9限
本日2話投稿
「よく来てくれたわね、アレクセイ・ヴァレント。それと護衛の皆さん。おや、魔女姉妹に潔癖の斧まで。へぇあななたたちパーティー組んだの……。うん、同世代で固まった感じかな? いや、アレクセイは確かもうちょっと若かったかしらね? まぁいいわ。おかけなさいな。早くなさい? 時間は有限なのよ。そうよろしい。それでなのだけれどね。地下にある……って、アーノルドから話聞いてるわよね? 二度手間になるところだったわ。私としたことが。早速開けてほしいのよ。金庫ね。錆びてるけどどうかしら? できる? 魔女の家のクエスト成功させたんだから大丈夫よね? そうじゃないと呼んだ意味がなくなるわ。でもたとえ無理でも貴族のプライドとかで罰することはないから安心なさい? そこまで落ちぶれちゃいないつもりよ。そう、公爵家の名にかけてね。どうする? もう作業に入れるかしら? 話が早いわね。気に入ったわ。いえ、気に入ってたから呼んだのだけど。まあ、とにかくついてきなさい。案内するわ」
怒涛のおしゃべりさんだった。あれだ、元ギルマスだ。
クリスティアナ・レ・ドヌマン(21)
公爵令嬢
スキル:【棒術・極】
ジョブ:【武闘家】
あー、これ逆らったらあかんやつだ。貴族令嬢の常識どうなってんだろう? 強すぎない? シェイナも相当だったけど。この人もかなりヤバイ感じの人だね。
あっけにとられたのは言うまでもないのだけれど。まず、あれだ。部屋に招き入れられた時点でもう遅かった。予想してしかるべきだったのに。冒険者ギルドの元ギルドマスターがソファーに腰掛けていたんだよ。茶髪で緩いウェーブのかかった髪を見たときにすぐに思い出した。あのときも公爵令嬢って名乗ってたし、傍らにアーノルドさんもいたんだから。それでかぁ、あんなにボーナスくれたの。自分の従者の命の恩人になるんだよね、僕って?
座れ、時間無いって言いながら話長いし。
座る間もなく地下に案内するとかどうなの……まぁ、突っ込めませんけれども。
案の定【虹色の翅】の面々は事態についていけてない。彼女がギルマスだったなんて今持ってわかってないんじゃないかな? なぜ自分たちのことを知っているんだろう? っていう警戒心が湧いているかもしれないね。後で教えてあげよう。
「あの~、ドヌマン公爵令嬢様、なんとお呼びすればよろしいですか?」
この際、聞いてみようなんて思ったのがいけなかった。
「私のことかしら? そうね、名乗ってなかったかしら。クリスティアナ・レ・ドヌマンよ。クリス様とかティアナ様とか、そうね、アーノルドのようにお嬢様でもよろしくてよ? まぁ、あれよね? あななたたちは貴族と聞けば距離を開けたがるのよね? それはわからなくもないのだけれど、貴族だ平民だと騒ぎ立てる低俗な人間にならないように気をつけなさいね? へつらいすぎると卑屈になるし、無礼すぎるのも身を危険に晒すんだから。こんなお説教なんて聞きたくないわよね? まぁ少しだけ我慢なさい。私は身分の事をあまり頓着しないためによくお父様から叱られるのだけれどね? 仕方ないと思わない? 冒険者たちの活躍をこの目で見てきたら、【血】より【実力】って見方に変わるものよ? いい経験だったわ。今思えばね。それでアレクセイ、あなたちゃんと開けられるのかしら? 疑っているわけではないのよ? なんせあなたはあらゆる冒険者たちが開けられなかったっていうクエストをいとも簡単にこなしたって聞いてるわけだしね。そう、これは少し心配しているだけですのよ」
いちいち長ぇぇぇぇ。
呼び方聞いただけなんですけど……。それに「貴族だ平民だ」のあたりですでに地下への扉の前にいたのに。さっさと開けてくださいよ。全く。言えないけどさ。
僕は話しかけるというデメリットを考えた末、後は付いていくだけにしたんだ。若干メンバーも疲れているようだった。アーノルド? 平気そうだったよ?
ようやく宝物庫へたどり着いた。各城塞の地下に、宝物庫があるのは当然といえば当然だ。シーダー曰く「9つの王国だった」んだから、ここも王国の城ということになる。元だけれどね。公爵家も王族だったということだ。
「ここね。ここからは私とアーノルド。アレクセイともうひとりだけ入りなさい。後の二人は入室を許可するわけにはいかないわ。わかるわよね?」
珍しく言葉少なげに、威圧が彼女から発せられたのがわかったけれど、逆らう者なんていない。僕はゲルトレイルを伴って宝物庫へ入ることにした。
「うわぁ……」
思わず感嘆の声を上げてしまった。クリスティアナは僕の声に最初はピクリと反応したんだけれど、感激の声音に緊張を霧散させたようだった。
「こちらへいらっしゃい。金庫は奥よ」
スタスタと進む公爵令嬢と従者アーノルドの後ろを歩きながら、チラチラと宝の山を通過する。でもあれだよね、5階層の特殊部屋より少ないかな? 価値がどうかはわからないけれども。価値が同じなら、【鷹の爪】の財産とんでもないなー。ダンジョンの宝なんて魔道具に昇華した冒険者たちの残骸だろうから、本来の価値ならこの部屋の宝の圧勝だろうね。
宝物庫の奥にさらなる扉が現れる。
幾分錆びた南京錠をアーノルドが支え、鍵を差し込んだ。ちょっと硬そうで、気合を入れて回しているのがわかった。うん。営業チャンス到来。
「古いですねぇ、この鍵。新調しませんか? 今ならちょうど魔力登録可能な南京錠持ってきてますよ? キーセレクト・アレク特性の南京錠です。お貴族様専用のプラチナ仕様です。いかがです? 3人まで鍵登録可能です。他の人には開けられない特別製」
「よろしいですわ。買いましょう。アーノルド、後で用意なさい」
「かしこまりました」
「では商談成立ということで、こちら早速お付けなさいます?」
「登録はどのように?」
登録のあれこれを説明してすぐに取り付けにかかるあたり、即断即決の判断がさすがの元ギルマスということだろうか。素晴らしい。儲かった。やったね。
金庫の前に立つ。
「あの、クリス様。この金庫、本当に開けてよろしいですか?」
「ええ」
「呪われていますけど?」
お読みいただきありがとうございました。




