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本日2話目
ついに南門側の通路到達だ。
わかりやすいことに、立入禁止の立て札があったからすぐにわかった。ここから王族専用通路なんだろうなって。
後続が追いつくまで、待ってみるかな?
しばらくして、伯爵軍が、マシュラーン子爵総司令官を先頭にやって来た。
「ヴァレント殿、とんでもないな!? そなた達の強さは……まさか我々がゴブリンどもの魔石回収係になるとは思ってもみなかったぞ!! ワハハハハ」
愉快に笑った子爵様だったが、後ろの軍隊の皆様は苦笑している。
僕たちが露払いと言いながら進みに進んで、【漆黒の翅】のスキル磨きをしていたわけだけど、魔石そっちのけでもう倒すことしか、スキルのレベルアップしか頭になかったもんだから。いやぁ、なんかごめんね?
子爵が言うように、精鋭ぞろいの伯爵軍の皆様を荷物持ちにしてしまった我々は、やってしまったんだろう。色々と……。
「あああ、すみません、活躍の場を奪うような真似を……」
思いっきり頭を下げておいた。【漆黒の翅】の面々も僕の謝罪に顔を真っ青にしながら、後に続いた。
「「「すみませんでした!!」」」
深い深いお辞儀に、一同はもう苦笑するしかなかったんだ。僕もクバイトさんばりの苦笑が出たけれど、彼らの活躍には文句付けようないし?
「何を謝ることがあろうか。貴殿らの働き、しっかり伯爵には伝えておこう。我々も被害なくここまで来れた。感謝こそすれ、謝られることなどなにもないわ!」
子爵様はまた豪快に笑った。
「もったいないお言葉です。これから僕たちはここを進みます」
「うむ。我々はここまでが掃討戦の守備範囲だ。ここまでしか回収係はできんのが残念だがな」
そう言った子爵様に続いて、軍のみんなもつられた様に笑った。緊張感全くねぇな。
「では、もう行きます。子爵様方もご武運を」
「うむ。そなたらもな!」
僕たちは一気に進むことにした。後ろから聞こえてくる声にはもう答えないでおこうかと思ったけど、後で不敬罪に問われたら困るから、返事は返しておこうかな。「おーい! 魔石はどうするんだー!?」なんて言ってるから。
「お収めくださーい!!」
もう振り返らないで行こう。十分でしょ。
クズ魔石はクズ魔石で価値があるし、お役立てくださいってなもんですよ。正直回収してる隙がないくらい、彼ら【漆黒の翅】への鑑定で忙しかったんだもの。誰が最初に【上】になるかってさ。なんとなく上がったんだろうなって、わかるんだけどね。嬉しそうにするから。美味しいご飯のご褒美がものっそい効果があるみたいだ。
さてさて、僕の【鍵】の警戒範囲内に、次のターゲットが現れる。まだ先だけれど、ここで作戦会議しておこうかな?
「よし、ストップ。ちょっと休憩ね……クバイト騎士長」
みんなの前では僕もちょっとだけ言い方を変える。クバイトさんが区別してるんだから、僕も真似ただけだけどね。
「お呼びですか」
「次の作戦ですが、【盾術】を【中】に上げておきましょう」
一瞬眉を上げたクバイトさんは挑戦的に笑った。
「では私めが手本を示さなければなりませんね」
おお、やる気だ。いつにも増してクバイトさんがイキイキしている。【盾術】はクバイトさん自身も【下】なのだが、如何せん最初に与えられた【盾術】を、他の者に抜かせてなるものかと、スイッチが入ったようだ。なんと言ってもクバイトさんも僕と同じで、あんまり活躍の場がなかったからね。状況把握で忙しかったんだと思う。
執事生活が長かった彼は、観察力に優れ、状況判断に優れ、適宜物事に対応していく事が身についている。だから後ろから皆を見守ることが多かった。
でもやはり、クバイトさんは騎士に憧れていたから。
うずいちゃうんだろうね。皆が上手にスキルを上げていっているんだから、自分もってなってもおかしくない。僕もちょっと感化を受け始めているから、わかるよその気持ち。
「では彼らに指示をお願いしますね? 騎士長閣下」
「承りました。我が主」
最初から持ってきてたんだろうねぇ。ベルがチリンと鳴った。胸ポケットから出したの見たからね?
音と同時に7人がさっと彼の前に整列していた。餌を待つペットのように集まる彼らは本当に飼い慣らされている気がしてならない。
「主からのミッションです」
それ好きだねぇ、クバイトさん(笑) 任せてるから突っ込まないけどさ。
「今回は【盾術】を【中】に上げる事になりました。使用スキルは【盾術】ですが、武器は何を使っても構いません。しかし、盾を使用しなければ決して【盾術】は上がりません。今回は私も参戦しますので、よろしくお願いします。まずは手本となれるように私が先行します」
ウズウズして我慢しきれなかったのか、ヨンザが挙手をした。話の途中とは言え、僕とクバイトさんはいつでも質問を受け付けるようにしている。だから彼らにもちゃんと発言するよう言っている。もちろん最後まで聞いて欲しい時は黙殺。これが一番怖いらしい。
「ヨンザ。なにかな?」
「あの、執事長、あ、いや、騎士長が【盾術】を先行して最初に【中】になっちゃったら公平性が崩れると、思います」
勇気を振り絞って言ったんだなって思った。恐る恐るこっちをチラチラ見てきたから。他のメンバーは『よく言った!』という顔をしているから、なんだろうね?
「フフ。君たちは私にご褒美を取られてしまうと、そう思ってるわけですか」
あ、そういうこと!? 食い意地すげぇな。食事効果どんだけだよ!? ジョアンサの泣きながらのディナーがそれほど彼らを縛っているとは恐れ入った。確かに恨めしそうに見てたもんなぁ、じっとさ。食べにくいったらなかったもん。
図星を突かれて全員が目を逸らした。うわぁ、面白い。ちょっと割って入りたくなった。
「君たちは何か勘違いしているようだね? クバイト騎士長が君たちと同程度の練度だと思っているの? 違うよ? 君たちが束になっても勝てるわけがない。だから勝負は騎士長の【盾術】が【中】になったタイミングがスタートの合図だ。安心するといいよ? そうだね、もしもの話だけれど……」
こちらもタメを作ると食いついてくれるんだ、可愛い。
「もしもクバイト騎士長より先に【盾術】を【上】にできた者がいたら、その子は1週間ディナー付きで第二騎士に任命しよう」
第一騎士クワト以外は序列を作っていないんだ。殺到したけど、だれも任じてはいないんだよね。こういう時のためにとっておかないと。
「そうだねぇ、第一騎士のクワトはやる気が起きないだろうから、君がもし【上】をクバイトさんより先に取れたら、デザートを付けよう」
ずるい! なんて言ってる者もいたが、ひと睨みで鎮圧。クワトはしっかりと自分の装備品の盾を少しだけ上げた。やる気充分だね、よし。
実際は誰もクバイトさんを超えることは無理なんじゃないかと思っている。彼は【聖騎士】と【暗黒騎士】のジョブ持ちだからだ。2つのジョブが盾術の上昇を補正してくれるんじゃないかと僕は思っているから。
さてと、どんどん近づいてきている魔物は何奴だろうね?
コボルトだ。5歳を思い出すよ。勇者ごっこしてたんだよね。僕はコボルトリーダーで、魔王アレクン。懐かしい。
3回目の魔物掃討戦、序盤はコボルトか。
魔物の姿が見えた瞬間、我らが騎士長閣下は消えるようなスピードで前を進んだ。
シールドバッシュが前列のコボルト達を吹き飛ばす。って、いやいやいや、シールドバッシュにそんな威力あるの!? ノックバックくらいじゃないの!? 吹き飛ばされたコボルトが後列のコボルトにあたって、致命傷を与えていた。
どんだけだよ!?
あれかな……【聖騎士】と【暗黒騎士】はやりすぎちゃったか?
クバイトさんは構わずに進む進む。さながらブルドーザーのようだ。倒れているコボルトにさらなる追撃が加算され、あっという間に魔石へと消えていく。
ぇぇぇぇ。
うん、僕を含めた8人が。
ぇぇぇぇ。
わかるよ、その気持ち。
群れでやって来たはずのコボルトたちはその姿を魔石へと変えていくしかなかったとか。
初めて見たよ。
クバイトさんのドヤ顔。
7人の壮絶なるお食事権争いと第二騎士争奪戦はあっけなく幕は閉じられた。
一人の大人気ない人間によって。
クバイト・ショーン
【盾術・上】
彼の顔と、スキル欄は輝いていた。
夢がかなってよかったね。クバイトさん。これからもよろしく。
お読みいただきありがとうございました。




