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本日2話目 短めです。
いやぁ、酷いよ。こりゃ酷い。
眼の前の惨状がだよ。
僕はやることがないんだよね。【漆黒の翅】が強すぎて、困った。魔女二人の後ろについて行ってた時の方がまだ可愛げがあった気がする。アレはアレでヒモっぽかったけど。
ダンジョンから派生して出てきた魔物たちだから、魔石とたまにドロップするアイテムとかが拾えて、死骸残骸が残らないのは良いんだけどね? この数が半端ない。どっから湧いてるんだって話より、よくもまぁ、飽きもせず狩り続けられるものだな、と関心し通しなんだよね。休みたくないのかな?
これまでの鬱屈した生活とは違い、【漆黒の翅】は明確な目的意識があり、強くなろうという意欲が高い。7人も同い年がいて、切磋琢磨している。誰もがライバルで友で兄弟で仲間で家族だ。
恐ろしい向上心と進歩。
我先にと魔物を葬っていくその姿は軍神のようだ。彼らは魔物をちぎっては投げ、ちぎっては投げしているうちに、自分にもたらされる変化に気づいた。スキルのレベルアップにだ。【下】から【中】へ。
彼らは競争を始めた。誰が一番早く魔物を多く倒せるか。スキルレベルを多く【中】にできるか。本来ならありえない遊びだ。本当なら一人につき一つのスキルを、彼らはたくさん持っている。それをより多くのスキルを上げてしまおうって頑張っているんだよ。はぁ、信じられん。スキルレベルを上げるのはそんなに簡単なことではない……はずなんだけどなぁ。
伯爵から軍隊の装備一式を9セットもらったから、今はお揃いの装備をみんなで装着している。連帯感って大事だよね? そこに状態施錠&【保存】を施して、頑丈さも酷い有様なんだよね。
僕たちは王都に転移して、まっすぐ南門へ行ったんだけれど、そこで待つ門番が、僕たちの到着を待ってくれていた。なんでも伯爵軍特別10人隊なる新設の部隊が行くからさっさと通すようにお達しがあったらしい。マグニアス伯爵から。
なんとなく矢面にはクバイトさんを立たせておけばスムーズに運ぶだろうなと立たせたら、それはそれはすぐに通された。僕が立ってちゃ指揮官なんて思われないだろうと思っての配慮だったんだけれど、そんな配慮は意味がなかったんだ。門番はちゃんと僕が隊長だと認識していたみたいだし。年齢も把握していたから、ミテクレで判断しない、いい人材がこんなところにもいたのか、とちょっと思った次第。
伯爵軍総司令官にはまだ会っていない。地下に向かってからだいぶ先にいるらしい。王都中央付近にまで迫っているといいんだけど。魔物の進路や湧き出る場所によって、進み具合も変動していくに違いないし、どこから穴が開けられるかもわかったものでもない。挟み撃ちに合う可能性だって否定出来ないしね。
こうして僕たちは伯爵正規軍と合流すべく、進んでいるというわけなんだけど、先にいるはずの彼らより、魔物たちが多いのってどういうことなんだろう? 彼らが進んだ後から新しい穴があけられたんだろうか? そうだとまだいい。そうじゃなければ彼らは魔物に倒されたことになってしまうから。マグニアス伯爵の正規軍だって、戦闘スキルか戦闘ジョブ、あるいは両方持ちのはずだから、このあたりの魔物に淘汰されるとはとても思えない。
確かに数の暴力っていうものも考えられなくはないけれどね。ゴブリン程度にやられるような軍隊ではないはずだ。
「アレク兄!! あそこからゴブリンが出てきてます!」
ブライトが右手の人差し指で方向を示しながら叫ぶ。視線の先からドンドンドンドンとゴブリンが横穴から出てきては、こちら側と、進行方向へ二手に分かれる。酷いなぁ、溢れ過ぎじゃないかなぁ。
新しい穴であることは明白だ。だけどどれくらいの数の魔物が正規軍方面へ進んだのかがわからない。僕たちが、いや、【漆黒】(面倒だからこれでいいや)が倒していった数だけなら相当数、あるいは同数はあちら側へ進んでいることだろう。ピンチじゃない?
挟み撃ちは、戦力差があってもキツイというし。
【八卦神門】スキル【後退】を穴が開いた壁に施す。
勢いよく壊された瓦礫が元の姿に戻っていった。出てくる直前のゴブリン達の衝突音が壁の向こうから極僅かに聞こえた。
ゴーーーーン。
来た道に意識を向けて、【鍵】スキル【施錠】を壁に。
後ろから来られるのはちょっと避けたい。この面子なら全然大丈夫とは思うけれどね。万が一も起こす気はない。
進んだ先に戦闘音が響き渡っている。最初は微かな音だったけれど、徐々に大きくなるその音に、近づいている実感がこもってきた。僕たちにも緊張が走る。
やはり、挟み撃ちになっていた部隊と遭遇し、彼らの後続を襲うゴブリン達に、今度は僕たちが挟み撃ちにする番だった。
「援軍です!!」
誰かが叫んだ。こちらに気づいた兵士が前にいる自軍へ振り返らずに報告する。挟撃からのまさかの援軍に沸き立つ伯爵軍の士気は鰻登りに上がった。勢いづいた彼らの猛攻はゴブリン達を圧倒する。
元々負ける要素がないはずの戦いとは言え、挟撃は恐ろしい。どんなに強い軍隊でも瓦解することがあったと歴史で学んだことがあるし、あながち間違いでもないのだと、今感じたところだ。彼らの士気が上がった瞬間の瞬発力や、圧倒力がそれを物語っていると思う。気力が物を言うことだって本当にあるんだろうね。病は気からとも言うし。
こうして僕たちは伯爵正規軍との合流を果たした。
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