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今章、最終話。次章につづく。

「なんですって!?」


 古の金庫

 状態:呪い

 術者:アングルメール(魔族)


 呪い:【毒】【拡散】

【拡散】:開けた瞬間に呪いの種類が充満する。



 僕は金庫を開ける前に確認できた自分を褒めてあげた。もちろん脳内でだけど。お相手は魔族みたいだ。ここまで侵入を許しているということだよね? まずくない?


「あの……一応確認のために、サリアラーラかリリアリーリをこちらへ呼んでいいですか? ゲルトレイルと入れ替えでも構いませんが……」


 精霊か妖精の意見を聞ければ納得できるかもしれない。こいつ開けたくないから駄々こねてるんじゃね? とは流石に思われたくはないからね。


 もちろん施錠してしまえば万事解決ではあるんだけど、根本的な問題解決にはならないと思ったんだ。魔族の侵入に関与する気は全く無いけれど、はい、開けましたで、ここに不幸が訪れるなんて寝覚めが悪すぎるよ、流石にね。


「アーノルド、二人を呼んできてちょうだい」

「ですが……」


 アーノルドは護衛の観点から躊躇う。職業意識が高いですね。うん。察したゲルトレイルが、では自分がと名乗りだす。こちらは僕の視線を受けてのことだから、彼が護衛失格とは思わないでね?


「でもよろしいのですか?」

「緊急事態です。こんな時にしきたりがどうの、決まりがどうのと手をこまねいている場合でもないでしょう? 構いませんから早く呼んでいらっしゃい」


 ゲルトレイルはすぐに部屋の外へと走っていったんだ。しっかし、流石元ギルマスだけあって判断力半端ない。清々しいよね、この人の下で働くのはやりがいがあるだろうな。話長いのが嫌だけれど。



 -----



「光を司る精霊よ。我に叡智を賜らん」


 サリアラーラが何やら詠唱を始めた。ピンポンは相変わらずフヨフヨ彼女の周りを回っていたけれど、彼女の詠唱が終わるやいなや、人形に具現化した。


 ぇぇぇぇ!?


 始めて見たよ!? そんなことできんの!?


 びっくりしたーー!?


 ツヤツヤの白髪に白い肌。大きさは翅人(妖精)とほぼ一緒で10センチくらいかな? その場にいるほぼ全員が呆気にとられていたんだ。仕方ないよね? 流石にサリアラーラは驚いていなかったけれど、なんだか誇らしそうにしている。


「この姿では久しいな、サリア」

「そうね。フフ。この金庫なんだけどね、アレクセイが言うには毒の呪いがあるというの。どんなものか教えてくれる?」


 フム。というと人形ミニサイズの精霊ピンポンは金庫を凝視した。その間、みんなはただただ呆気にとられている。その神々しさに畏怖の念さえ感じずにはいられないような、ひざまずきたくなるような、そんな感動を覚えてしまうんだ。


 光の高位精霊体というのは本当のことみたいだ。疑ってたよ。ゴメンね。ピンポン。


「正解だな。魔族がかけた呪いだ。開けたら最後、この部屋に毒が充満するだろう」


 小さい体から発せられたとは思えない声量だった。彼(なんとなく男型)は腕を組んで偉そうにそう宣った。


「「「魔族っ!?」」」


 投げられた爆弾発言に僕以外の面々が驚きを隠せずに反応したんだ。しかしピンポン喋れたんだねぇ。なんで今までその姿で現れなかったんだろうって思ってたんだけど、すぐに理解した。サリアラーラが変な汗かき始めていたからね。すごい魔力を持っていかれるのかもしれない。


 ちょいとやってみるか?


 状態解錠:疲労

 状態解錠:魔力減少


 施錠

 状態:安定【保存10分】

 状態:魔力【保存10分】


 10分間の無双状態完成だね。【保存】は複数かけると時間制限が厳しくなるのかな? 10分以上がかけられないみたいだ。単発だと結構長くいけそうなんだけどね。うーん、検証がいりそうだ。【保存】のレベルも上げられたら効果時間も上がるかな?


 サリアラーラは驚いてこちらを見た。ピンポンも流れてくる魔力の安定さ加減に驚いているみたいだ。だけど、僕のスキルの効果性もお見通しなのかな?


「さよう。魔族だ。残念ながらいつかけられたかまでは判断はできん」


 これまたふんぞり返ってそうな物言いだけれど、神々しい雰囲気に誰もがありがたがっていたんだよね。だけど、申し訳ない。僕のほうがはるかに早い段階でこの情報知ってましたから、ピンポンに跪くなんて無理だよねぇ。どうせ跪くなら【鍵】スキルにでしょ。


 唖然とする中、リリアリーリのポケットから今度は妖精のリンカーラが飛び出してきた。そして言う。


「これ最近だよー。3日前くらいだねー。精霊はそんなこともわからないのかなー」


 可愛い声でピンポンをディスりに入ったリンカーラを見て、さらなる衝撃がみんなに走った。3日前にかけられた呪い。


 一緒にいられるようになった精霊と妖精のこのお二方は仲が良いとまではいかないみたいだね。僕とサリアラーラとリリアリーリは苦笑を禁じ得なかった。他三名はこのやり取りにハラハラしているもよう。


「ふん。それではお主は呪いの種類はわかるのか?」


 絶句するリンカーラを見て、なるほどと思う。それぞれに得意分野が違うようだね。


「どうします? 一応開けられますけれど? 安全に」

「「「えっ」」」


 追撃。


「2つの選択肢があります」

「伺いますわ」


 僕は二本指を立てた。クリスティアナは即座に聞きに回る。このあたりの判断能力はギルマスというより貴族の教育の賜物なのだろうか? まあいいや。


「1つ。呪いを解除して開ける」

「2つ。一時的に解除して腕輪だけ取り出す」


 どちらも色々な問題を引き起こす行為に思えるけれど、取り出さないという選択肢はないみたいなんだよね。レプリカはどうしても作成しなければいけないんだから。それは僕たち【虹色の翅】が考えることじゃないから、後は知らないけれど。それこそ専門家に任せると良いよ。


「ご心配でしたら部屋に僕だけを残してもらっても構いませんよ?」

「いいのよ、一時的にせよ、解除するにせよ、精霊様や妖精様がその安全性を教えてくれるのでしょう?」


 その通りだね。だからここへ呼んだんだし。


「では一時的に解除して出してもらえるかしら」

「わかりました」


 施錠

 状態:呪い(ロック中)


 厨ニ的演出はしなかった。やってほしかった? 嫌だよ、恥ずかしい。なんとなく配慮して詠唱的なことした方が安心感与えられるんだろうけどね。お年頃なんだよね。お察しくださいな。


 一気に鍵を開けてキングブレスレットを取り出して一気に閉める。


「呪いの影響はないな」

「ないねー」


 精霊、妖精のお墨付きもあり、止めていた息をみんなが吐いたのがわかった。


「ありがとう、アレクセイ。新たな問題が発生してしまったのは手痛いものだけれど。あなた達がいなければ事態がどう転んでいたかわからなくなってきたわね。呪いと聞いて一瞬でも他の貴族たちを疑ってしまったわ。魔族となると……他のキングブレスレットも心配になってきたわ。アーノルド、彼らに報奨と鍵の支払いと情報料の準備をなさい。金額は任せるわ。私に恥をかかせないでちょうだいね?」


 ウィンクしているあたり、結構な額が提示されそうで怖いな。でも今回は魔女たちのサポートがあってスムーズだったし、【虹色の翅】で来ることができて良かった。



 一抹の不安を残し、高収入を得る。


城塞地下への入出許可を取り付け、僕たちは【怠惰の蛇】のアジトへ、新しい家を求めて転移した。






 まさかあんなことになるなんて、誰が想像できただろう……。

お読みいただきありがとうございました。

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