠されてしまった。そして僕は体が急に重くなるのを感じる。


 あれ?


【剣術】と【魔弓師】の力が急に感じられなくなっていた。自身に宿っていった力が、光を浴びたことで消失した。


 まずい。まずいまずい。


「みんな!! 距離を開けるんだ!!」


 何してる!! 【鍵】!! 早く解除しろ!!


 光を浴びた全ての者が、自身に起きた異変に困惑した。魔族でさえも。


「お前らぁ!!! 俺達に何しやがったぁあああ!!!!!!」


 怒り心頭のくぐもった声が咆哮をあげた。ビリビリと体が一瞬痺れて動けなくなる。


 ヤバイヤバイヤバイ!!


 2,5メートルの8人の巨体相手に、子供8人、大人1人のスキル、ジョブを持たない人間が勝てる要素などない。


 僕たちは全員殴り倒された。


 そして、骨の剣が先頭のブライトに迫りくる。


『【鍵】ならびに【八卦神門】の緊急施錠を解除します』


 おせぇよ!!


行動施錠(ロックゥゥ)!!!」


 ブライトの右肩に少しだけ当たった骨の剣は、魔族ブリンドランガごと止まった。僕はクバイトさんを避けてブライトの頭を超えるジャンプをした。ブリンドランガを袈裟懸けにし、ブロードソードを振り抜く。


「うっ!!」


 と唸り声が後方でしたけれど、気にしてはいられない。


 舐めやがって!!


 なんだよ!!


 この理不尽な魔法陣は!!


 復活した鑑定眼で見た魔族の8人には、いや7人にはスキルやジョブを確認することができなかった。


【漆黒の翅】の面々にも見当たらない。


 せっかくあんなに頑張ってきたのに……。言いようのない怒りが込み上げてくる。


 70年前のかつての王族や貴族たちもこんな目に遭ったのだろう。許せるはずもない。スキル一つ、ジョブ一つで、先行きや待遇、生き抜く力、生活スタイルを変えてしまうこの理不尽極まりない世界で、その唯一を奪われる。


 これが人に何をもたらすのか。


 決行したやつは本当に腐ってる!!




 動けなくした魔族達を、力を失った僕たちはなんとか倒した。


「アレ兄……力が出ない……」


 ヒカリが僕の裾をそっと引っ張る。不安そうなか細い声に僕は自分たちを襲った悲劇に対する怒りを深くした。彼女の頭をそっとなでる。


「うん。僕もだよ」


 こうしちゃいられない。【虹色の翅】と【鷹の爪】のもとに行かないと。


 もし、【鍵】や【八卦神門】まで奪われていたら、僕はどうなっていたんだろう……わかりきった結末に身震いした。


【門】の登録先を脳内で呼び出す。対象:僕と【漆黒の翅】。


 転移。







 眼の前の惨状に僕の怒りは天元突破した。





お読みいただきありがとうございました。


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