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 次なる相手はっと……。


 オークか。段々と魔物達が強くなってきている。それも頭を使う魔物が増えているな。統率が取れた動きをしている?


 パーティー組んでるんじゃないかって思うくらい、役割分担ができているように感じ始めているんだけど。実際のところはどうなんだろう? うん。わからん。


 強すぎるんだよ。【漆黒の翅】……。


 ルール変えようか? 電光石火禁止とか?


「クバイトさん。魔物の強さがわかりません。まず、攻撃させてから倒す訓練をしましょう。【回避】か【防御】を鍛えましょうか」


「初撃で危険な目に遭いませんか?」


 大丈夫だよ。この辺の魔物に遅れを取る彼らではない。デメリットも多いけれど、メリットを取りたい。怪我したら直してあげるし。この訓練には多分、【見切り】とか【反撃】とか【直感】なんて感覚が呼び覚まされるんじゃないかと勝手に思っている。


「彼ら、強すぎるんですよ。多少怪我しても【戦闘ジョブ】補正でピンピンしてると思いますよ?」


「……なるほど。私も甘すぎますかね……」


 うん、僕と同じくらい過保護だと思う。やっぱり痛い目にあってほしいとは思わないし。でも痛いのが強敵に面した時だと、どうだろう……あっという間に心が折られるような気がしてならない。今、油断禁物とは言え雑魚に痛い目に遭っておいたほうがいいのではないか? そう言った懸念を伝えたら、クバイトさんはあっさり頷いた。


「それはあり得ますね。昔、執事教育している時に思ったことがあります」


 教えていた執事候補生が、感覚がよく、要領も良く、教育中失敗しなかった。そんな将来有望な若者がいたんだって。でも彼は貴族の前で、失敗してしまった。やってはいけない場面でしくじったんだそうだ。その後、彼は自身を失い、失敗し続け、ついには執事の仕事を投げ出してしまったと。


 そういう人は立ち直るのに時間がかかってしまうのかもしれない。こと、魔物との戦いでそれは死を意味する。そんな事にはさせたくない。例え戦うことができなくなっても、人生まで狂わせたくはない。孤児として辛い時期を過ごしてきた彼らだ。せっかく得た力を自信を持って役立てて欲しい。


 戦いじゃなくてもいい。


 僕の役に立たなくてもいい。


 彼らの失敗が、取り返しの付かないところが初めてでしたじゃシャレにならない。


 人ひとりの命を預かるってそういうことだと思うから。7人いるけれど。


「わかりました。ここは私も心を鬼にしましょう」


 そして胸ポケットからベルが……


 あ、またやるんだ。




 -----




 第3回の魔物掃討戦の僕たちの戦いは、チート感あふれる、漲る、迸る? そんな感じで終わった。


 コボルト

 オーク

 ウルフ

 ボア

 ベアー


 これがまぁ、どっから出たんだってくらい湧いてきた。異常なレベルだ。おかげで異常なスキルアップができたけれど。


 気持ちがいいくらい強くなった。


 もう世界最強だと思っていいんじゃない? この世界が本当にスキル一つ、ジョブ一つの世界ならね。


 実際はこうやって多くを得られている者たちがいる以上、そんな世界ではないと思うけど。この国がおかしいんじゃないかって。今はそう思う。


 世界を呪ってはいけない。


 かつて僕はサルトビ・クグモにそう言った。


 でもその僕がこの世界を嫌っている。この国を出たら、違う答えがあるのだろうか。


 つらつらと考えながら、僕は王都のマグニアス伯爵邸のテーブルに着く【漆黒の翅】の面々を眺めた。


 見事にそれぞれの『何か』を掴んだ者たちが、ジョアンサの給仕を受けて食事を堪能している。ジョアンサは悔しそうだった。彼女は一番に【剣術】を【上】に上げたものの、今回の勝負には破れた。彼女の得意スキルが【剣術】であることの証明でもあったようだ。


 泣くほど美味い料理。


 それは決して一人で食べるものではない。


 誰かと一緒に食べるから泣けるんだ。


 僕はそう思う。


 どんなに美味しくても、一人だと味気ないし、寂しさが勝ってしまう。


 本当の美味しさは、分け合わないと決して味わえない。


 美味しさを、感動を、思い出を、共有するから美味しいんだと。


 そう思う。


 いつか全員で、食卓を囲みたいね。


 魔物掃討戦が終わったら、皆で食べに行こう。





 僕たちの憩いは、魔物掃討戦の合間のこの時だけしかやってくることはなかった。魔族によってさらなる危機が迫ろうとしていたから。



お読みいただきありがとうございました。

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