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「なるほど、冒険者ではなく、私兵として掃討戦へ参加すると?」
「ええ、冒険者として追い出されてしまいましたから、参加する大義名分がいると思うのです」
「伯爵軍に入るのか?」
「形だけ整えておきたいといいますか、問い詰められた時に、所属を言いたいなと」
なるほど、考えたな、と言いながらあんまり思案した様子もなく、目の前の御仁、ジョージ・フォン・マグニアス伯爵はどっかりとソファーに座り直した。
預かった子供たちの処遇と、これからの動きを伯爵には伝えておきたかったから、会う機会を頂いたというわけだ。
「結論から言うと、構わない。手続きはこちらでしておこう。出発前にもう一度顔を出してくれたまえ」
それで、あの子達はどうするんだね、と伯爵は先を促してくる。僕は掻い摘んでだけれど、彼らの様子を伝え、これから鍛え、実践をこなし、掃討戦へ連れて行くことも伝えておいた。伯爵は少しだけ眉を上げた。恐らく心配が先に立っているんだろうと思う。自分が救った命をまた危険に晒すのではないかと。そりゃそうだ、僕も逆の立場ならそう思ったろうな。
「詳細をお知りになりたいですか? 彼らがどれほどの力をつけたのか……」
この時の僕の顔はきっと挑戦的なものだったに違いない。自信があったからね。僕じゃなくミーシア・グレイグハートがやったとんでもない能力付与と能力開花。そして本来15歳で得るはずのジョブ継承を12歳で終えている。酷い話だよ。人間兵器の出来上がりだからね。本人たちは大喜びの大絶賛だったと記述しておく。
「いや、聞かないでおこう。人の口に戸は立てられぬという。秘密は秘密であることで価値が高まる。知ってしまえばわたしはいつか話してしまうかもしれないし、良からぬことを考え始めるかもしれない。それは避けたい」
驚いた。この方は本当にお強いのだと、いろいろな意味でずば抜けた賢さと、身を護るすべとを心得ているのだなと感じた。いや、捕まってたけどさ。その経験も加味されているのかもしれない。知っていることの守りの難しさもわきまえているなんて……、かなわないなぁ。付いて行きたいと思わせるカリスマがあるのだと、流石は闇組織が必死になって助けようとする方なのだと、強く思った。
「では、概要だけ。彼らは確かな強さを得ました。きっと伯爵の想像を上回るほどに」
ですからご安心ください、と付け足した。最早この世の人間ですらありませんからね、強さ的に。ミーシアが散々やらかしたけれど、それは全部僕のせいでもある。彼女の召喚主は僕だからね。責任を持って彼らを最後まで面倒見るつもりだ。
「そうか」
とても短い返答だったけれど、伯爵の顔はなんとなく晴れ晴れとしている。心配事が一つ減ったのかもしれないね。
「ヴァレント君、少し先の話だがね……」
「はい」
「貴族になる気はないか?」
「ありませんね」
即答。伯爵もわかってたみたいで、苦笑した。
「そうだろうね……しかし、考えておきなさい。君の自由は偏っている。冒険者としてもつま弾かれたところだ。悔しくはなかったか? 貴族にもひとつ抜け道というものがあるんだ。君にそれを紹介しよう。なに、君は私の庇護下にある。名目上だけの話だが。実際には君は誰かに守られるような者ではない。それは重々承知している。だが、権威という力で押し通さなければならないことも出てくるはずだ。君の桁外れな力にふさわしい権威がね」
だから、わたしがそれを準備しておこう。そう締めくくられて、僕の報告会は終わった。




