7興
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ヽ(=´▽`=)ノ
宿の一階にある酒場は閑散としている。そりゃそうだ。避難勧告が出てるんだから当たり前だ。冒険者たちも今は会議室にいるわけだから、客はいない。僕たち以外は。
【鷹の爪】と僕は本来ならかなりの賑わいを見せるはずのこの客のいない酒場で、ど真ん中の卓を囲っている。
「なんかごめんね。気を使わしちゃって」
平坦な声が出ているのはわかっているんだけど、やめられない。声の起伏を出せる精神状態にはないみたいだ。
「ほんとのことを言ったまでだ。気にすんな」
ドレクスラーは僕を慰めているようではなく、いつもどおりの彼のままだ。少しホッとする。
「だけど、いったいなぜあんな命令が降りるんだ? 俺達のことさえ知らねぇ王女様が、それこそスキル持ちでもねぇアレクを除外しようなんてよ」
ほんとだよ。ムカつく。ディーバが首を傾げながら不可思議な先の通達に反応していた。
「姉が絡んでいるんだよ。たぶんね」
「姉?」
王女の傍らに姫騎士が立っていただろう? あれが僕の姉、ミーナライト・ヴァレントだよ。【剣士】の近衛騎士。そう言うと【鷹の爪】の面々は驚いた。
「ミーナライト・ヴァレントがお前のお姉さん!? まじか……」
「あれがミーナライトか……」
破竹の勢いで平民から近衛騎士に駆け上がったミーナライト・ヴァレントは王都でかなりの話題を提供していて、酒の肴になることもしばしばだった。それこそアメリカンドリームならぬルクセンドリームって感じで。栄誉を手にした姉は王都の有名人だ。
「ギルドに報告に行ったときにね。早く王都から出ろって何回も言われたんだ。断ったんだけど、その後の通達だから、間違いないと思う」
冒険者ギルドの指揮権を手にした王女の権力を使って僕を危険から遠ざけたんだろう。
「余計なことを……あ、いや、アレクの事を純粋に心配してのことなんだろうけどさ」
「せっかく【虹色の翅】をそばに置いてアレクの援助で助かると思ってたのに、俺達もやばいぞ。気合い入れねぇとよ」
僕抜きでの戦い方を再考し始める【鷹の爪】の悪気ない会話さえ、僕は聞いていられない。もうお払い箱決定なのか……。
「あのさ……」
盛り上がりかけた会話を中断させて、僕に注意を向けさせる。ハッとした【鷹の爪】は慌てて僕を見てきた。バツの悪い顔をさせて申し訳ないけれど、聞いてほしい。
「危険を承知でお願いなんだけど……【虹色の翅】を極力気にかけてあげてほしいんだ。あいつら絶対強くなるから」
「アレク……」
「お願いします」
僕は深々と頭を下げる。ホントは3人だと【冷やかし客】ってパーティーなんだけどなぁなんて頭をよぎったけれど、解散したわけじゃないから僕もまだ入れといてほしいもんだよね。なんかすごい疎外感がある。
閉じられた瞳から無理やり飛び出してきた一滴の結晶が酒場の床を濡らして、すぐに乾いた。
「まかせとけ」
リーダーの頼もしい返事を聞いて安心したのかな? 僕は尻餅をついて床に座り込んでしまった。
「おい! アレク」
さっとエチュレーラが席を立って僕の横にしゃがみこんだ。緩やかに彼女に目を向けると、彼女の目からも涙が浮かんでいる。普段から気の強い彼女の珍しい顔をぼんやり眺めた。エチュレーラは僕の頭をワシワシとなでる。
「あの子達のことはちゃんと見ててあげる。安心しな」
「ありがとね」
力なくそう返事をしたけれど、これで精一杯だ。
「悔しいよ……」
これからだったのに。【虹色の翅】でAランクになって自由を得るんだって。意気込んでいたのに。まさかの危機に直面して、あまつさえ掃討戦から外されるなんてね。
気づけば僕はエチュレーラの腕の中でわんわん泣いていた。あ~、ネタにされるんだろうなぁなんて思っても、涙を止めることはできなかった。なんで【鍵】はこんな時に働かないんだよ!?
しばらく泣いて気づいたときにはエチュレーラではなくリナフレアが僕のそばに居てくれた。エチュレーラは男たちの側にいって「やばぃよ、キュン死するかと思った」などと供述しており、僕から無理やり剥がされたようだった。
「見苦しいところを見られちゃったね。じゃあ、僕はもう行くよ」
「ああ……」
宿から荷物を取り出して、僕は酒場の扉を開けた。
こんなでかい家に一人で帰ってくるなんて……。
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