3興
マグニアス伯爵からの推薦状を受け、僕たち【虹色の翅】は、王都にある冒険者ギルドにおいて色々な便宜を図ってもらえることになった。一例として、宿だ。
最高級の宿ではないものの、かなり上質の宿をとってもらえたんだよ。領地に戻ったときが怖いねぇ。何をさせられるんだろ。
今、僕たちは冒険者ギルドの会議室にいるんだ。かなり名を上げている冒険者たちが集まり始めている。
会議室は大学の講義室のような広さを持ち、100人は座れるんじゃないかってくらいの長椅子が扇状に並べられている。
だんだんと熱気が膨れ上がるような熱が室内を満たしていく。歴戦の勇者たちが一堂に会することなんてめったにないんだから、此度の強制クエストが異常事態なのがよく分かるね。
ランクBの冒険者パーティーがゴロゴロいるし、実力が高い者たちがほとんどだ。パーティーランクによって席の序列があるらしくて、結成したてのパーティーは例外なく、実力があろうとなかろうと後ろがその位置だ。
僕たちも当然後ろの方に席がある。
満席近くになり始めた頃に彼らがやってきた。
【鷹の爪】だ。
王都で唯一のランクAパーティー。
紅蓮の剣士:ドレクスラー。
才賢の魔道士:ライバー。
鉄壁の聖騎士:ディーバ。
至高の聖女:リナフレア。
疾風の盗賊:エチュレーラ。
彼らが会議室に入った途端に空気ががらりと変わったのがわかった。誰もが注目している冒険者パーティー。ルクセン王国始まって以来の一大事に、彼らの顔も引き締まって見えるのは間違いないのだろう。
その後、本部のギルドマスターと職員が続いた。
最前列に【鷹の爪】が座ったのを確認したギルドマスターは今回のクエストの説明に入る。僕たちの持ち場についてだ。ほとんど説明を受ける暇もなく、ここへ駆けつけた者もいるため、ことさら丁寧に今回の事案がギルドマスターの口から淀みなく紡がれていく。
「俺達いるのか?」
そうなんだよ。王都騎士と兵士が掃討戦に出る上に、公爵軍も控えている。冒険者たちははたして必要なのか? 誰かのつぶやきに対して鋭く捕えたギルドマスターは淡々と事態を説明していったんだ。それでも冒険者はいるのだと。
「今わかっている範囲で、ゴブリンどもの数はおよそ1万」
どよめきが会議室を揺らす。
「しかも統率された群れだ。この意味がわかるな?」
確実に支配者、統率者、指揮系統があって、王都を襲いに来るってことだ。
「数が数だ。連中がどこから穴を開けて出てくるかわからん。一箇所からかもしれんし、複数箇所から一気に攻め寄せてくるかもしれん。警戒を怠るわけにはいかんのだ。一つでも瓦解すれば甚大な被害が出るだろう。油断は決してするな!」
ひとしきり作戦が知らされた後、ドレクスラーは一人席を立った。
「なんだ?」
視線を受けたギルドマスターは彼に問いかける。
「提案がある」
ギルドマスターは無言で先を促した。
「俺達のサポートにパーティー【虹色の翅】を寄越せ」
ずいぶんな物言いだ。だけどそう思ったのは僕たち【虹色の翅】だけなんだろうなぁ。なんせ先程から放たれている威圧感が半端ないもの。提案という名のゴリ押しの要望。ドレクスラーはきっと僕の異常さを取り入れたいのだろう。
「なに、悪いようにはせん。サポートだ」
ここで言うサポートとは雑用のことだ。これは活躍の場を奪われるという事にほかならない。手柄がすべて【鷹の爪】に持っていかれることを意味する。彼らのポーターをパーティーでやれってことだ。
周りの同情めいた視線の痛いこと痛いこと。だけど知っている。ドレクスラーはきっと楽がしたいんだよ。僕のスキルでね。彼らは最前線に立たされる。一番大変な場所を任されるのだから仕方ないんだけれど。巻き込むかなぁ、苦笑を禁じ得ないよ。
手柄がなくて、最も危険な場所に行く。誰もやりたくない仕事ではあるはずなんだけど、実は最も安全な場所でもあるのかもしれない。
彼らが冒険者ギルド最強のパーティーだから。
当初【鷹の爪】は単独での指示を受けていた。それでも十分にこなせるだろう。彼らはダンジョンでも最も深い場所にいるんだから。でもポーターが重要な役割を果たす様に、サポートも重要だ。連絡、補給、先導、様々な要素が絡んでいる。情報の隔離は避けたいところだし。
彼らとまた一緒に活動できるのはありがたい話だ。学べる点が多いからね。室内にいる冒険者たちも同情の目で見る一方、羨望を向ける者も確かにいるんだ。
かくして作戦は開始された。




