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異変が起きた。
4回目の魔物掃討戦だ。確実に魔物の数は減っていると思う。
だけど、明らかに段違いの強さの魔物が混ざるようになってきてたんだ。
ミノタウロスを隊長にしたホブゴブリンの軍隊に見える魔物達。
ゴブリンキングの番に引き連れられたリザードマンの群れ。
オークキングとコボルトアーチャーの弓隊のコラボ。
見事にバラバラな種族の混成部隊が中央地下に集まってきていた。
なにかに引き寄せられているかのように……。
そして……。
僕たちが戦っている最中にそれは起きた。
まばゆい光が目指す場所から発射されて一瞬で消える。
「何、今の光は?」
「閃光が走りましたね……」
首を傾げながらも僕たちは戦いをやめるわけにはいかなかった。気になりつつも眼の前に迫るホブゴブリンを袈裟懸けにしつつ、歩を進める。止まる訳にはいかない。
「何かが起きてる!! 急がないと」
「総員、全力でここを切り抜ける!!」
「「「おう!!」」」
クバイトさんの掛け声で、僕たちは一気に場を制圧にかかった。
今の光は一体何だ? 誰かの魔法か?
爆発音はしなかったし。
胸騒ぎがしてならない。中央付近で何かが起きたのは間違いない。一瞬とは言えかなりの光が通過していった。ハイビームで駆け抜けていく車を見届けるような、そんな感じ?
所々に開けられた横穴から、手が壁を掴んで、誰かが出てくるところだった。最初は手袋をはめているんだと思ってた。その手が灰色だったから。
次いで足が出る。
裸足だ。これで、人ではないなと思った。その色も灰色だったから。
大きさにして2,5メートルくらいだろうか?
尖った耳に突き出た角。
いつか見た魔族よりだいぶ大きい。
そいつは言った。
「お前たちが『勇者』か」と。
「違うけど?」と返す。
「そうか、ならいい」
と言いながら、僕たちと同じ進行方向へ向かう魔族。
「あ、いいの? この先へ行く気かな?」
「そうだが?」
「その『勇者』って、ほんとにいるの?」
気怠げにこっちを向いた魔族は、めんどくさそうに答えた。
「さあな。それを確認しに行くのが俺の役目だ」
なるほど、さっきの光はそれと関係があるのか……?
カチリと何かが僕の頭の中を繋いだ。
あ、もしかして……。いや、まさか……。
「じゃあさ、あんたが魔物達を先行させてたの?」
「俺だけじゃないがな。そういうこった」
シャキーンと抜剣の音が8つ。【漆黒の翅】が構えに入る。
「ほう……俺とやるのか?」
灰色の大男は大層なドクロの大盾と骨の剣を構えた。「とりあえずビール」の勢いで僕は【魔弓師】のスキル【爆ぜる矢】をお見舞いしておく。
爆発は起こったけれど、彼のドクロの盾がそれを防いでいた。うん、やっぱりね。ドクロの一部を削ったから良しとしよう。一応、ヤツの顔は歪んでいたから、何かしらのダメージは入ったと思う。見た目は全然効いていなさそうだけれども。
ここから怒涛の攻撃が始まる。
騎士長のシールドバッシュに魔族がノックバックした隙きを、矢継ぎ早に子供たちが仕掛けた。彼らは身長差を考慮して、足を集中的に攻めたてる。執拗に攻め立てた足狙いに魔族が苛立ちを抱き、ついに意識を自分の足に向けた。
転移。
即座に魔族を行動施錠からの登録で魔族の後ろ側に移動した。
苛立った彼は、僕から視線を外した。それはいけない。ずっと矢を構えているのを気にしていたのに……。僕から目を離すからこうなるんだよ。
背中側に今日一番の【爆ぜる矢】を放った。
なんというか、これで終わり? まさかね……。
爆散して消えた魔族を呆気にとられながら見ていた【漆黒の翅】はなんだか青ざめていた。アレか? 岩を砕いた時の模擬戦思い出したとか? 【爆ぜる矢】はトラウマ呼び起し機になるかもしれないな……しばらく封印するか。強いのに……。
「クバイトさん。気になることを言ってましたね、アイツ」
「『勇者』、ですか……」
「うん」
シーダーが言っていた。70年前の魔法陣が起動するかもしれないって。ここでか? しかもさっきの閃光と魔族の出没。
あいつは「確かめに来た」と言っていた。「俺だけじゃない」とも。そしてシーダーも、召喚魔法を嫌って魔族が集まるかもしれないって、言ってなかったか?
あ、まずくない?
胸騒ぎの正体はこれか?
焦りが僕の思考を色々と嫌な方向へと導こうとする。最悪の事態はなんだ? どうすればいい? 【虹色の翅】は無事か? 【鷹の爪】はまあ強いけれども。この程度の魔族じゃ相手にもならんだろうし。
いや、やっぱりまずくない?
魔族が集結したら大変なことになる。『この程度』と言っても、僕たち基準だし。
僕の嫌な予感は大いに外れた。
想像の遥か上を行くものだったから。
お読みいただきありがとうございました。




