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『マシュラーン子爵へ
軍司令官の務め、ご苦労だ。
新設の部隊を掃討戦へ投入する。
彼らはわたしの直属の部隊故に、君の指揮下にはない。
だからといって、君の指揮を乱すようなことは決してしない。
合流を果たしたら、彼らは中央へ向かうことになっている。
わたしの密命を帯びていると捉えてくれて構わない。
彼らが辿り着いたなら、もう一通の封筒を解き、我軍へ読んであげてくれ。
彼らから届く物資は忠実なる君への支援だ、好きに使ってくれ。
それでは引き続き頼む。
印:ジョージ・フォン・マグニアス』
『諸君。
掃討戦、ご苦労。君たちの働きは家族にも随時伝えている。
我軍の精鋭たちよ、武運を祈る』
短い言葉だった。
でも士気は十分に上がった。
マグニアス伯爵の言葉には力がある。
多分人となりも関係するんだろうなぁ。別の誰かが同じ言葉を述べても、効果は違うはずだ。彼らと伯爵の間にある信頼関係、伯爵の言葉に籠もる確かな確信、それを感じさせてくれるんだから。
「ヴァレント殿、援軍と物資に感謝する」
手紙を先に軍へ読み聞かせた後、司令官マシュラーン子爵は僕を近くにこさせてからそう言った。
マシュラーン子爵はマグニアス伯爵の直属の配下で、伯爵の信頼厚いお人のようだった。彼には僕の素性が分かっていたようで、幽閉事件解決における関係性を知っている。それで小声でお礼を言ってくる姿勢には驚かされた。この人も貴族の驕りのような不遜さが感じられなかったんだ。類は類を呼ぶんだね。
「いえ、伯爵様はあんなところで留まってていいお方ではありませんから、少しでもお役に立てたのなら、光栄です」
「ハハ、謙遜なさるな、伯爵は貴殿の働きなくは今の自分はないと、そう評価しておられた。あの方にそこまで言わせる貴殿と、一時と言えど共闘できるのは誉れよ」
いやいや、持ち上げ過ぎじゃない? 貴方貴族でしょ? 一般人に向けていい賛辞じゃないでしょうに。
「ところでヴァレント殿、貴殿は中央へ向かうんだな?」
「ええ」
密命扱いだから、短い返事でも察してくれるのがありがたい。密命じゃなくて、自由に動くための伯爵の配慮なんだけれどね。
子爵は軍装備だから印象はあんまりわからない、次会ったとき声でしかわからないのやばいよね。まぁ鑑定たらいいんだけれども。
さて。
【鷹の爪】【冷やかし客】はどこにいるのかなっと……。【門】で彼らの側に転移できるか探ってみる。
ん? 今は単身じゃないからみんなで行ったらびっくりするだろうなぁ。一人で行ってもびっくりされるけれども。えっと、彼らは一緒にいるみたいだね。【鷹の爪】は僕がお願いしたことをちゃんと聞いてくれているみたいだ。
一気に距離を詰めるか、このまま進むか……。
【漆黒】のみんなの成長も大事だし、このまま進むかな、そうしよう。
「子爵様、僕たちはこのまままっすぐ進みます。先行すべきか、歩調を合わせるべきか指示を下さいますか?」
そういうとマシュラーン子爵は驚いた顔をこちらに向けた。
「ヴァレント殿は指揮下に入らぬと記してあるが?」
彼は伯爵の手紙をこちらに見えるようにしてからそういう。マグニアス伯爵の指示は絶対、っていうなんだか王様ゲームみたいな忠誠の誓い方なんていったら怒られるかもだけど、本当に伯爵の統率力というか、求心力? 凄いよねぇ。見えてない場所でもこれだよ。マシュラーン子爵の忠誠心や人柄も加味されているとは思うけれど。
「そうは言っても、貴方は総司令官です。指示に従わぬ部隊があっては、士気に障りがありませんか?」
僕の言に子爵はポカンとした後、盛大に笑った。なんだよぉ。
「ご配慮痛みいる。だが、心配はいらんよ。我らはマグニアス伯爵の部隊。貴殿の部隊が密命を帯びた部隊であることは、全員が知ることとなった。最早なんのわだかまりも、齟齬も生じはせん。伯爵の精鋭部隊の真価は統率力にある。もう一度言うが心配には及ばん。貴殿らは自由に動くといい」
どんだけだよ……。かっこよすぎない?
伯爵は言っていた。彼らに強さを見せておけと。伯爵の企みが少しでも上手くいくように? 何企んでるのか知らないけれども。
「では少し前を行かせてください。露払いをしてきます」
ふむ。と頷いた子爵だけれど、全体的に小さな(子供多数)部隊を見て、心配顔だ。だけど子爵はこの小さな部隊の援軍のおかげで、士気を一気に上げられたのも思い出したのかもしれなかった。
「わかった。よろしく頼む」
僕たちの快進撃を彼らは唖然として見守っていたんだとか。
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