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本日2話投稿
「ただいまぁ」
「「「おかえりなさいませ!!」」」
「うおっ……びっくりしたっ」
玄関ロビーでお出迎えに合うとはついぞ思ってなかったから、心臓が跳ねたような気がしたよ。そう言えば7人も人が増えたんだったなぁ。そのうちの女の子3人が、クバイトさんの小さな合図で「おかえり」を言った。びっくりしたー。
「お疲れ様でした、アレクさん」
「ええ、ただいま帰りました。もう始まっているんですか?」
「まだ、ちゃんと挨拶できるのがこの子達だけですが、やる気と筋は良さそうですよ。期待して待っていてください」
「クバイトさんの教育の賜物でしょう? 楽しみにしています」
そう言うとクバイトさんはいつもの苦笑を見せてくれる。この顔見ると安心するんだから不思議だ。
「あ、そうそうここにもうひとり加わるかもしれません。その子は教育はいりませんが」
「左様でございますか」
動じないんだよねぇ、クバイトさんは。流石です。
脳内の【鍵】がさっきから凄いうるさいんだよ。声を発しているわけではないのに、主張が激しい。
『ミーシア・グレイグハートを召喚しますか? はい/いいえ』
『ミーシア・グレイグハートの召喚に応じますか? いいえ』
なぜか選択肢が狭められている。あちらは召喚はしないらしい。まず、こっちに来たいのかな? でもなぁ、めんどくさい系こっち来るんだよね? 一瞬で送還してやろうか? それも面白そうだね! うずいちゃうんだから仕方無くない? 悪戯心がさ。
とりあえずご飯の後がいいかな? 今呼んじゃう? あ、そう? じゃ自室に行ってからにしようか。
『はい』を選択。
クグモを呼んだときと同じような幾何学模様の魔法陣が、目の前に展開された。そして強烈な光が中心に及んで陣ごと収束していく。
中心部には跪いたピンク髪のコスプレイヤーがいた。
「アレク様!! 好きです! 結婚してください!」
行動施錠!! いきなり抱きつこうとしてきた相手を止めようとしたけれど、失敗した。あ、召喚者は【鍵】使えないんだっけ? なら【後退】!
僕に触れようとした瞬間に事象が元に戻される。彼女は跪いた状態へと戻った。
「あう!?」
内心の動揺を僕は一旦脇において彼女へ向き直る。
「はい、喜んでお断りします」
「どっちですか!?」
「この場合は断る方に喜びがかかるから、結婚はしないって理解していいよ?」
というかいきなりご挨拶だね。びっくりしたよ。僕の言葉を聞いて明らかにショックを受けているみたいけど君、頭大丈夫か?
「そんなぁ、あのとき手取り足取り教えてくれた優しさはどこへいったんですかぁ!?」
クグモの時も思ったけど、別の世界の僕が彼女にも干渉したんだろうなぁ。何したんだよアレクセイ……。
「あ、はじめまして。アレクセイ・ヴァレントだよ。ミーシア・グレイグハートさんでいいんだよね?」
「また初対面の挨拶とか……わーん、酷いよアレク様ぁ……」
ぇぇぇぇ。めんどくさいなぁ、やっぱりこいつ。送還しちゃっていいよね?
ミーシア・グレイグハート(15)
八卦神門6代目継承者
スキル:【鍵】【歌姫】【剣術】【八卦神門・二】
ジョブ:【鍵師】【吟遊詩人】【剣士】
称号:カラオケ女王
またとんでもないな、なにこれ? 何気に僕よりも遥かにハイスペックだし。カラオケ女王って……?? 【歌姫】から派生しているんだろうけど、どんな世界だよ!?
「挨拶も済んだことだし、そろそろお暇の時間だね。もう帰る?」
「ええええ!? 酷くないですか!? 今来たところですよ!?」
確かに受け入れるかわからないけどっておっしゃってましたけど、なんて呟きが聞こえる。こんなぶっ飛んだ娘とよく会話が成立したよなぁ、別世界の僕は。
「結婚はさておき、何しに来たの?」
よく見ると彼女は整った顔をしている。可愛いとも美人とも言えるエキゾチックな感じかなぁ。髪がピンクじゃなければ、すごくいいのに……。
「さておかれちゃった……」
なんで泣きそうなんだよ!? 意味がわからん。俯いているかと思ったら、クワッと首を上げて真剣な表情になった。なんだ、そんな顔もできるんだね。といっても初対面だからよくわからないけどさ。
「あの……今、アレク様はお一人ですか? パーティーは何名ですか? 4名? それとも8名?」
「なんだよ、藪から棒に」
「大事なことなんです! 答えてください! お願いします」
クバイトさんバリの苦笑で応じたら、悲壮な表情をするミーシアに戸惑う。なんだ?
「4人だけど……今は一人だね……」
はぁ、答えたくない事を言わされている感覚があるからか、胸の痛みがまた僕を襲う。彼女は続けた。
「4人……あの、魔物掃討戦、ですよね?」
「詳しいね……」
追い出された記憶が再度鮮明に思い出される。くそっ、嫌なことから遠ざかっていたのになんだよ。僕をエグリに来たのか?
「襲来は何度目ですか?」
「応える必要を感じないんだけど?」
自分で思っていたよりも冷たい声が出てしまった。案の定彼女は少しだけ怯えたようだったけれど、すぐに持ち直す。
「教えてください」
「断る」
「お願いします」
ますます真剣になっていくミーシアに、僕も頭がだんだん怒りに燃えていくのが感覚でわかる。でも【鍵】が僕を冷静にさせてしまうんだ……ムカつく。
「わたし、ここにお節介に来たんです」
あ、そう。大きなお世話だ。
「必要ない、帰れ」
僕は【門】の【送還】に意識を向ける。お帰り願おう。なんなんだよ。
「あ、ダメですよ!! 後悔しますから!! 助けられなくなりますよ!! いいんですか!? 【虹色の翅】のピンチを救うチャンスを失います!!」
え?
「落ち着いてください、アレク様。お願いします」
聞き捨てならないセリフに脳内の【門】が消えていく。
「わたしが来た理由と、アレク様の状況は直結していますから……何回目の魔物の襲来か教えてください。このとおりです」
彼女は頭を深々と下げた。僕のピンチを救いに来たのに……。さっと頭の熱が引いていく。
「1回目だと思う……王都から出されて2日目だよ」
力なく呟くことしかできなかった。
彼女はそっとため息を吐いて、安堵の表情を僕に向ける。
「ふぅ。アレク様、事が上手く運んだら、わたしと結婚してくださいね」
「いいよ」
「ダメでもとも……いいんですか!?」
「どうせ君は召喚獣だから結婚は不可能だよ」
「はうっ!? って召喚獣!?」
何しに来たんだろうね? 全く。だけどピンチが訪れるという。掃討戦は失敗するのか?
ミーシア・グレイグハートの到来は僕の未来を変えるのだろうか?
僕がクグモの未来を変えたように?
お読みいただきありがとうございました。
※鑑定眼が使えないはずのアレクがミーシアのプロパを見ることができたのは、ミーシアの配慮によります。




