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6 レイミル・リング・ルクセン その2

2話目

 


 10人の騎士たちは、心を壊した王女が、落ち着きを取り戻し、自信に満ちていく様子に安堵し、涙した。


 やる気の失せていた荒ぶる彼女は見ていて痛ましかった。食が細リ、痩せこけていく様子を、悔しく見つめることしかできなかった。


 結束を強めていたのはその頃からだが、王女が元気を取り戻してからは、より強固になっていく姫騎士たちの絆は、もう誰からも非難できないほどの強さをもたらしていた。


「フフフフフフ」


 可愛らしく笑う笑顔は誰をも魅了するものではあったが、笑い方は少々不気味だった。しかし自身の主が元気でいることに安堵していたのがそもそもの間違いの始まりだった。


 姫騎士たちは王女のために手足となる。それは間違いではない。仕えるべき主の命令を守るのは当然のことだからだ。


 しかし、彼女の考え方は偏っている。


 元気であってくれれば、という思考や動機が彼女の道筋を塞いでいた。諌めるべき時にそれを疎かにし、褒めるべき時に甘やかしすぎた。努力の成果もあるため、頭の良さも災いした。


 我儘を押し通すための口も立った。


 自分の容姿を利用して他を動かす術も覚えてしまった。


 そんな時期にであった王都禁書庫の70年前の召喚陣の知識。


 彼女のジョブ【召喚士】が、その召喚陣をあっという間に理解させてしまう。


 当時足りなかったもの。


 今回必要なもの。


 全てが揃っている。


 今を逃せば自分の価値は地に落ちる。いや、地に落ちた自分を救うのはこの召喚陣と召喚の儀式。そして結果もたらされる自分の地位。


 邪魔な存在の力を削ぎ、自身にもたらされる恩恵と称賛。


 彼女は自分に酔った。


 栄光を受けるであろう自分の未来に。


 まずは布石の一手を打つ。


 王都中央地下の一室に向かう。


「姫様、どちらへ?」


「【召喚】の間です。行きますよ」


 彼女の後に10人騎士が続く。


「姫様……何を、なされるおつもりなのですか?」


 やっと、事の重大さが分かってきた騎士たちは、彼女の行動の意味を掴みかねていた。不安がその場を支配する。


「なに、少しだけ起動が可能か見てみるのですよ」


 事もなげに言った彼女の言葉を理解できたものはいない。【召喚士】たる自分がわかっていればよいのですよ、という彼女の言葉には、蔑まれていたジョブ【召喚士】の真の価値を示す時が来たと、勘違いする者までいた。


 そして彼女は召喚の間へ入る。10人の騎士たちは部屋に入らず、待機を命じられた。彼女に仕える者たちが、真に彼女に仕える者であるのなら、直ぐ側で止めるべきだったし、止めただろう。


 そして召喚魔法陣は起動した。


【召喚】は失敗に終わる。王女の想定通りだ。彼女は部屋を出る。


「では、本日のお勤めに参りましょう」


 彼女の務め。


 王都に集まる冒険者たちを指揮する務めだ。といっても地下に潜って魔物を掃討する部隊ではなく、這い出てきた魔物達を葬るための地上戦担当だ。はっきり言ってほとんど仕事がない。


 地下には第一王子、第二王子、騎士団、王国兵士団、更には公爵軍が周りを固めている。出番などないだろう。


 集められた冒険者たちもしびれを切らしている。出番はまだかとくすぶっているのだ。強制依頼で来ているものの、活躍の場がなく、報酬も用意された最低限しか得られない。討伐品は討伐してこそ得られるものだ。冒険者たちの腐り加減もそろそろ限界かもしれなかった。フラストレーションはマックスに達している。


 そしてついに彼女は彼らに爆弾の発言を投下した。






「それでは皆様。今日をもって掃討戦の強制依頼の任を解きます。ご苦労様でした」と。



その3もこの後すぐ!

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