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10万PV、1万ユニーク ありがとうございます!

ヽ(=´▽`=)ノ

本日2話目

 

 桁外れな力にふさわしい権威か……いったいどんな抜け道なんだろう? 貴族にしかわからないいろいろなものが存在するのだろう。考えてもわからないね。そういう事態になってからしか判断できない類のものだと思う。


 伯爵邸からの帰り道、用意された馬車でカタコトカタコト揺られながら僕は思考にふけっていた。実際に馬が止まっても、僕の考えは止まらない。「着きましたよ」と3回言われてハッとする。我が家の門にたどり着いたみたいだ。


 門扉を通り抜け、玄関に差し掛かる。押し開けられたドアは実に滑らかに僅かな音しか出さない。毎日手入れされ、油が挿してあるためだ。ギーともギギとも言わない。流石はクバイトさんである。


「「「おかえりなさいませ」」」


 もうびっくりはしない。最近はクバイトさんと7人の下僕たち(子供たち)が整列して帰りを待っていてくれる。感慨深い。一人で帰ってきて、一人で過ごすこの家のデカさは堪ったもんではない。彼らがいて本当に賑やかになった。


「クバイトさん、後でお話がありますのでお時間をください」


「左様でございますか……アレクさんの御用を優先させていただきます」


 綺麗なお辞儀で対応される。子供たちも所作を学んでいるようで、執事長の真似をしてお辞儀をするところなんかは見ていて面白い。クバイトさんは「今からでも伺いましょうか」と応じてくれる。


「では応接室で構いませんか?」

「もちろんどこなりと」


 ここは貴方の家ですよ、と言わんばかりの苦笑である。




 -----




「それでお話というのは……」


 なんでございましょう? と続きそうな感じで。


「子供たちのことです。さして僕とあんまり年齢変わらないんですけどね」


 おどけて見せてもクバイトさんはなんら変わらなく、ブレることはない。苦笑はするけどね。


「彼らは伯爵が連れてきた王都スラム出身の孤児です。お察しかもしれませんが」


 そう言うと彼はわずかに頷いた。続きを静かに待つ。


「スラム出身の子供たちにはスキル継承が認められないのはご存知ですか?」


 かなり突っ込んだ話をしている自覚はあるけれど、クバイトさんには必要な事と思っている。彼らが世話になっている以上、全てを知っておいてほしいという僕のエゴだ。


 ブレないと思っていた執事は心底驚いた顔をした。


「本当ですか!? 王国法では12歳であればと……」


 頷きで返す。王国法では12歳であれば例外なく、スキル継承を受けなければならない。という法律が昔から制定されていた。しかし、王都民でありながら、その法さえ適用されない者達がいる。


「マグニアス伯爵は彼らを哀れに思われて、引き取ってきたそうです。しかし、それも危うい行為ではないかと危惧しています。どんな敵がいるかわかったものではありませんから」


 わかります、と何度も肯定するクバイト氏。彼もマグニアス伯爵幽閉事件の事で心を痛めていたはずで、お世話になった恩人があらぬ罪で陥れられようとしていたのはまだまだ記憶に新しい出来事だから。


 危険な賭けであることは十分わかっているけれど、この人を信じてみよう。いや、すでに信頼できる人であることは分かっているけれど……話すことで味方につけておきたい。


「僕とミーシアには特別な【スキル】があるんです」


 突然の告白に目をパチパチする珍しい執事をみた。子供たちに施したあれこれや、掃討戦への参加など、これからのことを詳らかにした。もちろん【八卦神門】のことは言ってないけれど。説明無理だし。


「いやはや、驚きました」


 謙遜でも何でもなく本当に驚いていた。いつもの苦笑さえ出ないほどに。


「アレクさん。なぜわたしに?」


 話したのか。


「もしもの時のためです。貴方に危険が及ぶかもしれない。理由さえわからずに襲われるなんて、そんな理不尽な目に遭わせたくなかったんですよ」


 なるほど、といって彼は優しく目を細める。


「しかし、アレクさん。心配はご無用ですよ。執事生活が長いといろいろと対処すべき事がわかるものです。あらゆる可能性を考慮して事態にあたる心構えはあるつもりです。例えそれが、館の主の暴挙だとしても」


 フ、と笑った彼の笑顔には哀愁が漂っていた。何かあったんだろうね。


「そうですか。それはそうと、ちょっと僕の世迷言に付き合ってくださいませんか?」

「なんなりと」


 この人はほんとにぶれないね。


「小さい頃の事をお聞きしたいんです。クバイトさんは執事になる前、いや、12歳のスキル継承を受ける前は、どんな人になりたかったんでしょうか?」


 そうでございますね……と言いつつ過去の自分を思い返しているのかな?


「なにぶん、昔のことですからね。ふむ、そうでした」


 俯いて目を閉じていたのかと思いきや、なにか閃いたのか思い出したように僕の顔を見返す。


「王国騎士になりたかったのを思い出しました。王都から魔物の討伐に向かう騎士様の勇姿や凱旋行列を見ては憧れたものです。ゴロツキに襲われそうになったときには助けてもらったこともありますからね」


【家事】を授けられた時は本当にがっかりしたものです。15歳のジョブ継承に期待しましたが、コレもまた【バトラー】ときた。そう話すクバイトさんは諦めの感情はとうに無く、穏やかだ。


「ちょうどいい」


 何がちょうどいいかわからないけれど、切り出す。


「クバイトさん、この家の騎士になっていただくことはできますか? 正確には僕のいる場所の」


「それは……?」


「ずっと気になってはいたんです。クバイトさんの適正や能力に。でもね、王国騎士は15歳から35歳までが上限でしょう? でも個人の家ではそんなの関係ないから。ぜひ貴方の力を僕に貸してほしいんですよ」


「執事としてお仕えしているでしょう?」


「それは貴方がこの館の管理人だからでしょ? 僕がいなくなれば、次の主に、この家ごと仕えることになる、違いますか?」


「……違いませんね」


 そうでしょうとも。


「だからこそですよ。失礼なこと言いますが、僕はこの家に縛られている貴方の事情はわかりません。ですが貴方の力はほしいんです」


「困りましたね」


 全然困ってなさそうな普段の苦笑顔でクバイトさんは試すように僕を見つめる。


「つまり、アレクさんについて行けと、そういうことですね?」

「はい」


 ここは目を逸しても誤魔化してもいけない場面だ。お互いを真っ直ぐに睨み合って、クバイトさんの方が最初に目を閉じた。


「年取った【バトラー】のわたしに付いてこいと……」

「はい」


 クバイトさんは徐に席を立って僕の横に来て跪いた。


「我が主、貴方の剣となり盾となりましょう」


 王国貴族の騎士の誓いの挨拶だ。絵本になるくらいの有名なセリフだから僕も知っている。僕はほっとした。来てくれるようだ。あー、しまった授ける剣なくね? しょうがない『ドス』渡しとくか。ミスリル製のは【虹色の翅】の証のようなやつだから、黒鋼のものを贈ろう。【門】から妖精の家の中に収めている『ドス』を取り出す。


「そなたの忠誠はこの剣と共に」


 ドスだけど、なんかごめんね? 肩にドスをポンと乗せる。恭しく受け取ったクバイトさんだけど、やはり木の棒に驚いている。これ剣じゃなくね? って感じで。いや、その、だからさ、なんかごめんね?


「これね、片刃の仕込み剣なんですよ」


 サイドから鞘を引き抜いたら、びっくりしていた。王都の鍛冶師ガインズに頼んでいたんだけど、冒険者ギルド経由で届けてもらったお蔵入りの12本、作りすぎです、はい。あ、これ子供たちにもあげよう。


「それと、これも受け取ってください」


 クバイト・ショーンのスキル【盾術】を解錠しますか? はい/いいえ。

 クバイト・ショーンのスキル【剣術】を解錠しますか? はい/いいえ。


 クバイト・ショーンのジョブ【聖騎士】を解錠しますか? はい/いいえ。

 クバイト・ショーンのジョブ【暗黒騎士】を解錠しますか? はい/いいえ。


 自重はしない。だって、仕えてくれるって言ったし、今更だもんね。


 僕は、何をくれるのか? と未だに首を傾げているクバイトさんを見ながら、一応だよ、なんか雰囲気出したかったからだよ? 決してやりたかったわけじゃないんだけどね?


「アレクセイ・ヴァレントが命じる……我が眷属たる【鍵】の子らよ。我が騎士クバイト・ショーンの忠誠に祝福を! 解錠」


 まぁ、なんと言うか、全部に『はい』を選択するだけなんだけどさ。


 一気に4つも解錠したから、彼を襲うインストールラッシュとダウンロード待ちに、クバイトさんはローディング中だ。


「な……なんですか、これは……」


 沸き立つ力の奔流にまだ理解と身体が追いついていないんだろうね、うん、わかるよその気持ち。







「アレクさん、もう一度誓いましょう……貴方に忠誠を」


 短い言葉だった。


 でも明らかに感情の伴った明確な誓いの言葉。


 闇と光の騎士を迎えたこの瞬間。


 新しい未来を作り出していく感覚。


 ミーシア、君は子供たち7人を加えた8人が、僕の将来のパーティーだって言ってたよね?


 悪いけど、そうはならないよ。


 新しい武勇伝を君に話してあげられるように、この人生、もうちょっといろいろ頑張ってみるよ。




お読みいただきありがとうございました。

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